森のシイやクリの花からアミンが放散し大気粒子の形成に関わっている
【ポイント】
- 大気中に含まれる化学物質であるアミン類を採取・分析する手法を開発しました。
- ナラ,カシ,シイ,クリなどの花は特有の匂いを放ちますが,これは花で生産されるあるアミン類の揮散によることを確認しました。
- これらの樹々から揮散するアミンは分子内にアミノ基を2個有するジアミン類で,大気中でアミド化合物に変換されていることを発見しました。
- ジアミン類やアミド化合物は水蒸気や酸の分子と結合しやすく,大気粒子の卵である「新粒子」や有機物が取り込まれ反応して生成する「二次有機粒子」の形成に寄与していることが示唆されました。
【概要説明】
熊本大学大学院先端科学研究部(理学系)の戸田敬教授の研究グループは,大気中に含まれるアミン類を採取・分析する手法を開発し,春から初夏の森にアミノ基を2個分子内に持つジアミン類が存在し,大気粒子の形成に携わっていることを示しました。アミンはごく微量でも大気粒子をつくるきっかけになるとして近年注目されていますが,これまでは腐敗や工業的に排出されるモノアミン類(アミノ基を1個持つ)が大気アミンとして取り扱われてきました。今回の研究では,広葉樹林帯の森林大気中に2個のアミノ基を持つジアミン化合物やアミノアミド化合物が多く存在していることを見出しました。しかも,水分子などとの結合エネルギーのシミュレーションから,粒子形成に寄与するポテンシャルはモノアミン類よりはるかに高いことが示されました。このことにより,日本の国土の3分の2を占める森林で生成される化合物の大気環境影響へのインパクトが示されました。
本研究成果は,令和4年2月17日(米国時間),米国化学会が発行する科学雑誌「ACS Earth and Space Chemistry」に掲載されました。
【論文情報】
論文名:Biogenic diamines and their amide derivatives are present in the forest atmosphere and may play a role in particle formation
著者:Kentaro Saeki, Kazuya Ikari, Hiroyuki Yokoi, Sjin-Ichi Ohira, Hiroshi Okochi, and Kei Toda*
*印は責任著者を示す
掲載誌:ACS Earth and Space Chemistry
doi:10.1021/acsearthspacechem.1c00404
【詳細】
・プレスリリース本文(285KB)
お問い合わせ熊本大学大学院先端科学研究部(理学系)
担当:教授 戸田 敬
電話:096-342-3389
e-mail: todakei※kumamoto-u.ac.jp
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