糖尿病症例のプラーク不安定化において、動脈硬化惹起作用を有するリポタンパク(a)粒子が関与することを報告

 糖尿病患者の心筋梗塞発症に関与するプラーク不安定化において、動脈硬化惹起作用を有するリポタンパク(a)粒子が関与することを、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津 欣也、略称:国循)の心臓血管内科 中村 隼人 派遣研修生、片岡 有 医長、野口 暉夫 副院長、辻田 賢一 熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学 教授らが報告しました。この研究結果は、欧州動脈硬化学会英文機関誌「Atherosclerosis」オンライン版に、2022年4月9日に掲載されました。

 2型糖尿病は心筋梗塞などの心血管疾患発症リスクが高い疾患であり、その発症に寄与する因子を同定し有効な治療対策を確立することが求められています。心筋梗塞は、冠動脈のプラークが不安定化し破綻・血栓形成を引き起こすことにより発症する病態です。本研究の著者らは、不安定プラークが心筋梗塞発症に関与し、脂質低下治療薬「スタチン」を用いたLDLコレステロール管理療法が不安定プラークの改善に有効であることをすでに報告しています (片岡 有、野口 暉夫、安田 聡 Eur Heart J 2020;41:2965-73, J Am Coll Cardiol 2014;63:989-99, 2015;66:245-56 )。しかしながら、スタチン投与下でも心筋梗塞は依然として発症することから、不安定プラークを引き起こす詳細な機序を解明し更なる有効な治療法の開発につなげることが必要です。近年、炎症・酸化ストレスや血栓形成促進作用を有するリポタンパク粒子(a)は、心筋梗塞などの心血管疾患リスクを高めることが報告されており、特に糖尿病症例においてその関与は顕著であることが確認されました。著者らは、糖尿病症例におけるプラーク不安定化にリポタンパク粒子(a)が関与する可能性を考え、冠動脈疾患を既に発症した非糖尿病・糖尿病患者において、リポタンパク粒子(a)と不安定プラーク形成の関係を検証しました。

 
【論文情報】
論文名:Elevated Lipoprotein (a) as a Potential Residual Risk Factor Associated with Lipid-rich Coronary Atheroma in Patients with Type 2 Diabetes and Coronary Artery Disease on Statin Treatment: Insights from the REASSURE-NIRS Registry
著者:  Nakamura H, Kataoka Y, Tsujita K, Noguchi T, et al.
掲載誌:Atherosclerosis

 
【詳細】 プレスリリース(PDF466KB)

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