B型肝炎ウイルスを簡便で迅速かつ高感度に検出する「高感度抗原定量検査法」を開発

【ポイント】

  • B型肝炎ウイルス(HBV)を検出する新しい検査法「高感度HBコア関連抗原定量検査法」を開発しました。
  • 同検査法は、従来のPCR(HBV DNA定量法)よりも「安価」「簡便」で迅速検査(診療前検査)に対応可能で、臨床現場への導入が容易になります。また、従来の抗原検査法と比べて感度(1)、特異度(2)、再現性に優れており、特にHBV再活性化(3)のモニタリング検査で有用性が高い結果となることを証明しました。
  • 同検査法によりHBコア関連抗原(HBcrAg)を調べることで、それに相関する肝細胞内の完全閉環二本鎖DNAcovalently closed circular DNAcccDNA)の量や転写活性の指標とすることができ、病態進行の予測に有効であると考えられます。

【概要】

 熊本大学大学院生命科学研究部の田中靖人教授と名古屋市立大学大学院医学研究科の井上貴子講師は、株式会社先端生命科学研究所、富士レビオ株式会社との共同研究の成果として、B型肝炎ウイルス(HBV)を検出する「高感度HBcrAg定量検査法」を新たに開発しました。特に、同検査法はHBV再活性化モニタリング検査でPCR(HBV DNA定量法)と同等あるいはそれ以上に有用性が高いことを世界で初めて証明しました。これらの結果は臨床現場での新しい検査法の導入に加え、新薬の開発に道を開く可能性を示しています。本研究の成果は令和3322日午前0時(日本時間)に欧州肝臓学会誌「Journal of Hepatology(ジャーナル・オブ・ヘパトロジー)」電子版に公開されました。

 本研究はJSPS科学研究費基盤研究B(JP19H03640)の助成を受け、日本医療研究開発機構(AMED)肝炎等克服実用化研究事業「実用化に向けたB型肝炎新規治療薬の探索及び最適化」の支援により行われました。

【研究の意義・今後の展開等】

 本研究により、今回新たに開発した高感度HBcrAg定量検査法の基礎性能は優れており、高感度かつ高い特異性を備えていることが分かりました。全自動化により迅速測定が可能であり、外来通院中のB型慢性肝炎症例の核酸アナログ製剤治療効果判定に活用されることが期待できます。また、HBV再活性化のモニタリングにおいて、高感度HBcrAg定量検査法は血中HBV DNAの代わりとなりうるHBVマーカーとして、今後さらに臨床データの蓄積が望まれます。

【用語解説】

1)感度:検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率」として定義される値。

2)特異度:検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陰性と判定されるべきものを正しく陰性と判定する確率」として定義される値。

3HBV再活性化HBV既往感染患者において、全身化学療法や免疫抑制療法などによりHBVが再増殖すること。HBV再活性化による肝炎は重症化しやすいだけでなく、肝炎の発症により原疾患の治療を困難にするため、発症そのものを阻止することが最重要である。

【論文情報】

    • 論文名:Clinical efficacy of a novel, high-sensitivity HBcrAg assay in the management of chronic hepatitis B and HBV reactivation(B型慢性肝炎およびHBV再活性化のマネージメントにおける新規「高感度HBcrAg測定法」の臨床的有用性)
    • 著者:井上 貴子1, 楠本 茂1, 飯尾 悦子1, 小川 慎太郎1, 鈴木 孝典1, 八木 慎太郎2, 金子 敦3, 松浦 健太郎1, 青柳 克己2,3, 田中 靖人1,4* corresponding author

       所属 名古屋市立大学1, 先端生命科学研究所2,富士レビオ株式会社3, 熊本大学4

    • 掲載雑誌:Journal of Hepatology
    • doi:10.1016/j.jhep.2021.02.017

【詳細】 プレスリリース本文 (PDF978KB)

お問い合わせ
熊本大学大学院生命化学研究部
担当:教授 田中 靖人
電話:096-373-5146
E-mail:ytanaka※kumamoto-u.ac.jp
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