日比 泰造教授(大学院生命科学研究部小児外科学・移植外科学講座)の論文がAmerican Journal of Transplantation誌に掲載されました。
【ポイント】
- 本邦の臓器移植後COVID-19 患者1,632 人の予後をパンデミック全体にかけて解析。
- 臓器移植後患者は一般人口と比較した標準化死亡比が一貫して高く、第6 波以降はその差がむしろ拡大。
- 効果が低いとされる臓器移植後患者でもワクチンの接種は保護的に働き、60 歳以上の高齢者では重症化ならびに死亡リスクが高かった。
【概要説明】
このたび、日本医学会連合と日本移植学会の連携による全国多施設レジストリ研究(代表者:日比泰造 熊本大学小児外科・移植外科 教授)が行われ、山永成美(熊本赤十字病院 移植外科部長)らは本邦の臓器移植後COVID-19 患者1,632 人のパンデミック全体に亘る影響を明らかにしました。
臓器移植患者は免疫抑制下にあることから、COVID-19 感染による重症化率や死亡率が一般人と比較して高いことが知られていますが、パンデミック全体を通しての臨床的影響は明らかではありませんでした。本研究で2020 年2 月から2022 年7 月末までに全国72 施設から収集したCOVID-19 に感染した臓器移植患者1,632 人のデータを解析しました。移植患者の一般人口と比較した標準化死亡比は、パンデミック期間を通じて一貫して高く、第5 波 (Delta)で最低となるものの、第7 波(Omicron BA.5)に向かって再度上昇しU 字型のカーブを形成していました。60 歳以上の高齢と、強い免疫抑制は重症化および死亡と相関した一方、ワクチン接種はその有無だけでなく、接種回数を重ねるごとに重症化および死亡に至る危険性を低減させたことが明らかとなりました。
パンデミック後期の標準化死亡比の上昇は、一般人口とのワクチンの効果の差によるものと考えられますが、ワクチン接種自体は臓器移植後患者にとって保護的に働いていました。今後も臓器移植後患者はワクチン接種の継続や抗体製剤などによる防御、また一般的なマスク、手洗い、人ごみを避けるなどの感染予防策の継続が重要となるであろうことが考えられました。
【研究に得られた知見】
パンデミック後期の標準化死亡比の上昇は、一般人口とのワクチンの効果の差によるものと考えられますが、ワクチン接種自体は臓器移植後患者にとって保護的に働いていました。今後も臓器移植後患者は変異株による感染力の増加に対応するため、ワクチン接種の継続や抗体製剤などによる防御、また一般的なマスク、手洗い、人ごみを避けるなどの感染予防策の継続が重要となるであろうことが示唆されました。
▼詳細はこちら 【一般社団法人 日本医学会連合 [厚労科研]臓器移植後のCOVID-19患者の死亡リスク等に関する論文がAmerican Journal of Transplantation誌に採択されました。】
https://www.jmsf.or.jp/activity/page_947.html
【大学院生命科学研究部小児外科学・移植外科学講座について】
小児外科・移植外科は、新生児期〜乳幼児期〜学童期〜青年期に至るまであらゆる年齢の小児外科と、成人・小児の肝移植を中心とした腹部臓器移植外科の両翼を担う、高度な専門性を有する世界でもまれな外科学教室です。
現在、熊本大学病院が初めて主幹を務める、先進医療Bの全国多施設共同研究を進めています。
2022年9月に厚生労働省の承認がおり、対象となる患者さんの登録を進めております。
参考:厚生労働省のウェブサイト 先進医療B・番号65「生体肝移植術 切除が不可能な肝門部胆管がん 」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan02.html
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https://kumamoto-pst.jp/
お問い合わせ
熊本大学大学院生命科学研究部
小児外科学・移植外科学講座
担当:教授 日比 泰造 (ひび たいぞう)
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