日本ではじめて中生代の新種介形虫(かいけいちゅう)化石を発見~西太平洋地域初の白亜紀浅海性介形虫化石群を報告~
(研究のポイント)
- 北海道むかわ町穂別地区に分布する中生代後期白亜紀カンパニアン期中期(約8,000万年前)の地層から産出した介形虫化石について調査したところ、1新属を含む6新種を発見し、そのうち1新属・新種について、ホベツシセレイス・オオタツメアイ(Hobetsucythereis ohtatsumei et sp. nov.)と命名し、このほかに5つの新種を命名しました。これらは本邦の中生代介形虫としては初めての新種となります。
- ホベツシセレイス・オオタツメアイの眼の相対直径から推定された古水深は、150 ± 20 mでした。さらに、本種から得られた海底の垂直光の減衰係数は、108 ± 0.018と算出されました。これは大西洋沿岸域、北極域、および南大西洋の表層海洋の栄養豊かな高生産域の値に匹敵します。
- 世界のカンパニアン期の介形虫生物地理区は、大きく5つに区分され、今回の発見を含む西太平洋地域は独自の生物地理区を形成していることがわかりました。浅い海域の介形虫群の分布は、深海や大河川によって移動が遮られ制約されていたと考えられます。
(概要)
熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センターの田中 源吾 准教授及び北海道むかわ町穂別博物館の西村 智弘 学芸員による研究者グループは、むかわ町穂別地区に分布する中生代後期白亜紀(約8,000万年前)の地層から産出した介形虫化石の調査により、1新属を含む6新種を発見しました。
これは日本の中生代の介形虫として初めての新種発見であり、世界的に見て西太平洋地域でも初の報告となります。また、発見した新種の介形虫の眼の相対直径から、生息していた区域の当時の海の水深が150 ± 20 mであることが推定されました。さらに本種から得られた海底の垂直光の減衰係数(海底に届く光の強さの減り方)は0.108 ± 0.018と算出され、栄養豊富で生物が多い海だった可能性が示唆されます。今回、新属・新種の介形虫の発見により、当時の海の深さや環境まで推測することができました。
本研究成果は2025年12月5日に英文学術雑誌『Geological Journal』から出版されました。
(本研究の意義と展開)
本研究は、世界で初めて、西太平洋の白亜系から、浅海性介形虫群を発見し、1新属6新種を記載しました。さらに、新属新種のホベツシセレイス・オオタツメアイの眼の相対直径から、むかわ町穂別に分布する中部カンパニアン階函淵層堆積時の古水深を、150 ± 20 mと推定しました。さらに本種から海底の垂直光の減衰係数を0.108 ± 0.018と産出しました。この値は、大西洋沿岸域、北極域、および南大西洋の表層海洋の栄養豊かな高生産域の値に匹敵します。
15属以上を含む27の地域のクラスター分析により、世界のカンパニアン期介形虫群集を5つの地域(A~E)に分け、さらに地域Bを3つの亜地域(Ba~Bc)、地域Cを2つの亜地域(CaとCb)に区分しました。このうち、東アフリカの赤道付近の群集を代表する地域Aは、高い固有性を示し、カンパニアン期の介形虫群のホットスポットを示唆しています。亜地域Bbは、アフリカ大陸の北岸と南岸に分布するゴンドワナ群集に相当し、亜地域Baはインド亜大陸、イラン、北アメリカ南岸に分布しています。亜地域CaとCbはテチス海北部の沿岸に分布し、亜地域Dはオーストラリア、亜地域Eは高緯度の太平洋岸に分布していることがわかりました。北海道はこの地域Eに属していたと推定されます。
ほとんどの亜地域は、一般的に深海や大河川によって区切られた、明確な生物地理学的地域を形成しています。今後、これらの生物地理学的地域を理解するために、古地理や古気候学的なデータとともにさらに深く考察する必要があります。
(論文情報)
掲載誌:Geological Journal
論文タイトル:Late Cretaceous (Campanian) shallow-marine ostracods
from northeastern margin of Asia—palaeoenvironment and biogeographical significance[アジア北東縁辺部産白亜紀後期(カンパニアン期)浅海性介形虫群 ― 古環境と生物地理学的意義]
著者:田中源吾(熊本大学 准教授)・西村智弘(むかわ町穂別博物館 学芸員)
DOI: https://doi.org/10.1002/gj.70151
【詳細】 プレスリリース(PDF1,091KB)
【お問い合わせ先】
熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター
准教授 田中 源吾(たなか げんご)
メール:gengo※kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)