脂肪肝・肥満の増悪因子の発見とメカニズムの解明~生活習慣病抑制への期待~
熊本大学大学院生命科学研究部(医学系)の山縣和也教授、吉澤達也講師らは、
サーチュイン
*1
と呼ばれるたんぱく質の1種であるSIRT7が肥満・糖尿病や脂肪肝の発症増悪に関与することを発見すると共に、SIRT7による脂肪肝発症のメカニズムを解明することに成功しました。
過食や運動不足といった生活習慣の変化に伴い、我が国において肥満、糖尿病、脂肪肝などの代謝異常に伴う疾患が急激に増加しています。肥満や糖尿病は健康寿命や生活の質を損なうと共に、日本人の主要な死因である心血管障害の発症リスクに強く関係しています。また、脂肪肝の一部は、肝硬変から肝がんに至ります。超高齢化社会を迎えて、代謝異常症の成因・発症機構を解明することは重要な医学的・社会的問題でありますが、その分子機構については不明な点が多く残されていました。
今回、山縣教授・吉澤講師らはSIRT7遺伝子を無くしたマウスに高脂肪食を与えると、通常のマウスに比べて肥満や糖尿病の程度が軽度であり、脂肪肝の発症が著明に抑制されることを見出しました
(図1)
。さらにSIRT7が働かないマウスでは、肝細胞において脂肪の取り込みや貯蔵を制御しているTR4という
転写因子
*2
のたんぱく質量が低下するために脂肪肝がおこりにくくなるという新規の分子メカニズムについても解明することに成功しました
(図2)
。
今回の研究成果から、SIRT7の働きを抑制することが、脂肪肝や肥満・糖尿病の効果的な新しい治療薬の開発につながるものと期待されます。
本研究成果は、米国科学雑誌「Cell Metabolism」のオンライン版に4月1日12:00正午(アメリカ東部時間)に掲載されました。本研究は文部科学省・日本学術振興会の科学研究費補助金による支援を受けて行われたものです。
詳細:
プレスリリース本文
(PDF 699KB)
(*1~2の用語解説、図1、図2はプレスリリース本文中に記載)
【研究内容に関する問い合わせ先】
熊本大学大学院生命科学研究部
担当:山縣和也(病態生化学分野教授)
電話:096-373-5068
FAX:096-364-6940
e-mail:k-yamaga※kumamoto-u.ac.jp
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