新生児マウスの脳毛細血管を単離する手法を開発-脳発達・発育に栄養が与える影響の解明に期待-

【ポイント】

  • 新生児マウス1匹の凍結脳から脳毛細血管を単離する技術を開発しました。
  • 新生児マウスの脳毛細血管において、約4,400種類のタンパク質の発現情報を得るとともに、新生児マウス脳毛細血管においてアミノ酸輸送や血管周囲環境維持に関わるタンパク質の発現が変化していることを明らかにしました。
  • 今後、出生後の脳毛細血管の機能変化と脳発達・発育に関する研究が加速することで、新生児のアミノ酸等の栄養状態と脳発達・発育との関係の理解が深まり、よりよい脳発達に寄与することが期待されます。

【概要説明】
    熊本大学大学院生命科学研究部(薬学系)の大槻純男教授らの研究グループは、生後7日の新生児マウス1匹の凍結脳から脳毛細血管※1を単離する技術を開発し、プロテオミクス※2により新生児マウスの脳毛細血管における分子変化を明らかにしました。
 脳は出生直後から急激に発達・発育します。また、脳毛細血管は、血液から脳への栄養供給を担い、制御しています。これまで新生児マウスの脳が小さくかつ脆弱であるために脳毛細血管の単離が困難であったことが、新生児の脳毛細血管の解析の課題でした。今回開発した技術及び網羅的な分子データは、脳への栄養供給の観点から新生児の栄養状態と脳発達・発育との関係を理解する研究に大きく寄与し、より良い脳発達に貢献することが期待されます。
 本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業(研究課題/領域番号:21H02649 及び23H04937)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)生命科学・創薬研究支援基盤事業「超微量・高深度な定量プロテオーム解析のワンストップ支援と高度化」及び国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援を受けて「Fluids and Barriers of the CNS」に日本時間6月23日に公開されました。

【用語解説】
※1:脳毛細血管
動脈と静脈の間の細い血管を毛細血管と呼ぶ。脳の毛細血管は他の組織の毛細血管と構造や機能が異なり、血液脳関門という特殊な機能を有している。そのため、血液中の栄養等は血液から脳に自由に行き来することはできず、脳毛細血管に発現する輸送分子によって供給される分子種や供給速度が制御されている。すなわち、脳毛細血管が脳への栄養供給をコントロールしている。

※2:プロテオミクス
特定試料中のタンパク質の種類と量を網羅的に計測する技術。今回は新生児と成体マウスの脳毛細血管をプロテオミクスで解析し、その網羅的なタンパク質の種類と量を比較する事によって、どのような分子の発現が新生児マウスの脳毛細血管で変化しているか解析を行った。


【論文情報】

  • 論文名:Development of a method for isolating brain capillaries from a single neonatal mouse brain and comparison of proteomic profiles between neonatal and adult brain capillaries
  • 著者:Yudai Hamada, Seiryo Ogata, Takeshi Masuda, Shingo Ito, Sumio Ohtsuki
  • 掲載誌:Fluids and Barriers of the CNS
  • doi:10.1186/s12987-023-00449-w
  • URL:https://doi.org/10.1186/s12987-023-00449-w

【詳細】 プレスリリース(PDF654KB)

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