ザクロ葉・枝由来成分「PGG」がトランスサイレチン由来アミロイド線維を分解 ― ATTRアミロイドーシスに対する新しい治療戦略の候補 ―
【本研究成果のポイント】
- ザクロ(Punica granatum L.)の未利用部位である葉・枝から1,2,3,4,6-Penta-O-galloyl-β-D-glucose(PGG)を同定しました。
- ザクロ葉・枝抽出エキスやPGGは、ATTRアミロイドーシスの原因であるTTRアミロイド線維を試験管内(in vitro)で分解することを見出しました。
- PGGのアミロイド線維の分解活性に必要な構造的特徴(グルコースに結合するガロイル基の多点配置)が重要であることを証明しました。
- 動物実験代替モデル生物 elegans(線虫)のATTR病態モデル(in vivo)で、PGGが TTR凝集体を減少させ、その寿命・健康寿命を延ばすことを確認しました。
- PGGは、ATTRアミロイドーシス患者組織由来のアミロイド線維(ex vivo)も直接分解することを見出しました。
【概要説明】
熊本大学大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター(薬学系)の首藤 剛 准教授、大学院生命科学研究部脳神経内科学講座の植田 光晴 教授、大学院薬学教育部博士後期課程の鏡 明日香 氏らの研究チームは、ザクロ(Punica granatum L.)の未利用部位である葉・枝から得られる天然物 PGG が、ATTRアミロイドーシスの原因となる トランスサイレチン(TTR)アミロイド線維を直接標的として分解することを見いだしました。熊本大学独自の天然物バンクを用いた植物スクリーニングから研究を開始し、試験管内(in vitro)-線虫内(in vivo)-患者検体(ex vivo)の複数の評価系で一貫した活性を確認しました。
本成果は、すでに沈着したTTRアミロイド線維そのものを狙う新しいタイプの治療戦略の可能性を示します。既存の治療法を補完し得る選択肢としての展開も期待できます。研究成果は Cell Press のオープンアクセス誌 iScience に、本年11月20日(日本時間)にオンライン掲載されました。
【論文名】
Glycosidic scaffold bearing multiple galloyl moieties from pomegranate disrupts transthyretin amyloids
【著者名・所属】
Asuka Kagami1,2, Nami Hashimoto1, Ryoko Sasaki1, Yutaro Fukushima1,3, Hari Prasad Devkota4,5, Shoya Tanaka4, Mikiyo Wada4, Kunitoshi Yamanaka6, Shiori Yamakawa7, Shogo Misumi8,9, Takeshi Yokoyama10, Mineyuki Mizuguchi10, Takashi Sato11, Teruya Nakamura12, Shunsuke Kotani4, Mary Ann Suico1,9, Hirofumi Kai1,9, Mitsuharu Ueda7, Tsuyoshi Shuto1,9,13* (*責任著者)
1熊本大学大学院薬学教育部遺伝子機能応用学分野
2熊本大学次世代研究者挑戦的研究プログラム「Better Co-being社会を切り拓く異分野共創型博士イノベーター育成プログラム」
3熊本大学「健康生命科学S-HIGOプロフェッショナル養成フェローシッププログラム」
4熊本大学大学院薬学教育部機器分析学
5熊本大学大学院人文社会科学研究部
6熊本大学発生医学研究所分子細胞制御分野
7熊本大学大学院生命科学研究部脳神経内科学講座
8熊本大学大学院薬学教育部環境分子保健学分野
9熊本大学生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター
10富山大学大学院総合医薬学研究科
11熊本大学大学院薬学教育部生命分析化学分野
12熊本大学大学院薬学教育部機能分子構造解析学分野
【掲載雑誌】
iScience
【doi】
doi: 10.1016/j.isci.2025.114170
【URL】
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(25)02431-9
【詳細】 プレスリリース(PDF585KB)
![]()
お問い合わせ
熊本大学大学院生命科学研究部附属
グローバル天然物科学研究センター
大学院薬学教育部 遺伝子機能応用学研究室
担当:首藤剛 (准教授)
電話: 096-371-4407
e-mail: tshuto@gpo.kumamoto-u.ac.jp