アディポネクチンは善玉?それとも悪玉? ―高血圧患者における血中アディポネクチン高値は脳・心血管病の発症リスクに関連―
脂肪細胞から分泌されるタンパク質「アディポネクチン」は、生体に有益な多彩な生理活性を持つ“善玉”体内物質として注目されています。また、肥満、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病では、しばしば血中のアディポネクチン値が低下することが問題視されており、それが生活習慣病の悪化や動脈硬化を促進し循環器疾患の発症リスクを高めることが懸念されています。従って、血中アディポネクチン濃度を高めることは生活習慣病や循環器疾患の予防・治療に有益であると考えられており、それを目的とした新しい治療法の臨床応用が期待されています。しかしながら、これまで高血圧患者におけるアディポネクチンの臨床的意義については十分わかっていませんでした。
今回、熊本大学大学院生命科学研究部(医学系)の光山勝慶教授、同大学病院地域医療・総合診療実践学寄附講座の松井邦彦特任教授、同大学保健センターの副島弘文准教授らの研究グループは、同研究グループが行った高リスク高血圧患者を対象とした臨床研究(ATTEMPT-CVD研究)データを元に、血中アディポネクチン濃度と心血管疾患/腎機能悪化の発生率との関連性について解析調査を行いました。その結果、血中アディポネクチン高値グループでは心血管疾患/腎機能悪化の発生リスクが有意に高いことを明らかにしました。これまで血中アディポネクチン値を高めることが生活習慣病改善や健康寿命の延伸に有益であると考えられていましたが、今回の高血圧患者での解析結果は予想外の結果であり、患者の病態によっては血中アディポネクチン値を高めることが必ずしも有益ではなく、むしろ循環器疾患発症の高リスクと関連することを示しました。
本研究成果は、イギリスのオープンアクセスジャーナル(Scientific reports)に英国時間11月12日10時(日本時間11月12日19時)に掲載されました。また、ATTEMPT-CVD研究は、公益財団法人長寿科学振興財団の支援により行われました。
【論文情報】
論文名:Total adiponectin is associated with incident cardiovascular and renal events in treated hypertensive patients: subanalysis of the ATTEMPT-CVD randomized trial
著者:光山勝慶(熊本大学大学院生命科学研究部生体機能薬理学)(責任著者)
副島弘文(熊本大学保健センター)
安田修(鹿屋体育大学スポーツ生命科学系)
野出孝一(佐賀大学医学部医学科内科学講座)
陣内秀昭(陣内病院)
山本英一郎(熊本大学病院循環器内科)
関上泰二(せきがみ内科・糖尿病内科)
小川久雄(国立循環器病研究センター)
松井邦彦(熊本大学病院地域医療・総合診療実践学寄附講座)
掲載誌:Scientific reports
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-019-52977-x
【詳細】
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