植物寄生性線虫が農作物に寄生するしくみを解明 -植物に自分の巣を作らせる-

農作物の害虫として知られ、世界で年間数十兆円の被害をもたらす植物寄生性線虫は、根本的な対抗策がなく、新たな品種や農薬の開発が求められています。
この線虫は、農作物の根に寄生して根こぶと呼ばれる巣を作り、植物から栄養を奪ってしまいます。そのため作物が枯死したり、商品価値が無くなったりするうえ、一度発生するとその畑で数年にわたって作物を育てることができなくなるような、非常に厄介な存在です。今、この線虫による農業被害が世界中で拡大の一途をたどっています。
今回熊本大学 先端科学研究部 澤進一郎教授らは、植物寄生性線虫に寄生された植物の反応を分析した結果、寄生によって幹細胞が活性化することで根こぶを形成していることを見出しました。つまり植物寄生性線虫は、植物 の幹細胞を巧みに操り、根に自分の巣を作らせていることが明らかになりました。今後は、この知見を利用した作物の品種改良を行うこと等で、 年間数十兆円といわれる線虫被害の軽減への貢献が期待されます。

本研究の成果は「Frontiers in Plant Science」に日本時間の平成29年7月13日16時に掲載されました。

【雑誌名】
Frontiers in Plant Science

【DOI】
10.3389/fpls.2017.01195

【論文名】
”Root-knot and cyst nematodes activate procambium-associated genes in Arabidopsis roots”
”根こぶ線虫とシスト線虫はシロイヌナズナの根において前形成層(維管束幹細胞)を活性化する。”


【著者名】
Yasuka L. Yamaguchi 1# , Reira Suzuki 1# , Javier Cabrera 2† , Satoru Nakagami 1† , Tomomi Sagara 1 , Chika Ejima 1 , Ryosuke Sano 3 , Yuichi Aoki 4 , Rocio Olmo 2 , Tetsuya Kurata 5 , Takeshi Obayashi 4 , Taku Demura 3 , Takashi Ishida 1 , Carolina Escobar 2 , Shinichiro Sawa 1*

1 Graduate School of Science and Technology, Kumamoto University, Kumamoto, Kumamoto, Japan
2 Facultad de Ciencias del Medio Ambiente y Bioquímica, Universidad de Castilla-La Mancha, Toledo, Spain
3 Graduate School of Biological Science, Nara Institute of Science and Technology, Ikoma, Nara, Japan
4 Graduate School of Information Sciences, Tohoku University, Sendai, Miyagi, Japan
5 Plant Global Education Project, Graduate School of Biological Science, Nara Institute of Science and Technology, Ikoma, Nara, Japan

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF 241KB)

お問い合わせ
熊本大学大学院先端科学研究部
担当:教授 澤 進一郎
e-mail:sawa※kumamoto-u.ac.jp
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