重力波検出のための超精密観測に成功 ―超巨大ブラックホールの起源解明に向けた第一歩―

【ポイント】

  • 我々はインドの研究グループと共同で、重力波*1を検出することで超巨大ブラックホール*2がどのように形成されたかを探ろうとしています。
  • インドの電波望遠鏡uGMRTでパルサー*3と呼ばれる天体を3.5年に渡って観測し、重力波検出のための超精密観測が可能であることを実証しました。
  • 今後、よりデータを蓄積して重力波を検出し、超巨大ブラックホール形成の謎に迫ります。

【概要説明】

 熊本大学大学院先端科学研究部の高橋慶太郎教授の研究グループとチェンナイ数理科学研究所などのインドの研究グループ(以下「国際チーム」という。)は、インドの電波望遠鏡uGMRTを用いてパルサーと呼ばれる天体を観測し、その精密な観測データを発表しました。これは3.5年という長期間に渡ってパルサーの時間変動をマイクロ秒という精度で計測したものです。このような精密データをさらに積み重ねることで、10光年の波長を持つ重力波を世界で初めて検出することを目指しています。このような重力波を検出できれば、超巨大ブラックホールがどのように形成されたかという天文学の大きな問題が解明されると期待されます。
    本研究成果は令和4年10月24日に科学誌「Publications of the Astronomical Society of Australia」に掲載されました。本研究は科学研究費補助金基盤研究B「大規模低周波偏波サーベイによる銀河*4の3次元構造と宇宙論的磁場の解明」(代表:高橋慶太郎)の支援を受けて実施したものです。

 【今後の展開】

    今後も観測を続け、1マイクロ秒よりも良い精度で10年に渡ってパルサーを観測することができれば、重力波を検出できる可能性はかなり高いと考えられます。そして重力波が検出できれば、合体しようとしている2つのブラックホールの様子がわかり、超巨大ブラックホールがどのようにして形成されたかを解き明かすことができると期待されます。

【用語解説】

*1重力波:重力が波として伝わる現象です。2016年にアメリカ合衆国のLIGO(重力波検出器)実験が初めて検出に成功しました。我々が検出を目指す重力波は同じ重力波でも波長がずっと長いもので、LIGOとは全く異なる方法で検出することを目指しています。
*2ブラックホール:強力な重力により光ですら脱出できない天体。
*3パルサー:自転による電波パルスが周期的に観測される天体。パルサーには10ミリ秒程度から10秒程度まで様々な周期を持ったものがありますが、今回観測したのは10ミリ秒の周期を持つ「ミリ秒パルサー」と呼ばれるパルサーです。
*4銀河:数百億や数千億の恒星の集まりで、太陽系が属する銀河を天の川銀河と呼んでいます。


【論文情報】

論文名:The Indian Pulsar Timing Array: First data release
著者:Pratik Tarafdar, K Nobleson, Prerna Rana, Jaikhomba Singha, M. A. Krishnakumar, Bhal Chandra Joshi, Avinash Kumar Paladi, Neel Kolhe, Neelam Dhanda Batra, Nikita Agarwal, Adarsh Bathula, Subhajit Dandapat, Shantanu Desai, Lankeswar Dey, Shinnosuke Hisano, Prathamesh Ingale, Ryo Kato, Divyansh Kharbanda, Tomonosuke Kikunaga, Piyush Marmat, B. Arul Pandian, T. Prabu, Aman Srivastava, Mayuresh Surnis, Sai Chaitanya Susarla, Abhimanyu Susobhanan, Keitaro Takahashi, P. Arumugam, Manjari Bagchi, Sarmistha Banik, Kishalay De, Raghav Girgaonkar, A. Gopakumar, Yashwant Gupta, Yogesh Maan, P. K. Manoharan, Arun Naidu and Dhruv Pathak
掲載誌:Publications of the Astronomical Society of Australia
doi:10.1017/pasa.2022.46
URL:https://www.cambridge.org/core/journals/publications-of-the-astronomical-society-of-australia/article/abs/indian-pulsar-timing-array-first-data-release/A70BCA49DC3E918C1B8816F6746D7A4F

【詳細】 プレスリリース(PDF224KB)



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お問い合わせ
熊本大学大学院先端科学研究部
担当:教授 高橋 慶太郎
電話:096-342-3352
E-mail:keitaro※kumamoto-u.ac.jp

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