高齢者の認知機能低下に関連する加齢性脳形態変化を報告
【ポイント】
- 高齢者では、加齢に伴い、「正常圧水頭症様」の脳形態に連続的に変化することが明らかになりました。
- さらに、この脳形態変化は脳萎縮と同様に認知機能低下に関連することが明らかとなりました。
- 本研究の結果から、老化による脳機能低下を予防する方法の開発につながる可能性があります。
【概要説明】
熊本大学病院神経精神科の日髙洋介特任助教、同大学大学院生命科学研究部神経精神医学講座の竹林実教授、近畿大学医学部精神神経科学教室の橋本衛教授、同大学医学部放射線医学講座の石井一成教授、大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室の池田学教授らの研究グループは、熊本県荒尾市の高齢者コホートデータを解析し、認知機能低下に関連する加齢性脳形態変化を報告しました。
本研究では、加齢によって生じる認知機能低下の原因を明らかにするために、熊本県荒尾市在住の、認知症のない1,356名の高齢者の脳MRI画像を解析しました。その結果、高齢者では加齢に伴い、脳形態が特発性正常圧水頭症※1様へと連続的に変化することが明らかになりました。さらにこの形態変化は、脳萎縮と同様に認知機能低下と関連していました。すなわち脳形態が正常圧水頭症様に変化することが、老化による認知機能低下の一因である可能性が示されました。
特発性正常圧水頭症は脳脊髄液動態の異常により認知症が生じる疾患です。本研究の結果から、脳脊髄液動態の老化過程を研究することの重要性が認識され、老化による認知機能低下を予防する方法の開発へとつながる可能性があります。
本研究成果は令和4年10月28日に米国科学雑誌「Fluids and Barriers of the CNS」に掲載されました。
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、文部科学省科学研究費助成事業の支援を受けて実施したものです。
【用語解説】
※1 特発性正常圧水頭症:脳脊髄液動態の障害により認知症が生じる疾患。高齢者に多く、認知機能障害、歩行障害、尿失禁が主な症状である。
【論文情報】
- 論文名:Impact of age on the cerebrospinal fluid spaces: high-convexity and medial subarachnoid spaces decrease with age
- 著者名:Yosuke Hidaka, Mamoru Hashimoto, Takashi Suehiro, Ryuji Fukuhara, Tomohisa Ishikawa, Naoko Tsunoda, Asuka Koyama, Kazuki Honda, Yusuke Miyagawa, Kazuhiro Yoshiura, Shuken Boku, Kazunari Ishii, Manabu Ikeda, Minoru Takebayashi
- 掲載誌:Fluids and Barriers of the CNS
- doi:10.1186/s12987-022-00381-5
- URL:https://fluidsbarrierscns.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12987-022-00381-5
【詳細】 プレスリリース(PDF471KB)
お問い合わせ
熊本大学病院神経精神科
担当:特任助教 日髙 洋介
電話:096-373-5184
E-mail:yskhdk※kuh.kumamoto-u.ac.jp
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