遺伝子改変ラット精子の凍結保存の効率化に成功
(ポイント)
- 凍結保存が極めて困難であったラット精子の凍結保存を効率化できる新たな技術の開発に成功した。
- 凍結精子を用いた体外受精・胚移植により、1匹の雄ラットから300匹以上の産子を作製することが可能になった。
- 精子の凍結保存技術は、医学研究への需要が増加している遺伝子改変ラットの系統維持に活用できる。
(概要説明)
熊本大学生命資源研究・支援センターの中潟直己教授・竹尾透講師らのグループは、ラット精子の効率的な凍結保存に成功しました。
ラット精子は、他の動物種の精子の2~4倍の大きさであり、pH、浸透圧、温度等の物理的変化によるダメージを受け易いため、凍結保存技術の開発が極めて困難でした。中潟教授らは、できるだけ精子に物理的刺激を与えない新たな凍結方法を考案し、凍結融解精子の運動性を損なわず、効率的に受精卵および産子を作製する技術を確立しました。
精子の凍結保存法は、受精卵の凍結保存法よりも試料の採取方法が容易であり、1匹の雄ラットから多くの細胞を得ることができます(5千万~1億匹)。近年、ゲノム編集技術を用いて、ヒトの病気の治療法の開発に有用な遺伝子改変ラットが次々と作製されており、遺伝子改変ラットの系統の効率的な保存技術が求められています。今回中潟教授らが開発した技術は、遺伝子改変ラットの効率的な保存や利用を促進し、難病に対する治療法の開発を加速させることが期待できます。
本研究成果は、令和2年1月9日付の英科学誌「Scientific Reports」電子版において公開されました。
(論文情報)
論文名:Establishment of sperm cryopreservation and in vitro fertilisation protocols for rats
著者:Naomi Nakagata, Nobuyuki Mikoda, Satohiro Nakao, Ena Nakatsukasa & Toru Takeo
掲載誌:Scientific Reports
doi:https://doi.org/10.1038/s41598-019-57090-7
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-019-57090-7
(特許出願情報)
発明の名称:ラット精子の凍結方法および該方法で保存したラット精子を用いた体外受精方法
出願番号:特願2019-231190
出願人:国立大学法人 熊本大学
発明者:中潟直己、竹尾透、三小田伸之
(詳細)
プレスリリース本文(PDF350KB)
生命資源研究・支援センター 中潟直己
電話:096-373-6564
e-mail:nakagata※kumamoto-u.ac.jp
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