週1回のグリコアルブミン測定×アプリが2型糖尿病を持つ方の血糖管理を改善― 低/非侵襲・低コスト・分かりやすい次世代自己血糖モニタリング法の確立へ ―

【ポイント】

  • 世界で初めて確立したグリコアルブミン (GA) 郵送検査法を用いて、2型糖尿病のある方の在宅血糖モニタリングへの応用を研究。
  • 週に1回在宅で自己採血した指頭血を郵送し、測定結果を本人のスマートフォンアプリで確認できる新たなモニタリング手法を実現。
  • 2型糖尿病のある方を対象にオープンラベル無作為化比較試験を実施した。郵送GA測定と行動変容アプリを使用した介入群において、標準治療のみの対象群と比較してHbA1c、GA、体重などの指標が有意に改善。
  • 得られた改善効果は、開発中の完全非侵襲な唾液郵送検査法や、指頭血による微侵襲な迅速検査法(POCT)、更には行動変容アプリの改良によって今後一層強化されることが期待される。



【概要説明】

 医療法人社団 陣内会 陣内病院の陣内秀昭院長、東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科の相原允一助教、熊本大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科(大学院生命科学研究部)の窪田直人教授、東京大学発医工連携スタートアップである株式会社Provigateの関水康伸代表取締役CEOらによる研究グループは、週に1回の在宅グリコアルブミン(GA)注1検査と行動変容アプリを併用することで、2型糖尿病のある方の血糖値や体重などが有意に改善することを見出しました。
グリコアルブミン(GA)値は過去1週間程度の平均血糖値の変化に応じて鋭敏に変化すると期待されます。そのため、週1回GA値を測定すれば、直近1週間程度の食事、運動、服薬など血糖値に影響する生活習慣の変化を、GA値の変化として簡単に数値化できると考えられます。しかし、在宅でGA値を測定し行動変容に活かす研究はこれまでに報告がありませんでした。
今回の成果を受けて、研究チームはより手軽で侵襲性の低い在宅迅速検査(POCT)法や唾液による郵送検査法の研究開発、及び専用の行動変容アプリの改良も進めています。これらは、将来的により良い糖尿病治療の実現につながることが期待されます。
本研究成果は、5月16日(中央ヨーロッパ時間)にDiabetes Therapy誌のオンライン版で掲載されました。



【考察と今後の展望】
 在宅でGA値を測定し行動変容に活かす研究は本研究が世界初の報告です。手軽な週1回の測定で有効に行動変容を誘発するGA×行動変容アプリは、低頻度・低コスト・低/非侵襲な在宅血糖モニタリング法として有望です。研究チームはGAの臨床実用化を目指した研究グループOMEGA Study Group を発足し、指頭血による在宅迅速検査(POCT)法や完全非侵襲な唾液によるGAの郵送検査法の研究開発、及び専用の行動変容アプリの改良も進めています。今後のGA検査の研究成果が、より良い糖尿病治療の実現につながることが期待されます。




【論文情報】

  • 雑誌名:Diabetes Therapy
  • 題 名:Efficacy of self-review of lifestyle behaviors with once-weekly glycated albumin
    measurement in people with type 2 diabetes: a randomized pilot study.
  • 著者名:Hideaki Jinnouchi, MD, PhD; Akira Yoshida, PhD; Mariko Taniguchi; Eisaku Yamauchi; Daisuke Kurosawa; Kenji Yachiku, MD, MHA; Itsushi Minoura, PhD; Takashi Kadowaki, MD, PhD; Toshimasa Yamauchi, MD, PhD; Masakazu Aihara, MD, PhD; Naoto Kubota, MD, PhD; Koshin Sekimizu, PhD*
    DOI:10.1007/s13300-024-01599-2

【詳細】プレスリリース(PDF1006KB)

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お問い合わせ

<本研究に関すること>

熊本大学病院 糖尿病・代謝・内分泌内科(大学院生命科学研究部) 教授 
窪田 直人(くぼた なおと)
e-mail:nkubota0511※kumamoto-u.ac.jp

<プレスリリースに関すること>

熊本大学総務部総務課広報戦略室
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