結晶質岩(花崗岩)内の割れ目評価のための新知見~マグマ溜りから深成岩が形成される過程の熱進化モデルの構築~

【ポイント】

  • 中部日本の土岐花崗岩を研究対象とし,マグマ溜りから結晶質岩(花崗岩)(※1)が形成される冷却の過程を表現した熱進化モデル(※2),特に土岐花崗岩内の領域ごとの温度時間履歴(※3)を復元。
  • 結晶質岩中に発達した割れ目は地下水や物質の移動経路となるが,その割れ目の分布特性と岩体内の領域ごとの温度時間履歴との間に関連があることを発見。
  • 領域ごとの温度時間履歴の解明は結晶質岩内の割れ目分布を評価する際に新たな指標となることを提示。

    ※用語解説
    1.結晶質岩(花崗岩):地下に貫入したマグマが地表まで到達せずに,地殻中にマグマ溜りとしてゆっくりと冷え固まった岩石。深成岩の一種。日本列島の地下には基盤岩として広い領域に分布。
    2.熱進化モデル:マグマ溜りから結晶質岩へと冷却するプロセスで,時間とともに温度がどのように変遷したかを示すモデル。深成岩中の現象を時間と温度の推移とともに議論することを可能にする。本研究では複数の領域の温度時間履歴から表現される。
    3.温度時間履歴:マグマ溜りから結晶質岩への冷却を温度と年代の推移で表したもの。

【概要】

 山形大学学術研究院の湯口貴史講師(地球科学),五十公野裕也博士,日本原子力研究開発機構の笹尾英嗣博士,末岡茂博士,石橋正祐紀博士,(株)京都フィッション・トラックの檀原徹博士,岩野英樹博士,東京大学大学院理学系研究科の平田岳史教授,熊本大学大学院先端科学研究部(理学系)の西山忠男教授らの研究グループは,中部日本の土岐花崗岩を研究対象とし,マグマ溜りから結晶質岩(花崗岩)へと至る熱進化モデルを作成し,土岐花崗岩内の領域ごとの温度時間履歴を復元しました。マグマ溜りから結晶質岩へと至る冷却履歴を扱った既存研究では,1つの花崗岩に対して1つの温度時間履歴を解明するのが一般的でしたが,今回の研究では,1つの花崗岩の複数の領域について各々の温度時間履歴を復元しました。このことにより,岩体内の位置に応じた温度時間履歴の相違を明かにしました。
 さらに本研究では,得られた領域ごとの温度時間履歴と割れ目の分布の間に関連があることを見出しました。これは領域ごとの温度時間履歴が結晶質岩内の割れ目分布を評価する際の新たな指標となることを示しています(図1)。結晶質岩中に発達した割れ目は地下水や物質の移動経路となることから,本研究成果は,深部地質領域(地下深部に分布する岩石領域)を活用した事業(天然ガス・石油の地下貯蔵など)の安全性や研究開発(高レベル放射性廃棄物の地層処分など)の妥当性を評価する上で重要な知見と考えられ,国際学術雑誌の「Journal of Asian Earth Sciences」に掲載されました。

【論文情報】

雑誌名:Journal of Asian Earth Sciences,169,47-66(2019)
論文タイトル:Position-by-position cooling paths within the Toki granite, central Japan: Constraints and the relation with fracture population in a pluton
著者名:湯口貴史1,末岡茂2,岩野英樹3,五十公野裕也1,石橋正祐紀2,檀原徹3,笹尾英嗣2,平田岳史4,西山忠男5
所属:1. 山形大学学術研究院 2. 日本原子力研究開発機構 3. 京都フィッション・トラック 4. 東京大学大学院理学系研究科 5. 熊本大学先端科学研究部理学系
DOI:https://doi.org/10.1016/j.jseaes.2018.07.039
公表:2019年1月15日号(2018年11月27日オンライン公開)

【詳細】

プレスリリース(PDF1998KB)

お問い合わせ 
(研究内容について)
大学先端科学研究部(理学系) 教授 西山忠男
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e-mail:tadaonishiyama※gpo.kumamoto-u.ac.jp
(広報担当)
総務部総務課広報戦略室
電話:096-342-3271   
e-mail:sos-koho※jimu.kumamoto-u.ac.jp
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