エイズウイルスの感染能力を消失させ破壊する酵素をGANP分子がウイルスの中枢へ運び込むことを発見

熊本大学大学院生命科学研究部の阪口薫雄教授の研究グループは、同グループが2000年に発見した GANP分子 注1 が、 CD4陽性ヘルパーT細胞 注2 内で増加しHIV-1ウイルス内に感染能力を消失させる分子であるシチジン脱アミノ化酵素の APOBEC3G 注3 を送り込むことを発見しました。
ヒトでは シチジン脱アミノ化酵素AID/APOBECファミリー 注4 は11種類存在します。そのうちAPOBEC3GはエイズHIV-1ウイルスの遺伝子そのものに多く変異を導入することでウイルスの感染能力を消失させる分子として知られていましたが、効率よくHIVウイルス内に送り込むことは困難でした。また、私たちが発見したGANP分子は、CD4陽性ヘルパーT細胞における機能の報告はこれまでありませんでしたが、今回の研究により、CD4陽性ヘルパーT細胞の活性化によってGANP分子が増加し、APOBEC3Gをウイルス粒子のコアと呼ばれる中枢まで運び込むことが出来ることを確認しました。
つまり、ウイルスの感染能力を消失させる分子を効率よくHIVウイルスへ送り込むことができるようになったことで、HIVウイルスを破壊し、感染を阻止することができることを明らかにしました。
本研究は、熊本大学大学院生命科学研究部感染免疫学講座免疫学分野の前田和彦助教、Sarah Ameen Almofty大学院生(サウジアラビア王国国費留学生)、阪口薫雄教授らのグループによって、熊本大学グローバルCOE「エイズ制圧を目指した国際教育研究拠点」、文部科学省「新興・再興感染症研究拠点形成プログラム」文部科学省の科学研究費補助金の支援を受けて行われたものです。その成果は科学雑誌「米国免疫学会誌(The Journal of Immunology)」2013年12月15日(日本時間2013年12月16日)号【日本時間12月16日0:00解禁】に掲載されます。

詳細: プレスリリース本文 (PDF 697KB)
注1~4の用語解説はプレスリリース本文中に記載

【研究内容に関する問い合わせ先】
熊本大学大学院生命科学研究部感染免疫学講座免疫学分野
前田 和彦(まえだ かずひこ)助教
阪口 薫雄(さかぐち のぶお)教授
電話・FAX:096-373-5135、096-373-5138
e-mail: kazmaeda※kumamoto-u.ac.jp ,nobusaka※kumamoto-u.ac.jp
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