熊本城の崩落石材の元の所在特定ができる画像照合システムを開発

【ポイント】

  • 三次元画像処理による熊本城石垣の照合技術を開発した。
  • 実際の熊本城飯田丸五階櫓の崩落石材の特定を行い、91%の成功率で照合できた。
  • 本技術は熊本市の復旧工事の設計に活用され、今後着工予定である。

【概要説明】

 熊本大学大学院先端科学研究部の上瀧剛教授らの研究グループは、信州大学学術研究院(工学系)白井啓一郎准教授と凸版印刷株式会社との共同研究により、熊本地震で崩落した石材の元の所在を、画像照合技術を用いて特定するシステムソフトウェアを開発しました。

 平成28年の熊本地震により熊本城の石垣から膨大な数の石材が崩落しました。これらの石材1つ1つが文化財であるという性質上、崩落した石材を元の位置に戻す必要がありますが、この特定作業を目視で行うことは非常に困難でした。

  そこで今回、崩落前後の石材の写真を、計算機を用いて自動照合することで効率よく石材の元の所在を特定できるシステムを開発しました。

 本システムを用いることで、飯田丸五階櫓の石垣から崩落した370個の石材の写真に対して、337個(91%)の元の所在を特定することができました。特筆すべき結果として、事前の人間による目視による照合では、石材はどれも同じような形をしていることから、1割ほどの対応付け誤りがありましたが、本システムを用いることで、このようなヒューマンエラーを取り除くことができました。従来の目視による特定作業は、数百枚の写真を見比べながらの作業となるため数か月を要していましたが、本システムを用いた作業時間は1時間程度でした。

 本システムは実際の飯田丸五階櫓の復旧工事の設計に活用されており、この設計に従って着工予定です。今後は他の石垣での照合に活用されることが期待されます。

 本研究成果は令和4年7月22日に科学雑誌「International Journal of Computer Vision」に掲載されました。また、本研究はJST のA-STEP(研究成果最適展開支援プログラム) ステージIIの支援を受けて実施したものです。


【論文情報】

論文名:ISHIGAKI Retrieval System Using 3D Shape Matching and Combinatorial Optimization
著者:Gou Koutaki, Sakino Ando, Keiichiro Shirai, Tsuyoshi Kishigami
掲載誌:International Journal of Computer Vision
doi:https://doi.org/10.1007/s11263-022-01630-8
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s11263-022-01630-8

【詳細】 プレスリリース(PDF546KB)



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熊本大学大学院先端科学研究部
教授 上瀧 剛
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