MXeneの高い電子伝導に隠れたプロトン伝導性の定量評価に成功 〜燃料電池や選択的水素分離への利用に期待〜

(ポイント)

  • 二次元材料であるMXene*1の高い電子伝導性に隠れたプロトン伝導特性*2について、電子遮断層*3を用いた直流法により、定量化に成功しました。
  • 本手法を用いることで、代表的なMXeneであるTi3C2Txの積層膜が、相対湿度100%下において9×10-4 S cm-1 @90 ℃のプロトン伝導性を示すことを見出し、Ti3C2Txの積層膜を固体電解質*4とした燃料電池を作動させることにも成功しました。
  • MXeneのプロトンと電子を同時に伝導する特性(プロトン/電子混合伝導特性*5)を利用した、水素分離が可能であることを実証しました。

 

(概要説明)

熊本大学産業ナノマテリアル研究所の畠山一翔准教授と伊田進太郎教授らの研究グループは、金属的な電子伝導性*6を持つ二次元材料MXeneの積層膜が、固有のプロトン伝導性も併せ持つことを実験的に明らかにしました。MXeneが特異なプロトン伝導性を持つ可能性は予測されていましたが、MXeneが持つ高い電子伝導性のため、実験的にプロトン伝導性を算出することは困難でした。その中で、本研究では、電子を通さずプロトンのみを通す層でMXene膜を挟み、プロトン透過による直流電流と水素生成量を同時に測定する手法を構築し、MXeneにおける固有のプロトン伝導特性を定量的に明らかにしました。

その結果、MXene積層膜が相対湿度100%下において9×10-4 S cm-1 @90 ℃という比較的高いプロトン伝導特性を示すことを明らかにし、層間の水素結合ネットワークを介したプロトンホッピングが主な伝導機構であることを示しました。さらに、同膜を固体電解質とした燃料電池の発電と、プロトン/電子混合伝導を利用した選択的水素透過を実証しました。本成果は、MXeneを単なる電子伝導材料ではなく、100 ℃以下で機能する「プロトン/電子混合伝導体」という新しい材料群として位置付けるものです。

本研究成果は令和8年7月29日に米国化学会が発行する科学雑誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

なお、本研究は防衛装備庁安全保障技術研究推進制度、科学技術振興機構先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)、日本学術振興会科学研究費助成事業(研究課題/領域番号:23H00314)の支援を受けて行われました。

 

(今後の展開)

 本研究は、これまで主に電子伝導材料として扱われてきたMXeneを、低温で機能するプロトン/電子混合伝導体として再定義する成果です。燃料電池、水電解、触媒、水素分離膜、化学センサーなど、プロトンと電子の同時輸送が重要となる幅広い水素・電気化学デバイスへの展開が期待されます。一方、Ti3C2Tx積層膜は高温高湿下で長時間保持すると徐々に酸化し、プロトン伝導度が低下します。今後は、表面終端の制御、酸化防止層の導入、膜構造の最適化、他のナノシートとの複合化により、耐久性と水素透過性能を高め、実用デバイスへの展開を進めます。

 

(論文情報)

論文名:Intrinsic Proton Conduction in Metallic Ti3C2Tx MXene Membranes Revealed by Direct-Current Decoupling

著者:Kaito Takegami, Kazuto Hatakeyama*, Tatsuki Tsugawa, Satsuki Tomatsu, Asahi Yuji, Yuichi Sakuda, Shintaro Ida* 

掲載誌:Journal of the American Chemical Society

DOI:doi.org/10.1021/jacs.6c08714

プレスリリース】(PDF598KB)

※用語解説、図はPDFよりご確認ください。

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<熊本大学SDGs宣言>

お問い合わせ
熊本大学産業ナノマテリアル研究所
担当:畠山 一翔 准教授
電話:096-342-3650
E-mail:hatakeyama-kkumamoto-u.ac.jp

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