時間と空間が織りなす磁気成分の検出 -スピンが互いに平行な反強磁性体における X線磁気円二色性-

(ポイント)

  • 本研究では [100]方向に反強磁性秩序1が発現したルチル構造物質RuO2を対象として、電子状態解析とX線磁気円二色性応答(XMCD)2のシミュレーションを行いました
  • 今回研究対象としたRuO2では共線方向(スピンが互いに平行)に反強磁性の秩序化が起こっており、共線型の反強磁性体におけるXMCDを初めて理論予測しました
  • 本成果は特異な空間・時間対称性を持つ物質の研究・開発を促進し、イノベーションに繋がる物質・材料の創出に貢献すると考えられます。

【概要説明】

 熊本大学大学院先端科学研究部の雀部矩正特任助教(研究当時:公益財団法人高輝度光科学研究センター博士研究員)と同大学同研究部の水牧仁一朗教授の研究グループは、大阪公立大学の魚住孝幸教授、国立研究開発法人物質・材料研究機構の山﨑裕一主幹研究員との共同研究により、ルチル化合物RuO2の反強磁性状態を詳細に調べ、共線方向の反強磁性状態においてXMCDが観測できることを理論的に予言しました。
 本研究成果は、アメリカ物理学会(American Physical Society)の発行するフィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)誌に2023年11月24日(米国東部時間)に掲載されました。また,注目論文としてEditors’Suggestion及びFront Coverに選定されました。

【今後の展開】 

 交差相関応答や新規物性現象を理解するときに、物質の空間・時間対称性と密接にかかわる異方的磁気双極子は今後ますます重要となります。異常ホール効果の発現に異方的磁気双極子項が重要であるという理論提案があり、我々の研究はXMCDや共鳴X線散乱などの放射光測定による異方的磁気双極子の振る舞いとその電子状態の解明に寄与します。本成果は特異な空間・時間対称性を持つ物質の研究・開発を促進し、イノベーションに繋がる物質・材料の創出に貢献すると考えられます。

【論文情報】

論文名:Ferroic Order for Anisotropic Magnetic Dipole Term in Collinear Antiferromagnets of (t2g)4 System
著者:Norimasa Sasabe, Masaichiro Mizumaki, Takayuki Uozumi, and Yuichi Yamasaki
掲載誌:Physical Review Letters
DOI:10.1103/PhysRevLett.131.216501
URL:https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevLett.131.216501

【詳細】 プレスリリース(PDF581KB)

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