新世代薬剤溶出性ステント下に存在する脂質性プラークが将来の心血管イベント発症に及ぼす影響を報告
冠動脈壁内の脂質性プラーク(注1)は急性冠症候群・心臓突然死等の心血管イベント発症の原因となることが知られていますが、留置された新世代薬剤溶出性ステント下に存在する脂質性プラークの意義は十分に検証されていませんでした。
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津 欣也、略称:国循)の心臓血管内科 邑井 洸太 医員、片岡 有 医長、野口 暉夫 副院長と、熊本大学大学院生命科学研究部の辻田 賢一 教授らが行った臨床研究により、新世代薬剤溶出性ステント下の脂質性プラークは、必ずしも将来の心血管イベント発症リスク増加に寄与しないことを報告しました。この研究結果は、カナダ心臓血管協会英文機関誌「Canadian Journal of Cardiology」オンライン版に、2022年7月12日に掲載されました。
(注1)脂質性プラーク:中心に脆弱な脂質成分を含有するプラークであり、心筋梗塞の原因となる。
本研究では、ステント下の脂質性プラークによる心血管イベント発症リスクの増加は認めませんでした。新世代薬剤溶出性ステントは、従来のステントに比して優れた抗動脈硬化作用や抗血栓性を有していると報告されています。このような作用は、脂質性プラークが将来の心血管イベント発生に及ぼす影響を減弱させた可能性が推察されます。
本研究成果から、新世代薬剤溶出性ステント留置後の心血管イベント発生予測のために、別の要因を探る必要性を考え、著者らは近赤外線スペクトロスコピーを用いた臨床研究を2018年11月より実施中です(SERIAL 研究)。今後、ステント内再狭窄に起因する心血管イベント発症の有効な予測法や予防法の確立を目指し研究を進めていく予定です。
【論文情報】
論文名 The Residual Lipid-rich Coronary Atheroma behind the Implanted Newer-generation Drug-eluting Stent and Future Stent-related Event’s Risks
著者名 Murai K, Kataoka Y, Tsujita K, Noguchi T, et al.
掲載誌 Canadian Journal of Cardiology
【詳細】 プレスリリース(PDF945KB)