抹茶がうつ様行動を軽減するメカニズムの一端を解明

【ポイント】

  • 社会集団から隔離された1匹の状態で飼育したマウスの解析から、抹茶はうつ様症状が強いマウスに対してのみ抗うつ効果を発揮することを見出しました。
  • うつ様症状が強いマウスは脳内ドパミン神経回路の活性化状態が低いものの、抹茶を飲ませるとその活性化状態が高くなることが分かりました。
  • 日常生活における精神状態やストレスに対する感受性の違いを考慮し、抹茶を活用した健康増進プログラムが開発・実践されることが期待されます。

【概要説明】

 熊本大学大学院生命科学研究部の倉内祐樹准教授らの研究グループは、抹茶にうつ症状を軽減させる効果があることを明らかにしました。抹茶(Matcha)は世界中で親しまれる嗜好品であり様々な有益作用が期待されています。しかし抹茶を飲もうとしている時の精神状態の違いや、抹茶を飲んだことによる効果の個人差に着目した研究は行われていません。研究グループは実験動物のうつ様行動を評価する尾懸垂試験1により、抹茶が抗うつ効果を発揮するのは、社会集団から隔離された1匹の状態で飼育した、強いうつ様症状が現れているマウスに対してのみであることを見出しました。さらに、抹茶は脳内ドパミン神経回路の活性化状態を高めることで抗うつ効果を発揮することも明らかにしました。今後、日常生活における精神状態の違いやストレスに対する感受性の個人差を考慮し、抹茶を活用した健康増進プログラムが開発・実践されることが期待されます。

 本研究は、文部科学省科学研究費助成事業、株式会社あいや、うま味研究会の支援を受けており、研究成果は「Nutrients」誌のオンライン版に令和5122日に掲載されました。

 

【今後の展開】

 うつ病の発症を予防するためには、日常の様々なストレスに適切に対処するセルフケアを実践し、心や身体の健康を維持することが大切です。今回の研究成果は、食品である抹茶(Matcha)がストレス対処に有益な作用をもたらす可能性を示しています。今後、日常生活における精神状態の違いやストレスに対する感受性の個人差を考慮し、抹茶を活用した健康増進プログラムが開発・実践されることが期待されます。

 

【用語解説】

※1:尾懸垂試験(びけんすいしけん)

抗うつ薬のスクリーニングや、実験動物のうつ様行動を評価する行動試験。

 

【論文情報】

  • 論文名:Matcha Tea Powder’s Antidepressant-like Effect through the Activation of the Dopaminergic System in Mice is Dependent on Social Isolation Stress
  • 著者名:Yuki Kurauchi*,†, Yuki Ohta, Keigo Matsuda, Wakana Sanematsu, Hari Prasad Devkota, Takahiro Seki, Hiroshi Katsuki

     (*責任著者,共同第一著者)

  • 掲載誌:Nutrients
  • doi:10.3390/nu15030581
  • URL:https://www.mdpi.com/2072-6643/15/3/581

 
【詳細】 プレスリリース(PDF705KB)



icon.png sdg_icon_03_ja_2.png

<熊本大学SDGs宣言>

お問い合わせ
熊本大学大学院生命科学研究部 薬物活性学
担当:准教授 倉内 祐樹(くらうち ゆうき)
電話:096-371-4185

E-mail:kurauchy※kumamoto-u.ac.jp

(※を@に置き換えてください)