隕石衝突の規模を鉱物から探る -高強度レーザーで再現した隕石衝突の瞬間を超高速X線撮影-
【ポイント】
○ 鉱物が隕石衝突のような強い衝撃を受ける状況を実験室で再現し、その瞬間の結晶構造変化を放射光X線により超高速撮影した
○ ジルコニア鉱物 (バッデレイアイト ※1) について実験を行い、衝撃圧縮により結晶構造が変化し、その後、圧縮が解放されると元の結晶構造に戻ることが分かった
○ バッデレイアイトの衝撃挙動が解明されたことで、 クレーターに存在する衝撃を受けたバッデレイアイトの持つ痕跡を正確に読み解くことができるようになり、 過去の隕石衝突履歴から惑星の形成、進化過程を解明する研究 に貢献することが期待される
【概要説明】
高エネルギー加速器研究機構(KEK)、筑波大学、熊本大学は、KEKの放射光実験施設フォトンファクトリーアドバンストリング (PF AR)において、ジルコニア(ZrO 2)鉱物であるバッデレイアイトについて衝撃実験を行い、衝撃を受けている最中に起きる結晶構造の変化をナノ秒(1ナノ秒=1億分の1秒)の時間スケールで直接観測することに成功しました。
これは、KEK物質構造科学研究所の髙木壮大 研究員、一柳光平 研究員、野澤俊介 准教授、深谷亮特任 助教、船守展正 教授、足立伸一 教授、筑波大学生命環境系の興野純 准教授、熊本大学の川合伸明 准教授らを中心とした共同研究グループの成果です。本研究は、KEKPF-ARの時間分解X線回折実験ステーションNW14Aを利用して行われました 。
本成果は、 アメリカ地球物理学連合(AGU American Geophysical Union )の発行する科学雑誌『Geophysical Research Letters 』(9月16日号(Volume47, Issue17)) に掲載されます 。
【用語解説】
※1 バッデレイアイト
常温常圧では単斜晶相の結晶構造を持つ鉱物。 化学組成はZrO2。天然に産出するジルコニアで、装飾品にも用いられる。
【論文情報】
- 論文名:In situ observation of the phase transition behavior of shocked baddeleyite
(日本語名:衝撃を受けたバッデレイアイトの相転移挙動のその場観察) - 掲載誌:「Geophysical Review Letters 」 9月16日号(オンライン版 8 月 31 日)
- doi:10.1029/2020GL089592
- プレスリリース本文(757KB)
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