根の伸長を制御するペプチドホルモンを発見

【ポイント】

  • シロイヌナズナ*1を用いて、ペプチドホルモン*2が根の分岐頻度及び分岐速度を抑制することを発見しました。
  • 根菜類の枝分かれ防止や根の伸長促進など、農作物の収量増加やストレス耐性付与などへの応用が期待されます。

【概要説明】

 熊本大学大学院先端科学研究部附属生物環境農学国際研究センターの澤進一郎教授・中上知博士研究員らの研究グループは、モデル植物のシロイヌナズナを用いて、ある種のペプチドホルモンが根の分岐頻度及び分岐速度を抑制することを発見しました。根は水や栄養分の吸収を担う器官であるため、根の伸長は土壌の環境により適切に調節される必要があります。本研究は、植物が根の伸長を制御する仕組みを理解する上で重要な知見であり、根菜類の枝分かれ防止や根の伸長促進など、農作物の収量増加やストレス耐性付与などへの応用が期待されます。
 本研究成果は令和5年2月26日に植物科学雑誌「The Plant Journal」に掲載されました。

 【今後の展開】

    今後、CLE1~7-CLV1/BAM1シグナルを介したLBD16の制御機構が解明されれば、シロイヌナズナがどのようにして根系を最適化しているのかの理解につながると期待されます。CLE遺伝子は、全ての陸上植物に保存されていると考えられているため、他の植物(農作物や園芸植物)における根系形成の仕組みを解明することにも役立つことが期待されます。CLEペプチドは人工的に合成することが容易であり、受容体に対する特異性が高いため、農作物や園芸植物において、人為的に副作用なく根系パターンを制御することが可能になることが期待されます。さらに、土壌環境にあわせて根系パターンを改良することで植物の成長を制御できれば、根菜類の枝分かれ防止や根の伸長促進など、農業、園芸分野へ貢献することも期待できます。

【用語解説】

*1:  シロイヌナズナ:アブラナ科の一年草(学名:Arabidopsis thaliana)。植物体のサイズが小さい、世代間隔が短い及び遺伝子導入が容易などの理由から、モデル植物として幅広く利用されている。

*2: ペプチド:アミノ酸が2個以上連結した短いタンパク質。ペプチドの中には、ホルモンとしての生理活性を示すものが存在する。


【論文情報】

論文タイトル
“CLE3 and its homologues share overlapping functions in the modulation of lateral root formation through CLV1 and BAM1 in Arabidopsis thaliana”
論文著者・所属
Satoru Nakagami1, Tsuyoshi Aoyama2, Yoshikatsu Sato2, Taiki Kajiwara1, Takashi Ishida1,3, Shinichiro Sawa1, 3, 4
1 Graduate School of Science and Technology, Kumamoto University, Kumamoto 860-8555, Japan.
2 Institute of Transformative Bio-Molecules, Nagoya University, Nagoya 464-8601, Japan.
3 International Research Organization for Advanced Science and Technology (IROAST), Kumamoto University, Kumamoto 860-8555, Japan.
4 International Research Center for Agriculture and Environmental Biology, Kumamoto University, Kumamoto 860-8555, Japan.
○雑誌名   The Plant Journal
○DOI:10.1111/tpj.16103
○URL:https://doi.org/10.1111/tpj.16103

【詳細】 プレスリリース(PDF814KB)



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教授 澤 進一郎
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博士研究員 中上 知
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E-mail:
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