細胞の骨組みの特徴に基づいたAIによる細胞の自動分類と分析

【ポイント】

  • 細胞の骨組み(細胞骨格*1)の特徴に基づいた機械学習*2によって細胞を自動分類する解析手法を確立しました。
  • 本手法は細胞を自動的に分類するだけでなく、分類の基準となった細胞骨格の特徴の種類やその傾向を分析することもできます。
  • 本手法により、細胞骨格を制御する分子機構の解明や、細胞骨格を変化させる薬剤の探索がより一層促進されると期待されます。

【概要説明】

 熊本大学大学院自然科学教育部修士課程2年の吉田大一大学院生と同大学大学院先端科学研究部の檜垣匠教授を中心とした研究グループは、細胞骨格の顕微鏡画像から計測した細胞骨格の特徴を表すデータをAI(機械学習モデル)に学習させ、細胞を高精度に分類するとともに分類の基準となった細胞骨格の特徴に関する分析を行う解析手法を確立しました。

 本研究グループはこれまでデジタル画像解析技術を駆使して、細胞骨格が織りなす複雑な構造(細胞骨格パターン)を定量的に評価する手法の開発を進めてきました。一方、AIを活用して顕微鏡画像を大規模に解析する研究が国内外を問わず進められ、注目を浴びています。しかし、細胞骨格の特徴に基づいて細胞を自動分類する研究例はほとんどありませんでした。今回、研究グループは異なる細胞骨格パターンを自動的に識別するために機械学習を用いた手法の有用性を検討しました。研究グループがこれまで開発してきた細胞骨格パターンを表す三つの特徴(並行度、密度、束化具合)を活用し、これらのデータを機械学習モデルに学習させることで、野生株と細胞骨格関連遺伝子の変異体を自動的かつ高精度に分類することに成功しました。また、分類に寄与した細胞骨格の特徴やその傾向について分析することもできました。

 本研究成果は令和4年10月11日に科学雑誌「Protoplasma」オンライン版のカテゴリー’New Methods in Cell Biology’(細胞生物学における新手法)に掲載されました。本研究は熊本大学国際先端科学技術研究機構 Research Cluster ’Digital Plant Cell Biology’、日本学術振興会科研費、科学技術振興機構 CRESTの支援を受けて実施したものです。

 

【用語解説】

*1 細胞骨格:タンパク質でできた繊維状の構造体。細胞骨格は細胞の状態に応じて網や束などの高次構造を形成し、細胞形状の維持や変化を担う。

*2 機械学習:人工知能(AI)技術のひとつとして位置づけられるデータ分析手法。入力したデータを基にある種のパターンを学習し、未知のデータからパターンを探索する。


【論文情報】

論文名:Machine learning and feature analysis of the cortical microtubule organization of Arabidopsis cotyledon pavement cells.
著者:Daichi Yoshida, Kae Akita, Takumi Higaki* (*責任著者)
掲載誌:Protoplasma
doi:https://doi.org/10.1007/s00709-022-01813-7
URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00709-022-01813-7

【詳細】 プレスリリース(PDF376KB)



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お問い合わせ
熊本大学大学院先端科学研究部
担当:教授 檜垣 匠
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