乾癬で皮膚由来G-CSFが病的な顆粒球産生を誘導する仕組みを解明
(ポイント)
- モデルマウスとヒトデータ解析により、皮膚で産生されるG-CSFが骨髄に作用し、乾癬の病態形成を促進する「皮膚―骨髄病態連関」を明らかにした。
- 乾癬では皮膚の血管内皮細胞がG-CSFの主要な供給源となり、病的な好中球産生を促進して炎症を悪化させることを示した。
- G-CSFを阻害すると乾癬症状が改善したことから、血管内皮の産生するG-CSFが乾癬の新たな治療標的となる可能性が示された。
(概要説明)
これまで、乾癬治療はIL-17やIL-23といったT細胞由来のサイトカインを標的とする治療が中心でしたが、これらの治療だけでは症状が完全に改善しない例も多く、好中球など他の免疫細胞の関与の詳細はわかっていませんでした。
熊本大学国際先端医学研究拠点(IRCMS)の滝澤仁教授らの研究グループは、乾癬モデルマウスの解析およびヒト乾癬患者の遺伝子発現データの再解析によって、皮膚の炎症が骨髄に伝わり過剰な好中球産生(緊急顆粒球生成)を引き起こす仕組みを明らかにしました。皮膚に存在する血管内皮細胞がG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を産生し、これが骨髄に作用して好中球の産生を亢進させること、産生された好中球が皮膚に浸潤して炎症を悪化させることを突き止めました。実際に、中和抗体により好中球を除去したり、G-CSFを阻害したりすると、皮膚への好中球浸潤が減少し、乾癬の症状が軽減することも示されました。
本研究成果は、G-CSFや皮膚血管内皮細胞の活性化状態を乾癬の重症度やバイオマーカーとして活用したり、既存の生物学的製剤と組み合わせた好中球を標的とする新たな治療戦略の開発につながることが期待されます。
本研究成果は令和8年6月16日に科学雑誌「EMBO Molecular Medicine」に掲載されました。
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(KAKENHI: 21KK0150、21H02953、22K19548)、JST FOREST事業(JPMJFR200O)、化学及血清療法研究所(KAKETSUKEN)、公益財団法人日本財団(The Japan Prize Foundation)、武田科学振興財団などの支援を受けて実施したものです。
展開
今回の成果により、乾癬は皮膚だけで起きている病気ではなく、皮膚と骨髄が連携しあって進行する病気であることが新たに示されました。この「皮膚から骨髄への信号伝達」という仕組みを標的にすることで、これまでのT細胞を標的とした治療薬とは異なる方法で乾癬を治療できる可能性があります。今後、血液中のG-CSFの量や血管内皮細胞の状態を、乾癬の重症度や治療効果を調べるためのバイオマーカーとして活用したり、好中球やG-CSFを標的とした新しい治療法の開発につながることが期待されます。
用語解説
- 好中球(こうちゅうきゅう):体に侵入した細菌などを真っ先に攻撃する免疫細胞の一種。
- 血管内皮細胞(けっかんないひさいぼう):血管の内側の壁を作っている細胞。
- G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子):骨髄に働きかけて好中球を作らせる働きを持つタンパク質。
- サイトカイン:免疫細胞同士が情報をやり取りするために分泌する、小さなタンパク質の総称。
- T細胞:免疫の司令塔として働く免疫細胞の一種。乾癬ではIL-17などの炎症物質を作り出す。
- 骨髄(こつずい):骨の内部にある組織で、血液細胞(赤血球・白血球・血小板など)を作る場所。
- 顆粒球生成(かりゅうきゅうせいせい):骨髄で好中球などの顆粒球が作られる過程。感染や炎症時に急激に活発化することを「緊急顆粒球生成」と呼ぶ。
(論文情報)
論文名:'Skin-derived G-CSF activates pathological granulopoiesis upon psoriasis'
著者:Tomson Kosasih, Tatsuya Morishima, Sohyeon Lee, Jungyeon Yoon, Kanako Wakahashi, Pilhan Kim, Aiko Sada, Hitoshi Takizawa*
(*Corresponding author)
掲載誌:'EMBO Mol Med' (2026).
doi:10.1038/s44321-026-00456-y
URL:https://link.springer.com/article/10.1038/s44321-026-00456-y
【詳細】 プレスリリース(PDF318KB)
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お問い合わせ
熊本大学 国際先端医学研究機構(IRCMS)
担当:教授 滝澤 仁
e-mail: htakizawa※kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)