同時多項目測定装置による新型コロナ変異ウイルスの新規検査法~ウイルスの進化に対応可能な新しい分子診断法~
【ポイント】
- 次世代同時多項目検出システムIntelliPlex※1と計算プログラムOVI(Objective Variant Identification)※2を組み合わせた新規変異ウイルス識別システム「Intelli-OVI」を開発しました。
- Intelli-OVIを使った検査によって、20種類以上の異なるSARS-CoV-2変異ウイルスを迅速かつ高精度に分類することが可能になります。
- この新世代分子診断ツールが将来のパンデミックへの備えとなり、安心安全な社会実現への貢献が期待されます。
【概要説明】
ヒトレトロウイルス学共同研究センター熊本大学キャンパスの佐藤賢文教授、東京都健康安全研究センター及び熊本保健科学大学の共同研究グループは、新しい新型コロナ変異ウイルス診断ツール「Intelli-OVI」を開発しました。
【今後の展開】
本研究の結果は、新型コロナウイルスの例を用いて、Intelli-OVIが迅速に進化するウイルスに対応できることを示しており、将来のパンデミックウイルスなど様々なウイルス感染症の診断ツールへの応用が期待されます。今後も、この新世代分子診断ツールが新たな新興再興ウイルスの出現時への備えとなり安心安全な社会実現を目指して、更なる研究開発を行います。
本研究成果は令和6年8月9日に英科学誌「Communications Medicine」に掲載されました。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)医療分野国際科学技術共同研究開発推進事業 戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)日・英国共同研究「ヒトT細胞白血病ウイルス1型:シングルセル解析によるウイルス遺伝子発現の多様性解析およびその制御機序解明研究」(JP22jm0210074)、デンカ株式会社の支援を受けて行われました。
【用語解説】
※1:IntelliPlex
PlexBio社によって開発された高感度多項目同時測定システム。
πCode法(後述)と蛍光測定技術を組み合わせることで高感度と同時多項目測定の両立を実現している。
πCode法とは、新たなラベリング方法を用いた磁性マイクロディスクに抗体やDNAプローブを固定することで検査対象の種類を特定し、同時多項目測定を可能とした技術。
デンカ株式会社が、2021年6月に、IntelliPlexを用いて当時の流行ウイルスの変異部位を検出できる検出用研究試薬を販売している。
なお、IntelliPlex、πコードはPlexBio社の日本国内商標
※2:OVI(Objective Variant Identification)
IntelliPlexで得られたデータを解析し、複数の変異株を同時に同定するための計算アルゴリズム。
【論文情報】
論文名:A micro-disc-based multiplex method for monitoring emerging SARS-CoV-2 variants using the molecular diagnostic tool Intelli-OVI
著 者:Md Belal Hossain, Yoshikazu Uchiyama, Samiul Alam Rajib, Akhinur Rahman, Mitsuyoshi Takatori, Benjy Jek Yang Tan, Kenji Sugata,
Mami Nagashima, Mamiyo Kawakami, Hitoshi Ito, Ryota Kumagai,Kenji Sadamasu, Yasuhiro Ogi, Tatsuya Kawaguchi, Tomokazu Tamura, Takasuke Fukuhara, Masahiro Ono, Kazuhisa Yoshimura & Yorifumi Satou.
掲載誌:Communications Medicine
DOI:10.1038/s43856-024-00582-z
URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39122992/
【詳細】 プレスリリース(PDF354KB)
お問い合わせ
(研究に関すること)
ヒトレトロウイルス学共同研究センター
熊本大学キャンパス
ゲノミクス・トランスクリプトミクス学分野
教授 佐藤 賢文(さとう よりふみ)
Tel:096-373-6830
E-mail:y-satou※kumamoto-u.ac.jp
研究室HP:https://kumamoto-u-jrchri.jp/satou/
(報道に関すること)
熊本大学総務部総務課広報戦略室
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