画像解析で明らかになった植物受精卵の内なる 秘密-非対象な細胞分裂の位置の謎に迫る-

(ポイント)

  • 植物の受精卵における細胞内構造の分布を画像解析により分析したところ、植物受精卵は受精直後からふたつの部分に区分され、その境界は最初の細胞分裂の位置に関係する可能性が示唆されました。
  • 本研究成果は、植物の初期発生における細胞内構造の役割に新たな知見を与えるとともに、本研究で確立した画像解析手法は植物受精卵に限らず様々な細胞における細胞内構造の分布解析に役立つことが期待されます。

【概要説明】

  熊本大学大学院自然科学教育部修士課程1年の弘本悠紀子大学院生と同大学大学院先端科学研究部の檜垣匠教授を中心とした研究グループは、細胞の中の様々な構造体の分布を包括的に評価する画像解析手法を開発しました。また、東北大学大学院生命科学研究科の植田美那子教授らと共同研究により、この画像解析技術によって植物の受精卵が伸長して最初の細胞分裂に至るまでの過程を分析しました。その結果、受精直後の早い段階で既に内部構造が偏在化しており、その内部構造の偏在化を維持したまま伸長していること、この内部構造の偏在化と最初の細胞分裂の位置に相関があることなどが明らかになりました。本研究成果は、植物の初期発生における細胞内構造の役割に新たな知見を与えるものであり、植物の発生と成長の基本的なルールを理解する上で重要な一歩と位置付けられます。
 本研究成果は令和5年12月18日にオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。本研究は熊本大学国際先端科学技術研究機構 Research Cluster ‘Digital Plant Cell Biology’、科学技術振興機構 CRESTの支援を受けて実施されました。

【今後の展開】 

 本研究により、植物受精卵の上下軸における細胞内構造の時間空間的な振る舞いが明らかになりました。また細胞内構造の偏在性と細胞分裂位置との関係性も示唆されました。本手法は植物受精卵の研究に限らず様々な細胞における細胞内構造の分布を解析する上で役に立ち、波及効果の大きな研究成果と考えられます。

【論文情報】

論文名:Comprehensive and quantitative analysis of intracellular structure polarization at the apical–basal axis in elongating Arabidopsis zygotes.
著者:Yukiko Hiromoto, Naoki Minamino, Suzuka Kikuchi, Yusuke Kimata, Hikari Matsumoto, Sakumi Nakagawa, Minako Ueda, Takumi Higaki* (*責任著者)
掲載誌:Scientific Reports
doi:https://doi.org/10.1038/s41598-023-50020-8
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-023-50020-8

【詳細】 プレスリリース(PDF581KB)

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