RNA構造「G4」がストレス顆粒の核となる~神経変性疾患の新しい治療標的の可能性~

【ポイント】

  • RNA構造の1つである「グアニン四重鎖構造(G4)」1が細胞のストレス顆粒2の核となり、G4結合タンパク質と共にストレス顆粒の形成を制御することを明らかにしました。
  • ストレス顆粒の形成不全は神経細胞の機能低下や細胞死を引き起こすことを発見しました。
  • ストレス顆粒にG4が集積する機構を解明できれば、神経変性疾患の新しい治療法の開発につながる可能性があります。
    【概要説明】

 RNAの構造は、翻訳過程・メッセンジャーRNA(mRNA)3の分解・炎症反応など多面的な生理的機能に関与します。特にグアニンが連続した配列は、「グアニン四重鎖構造(G4)」と呼ばれる4本鎖構造を形成することがあります。ヒト細胞の約2,300種類のmRNA中にはG4が約3,800カ所形成されることが予測されています。しかし、mRNA中に存在するG4の役割は未解明でした。

 熊本大学発生医学研究所ゲノム神経学分野の塩田倫史教授、矢吹悌助教、朝光世煌研究員(現:理化学研究所研究員)らは、G4がストレスに応答して細胞に形成される「ストレス顆粒」の核となり、その形成を制御することを見出しました。また、ストレス顆粒の形成が妨げられると、神経細胞のストレス刺激による機能低下が促進されることを初めて発見しました。ストレス顆粒の形成は筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患の発症と密接に関与することが指摘されています。ストレス顆粒にG4が集積する機構を解明できれば、神経変性疾患の新しい治療法の開発につながる可能性があります。

 本研究成果は、MEXT/JSPS科研費(JP20K15417, JP20J00520 [朝光], JP21K06579 [矢吹], 22K19297, 21H00207, 20K21400, JP20H03393 [塩田])、JST戦略的創造研究推進事業ACT‐X(JPMJAX2111 [朝光])、JST創発的研究支援事業(JPMJFR2043 [塩田])、日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業(JP20ek0109425 [塩田])、アステラス病態代謝研究会[塩田]、熊本大学国際先端研究拠点および熊本大学発生医学研究所高深度オミクス事業研究助成の支援を受けて、米国科学振興協会(AAAS)が発行する科学誌「Science Advances」に令和5年2月24日午後2時(米国東部標準時)(日本時間令和5年2月25日午前4時)にオンライン掲載されました。

 

【成果・展開】

 今回の成果は、神経細胞におけるG4依存的な相分離によるストレス顆粒形成の機能的役割を明らかにしたものです。ストレス顆粒の形成は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患の発症要因と密接に関与することが指摘されています。今後、ストレス顆粒にG4が集積する機構を解明できれば、神経変性疾患の新しい治療法の開発につながる可能性があります。

 

【用語解説】

※1 グアニン四重鎖構造(G4)
DNAおよびRNAの高次構造の一種。グアニンに富む核酸配列で形成される。4つのグアニンが四量体を作った面(G-カルテット)が2面以上重なった構造体。その構造特性からG4とも呼ばれる。

※2 ストレス顆粒
ストレス刺激に応答して一過性に形成される細胞内構造体。ストレスから細胞を防御する機構として考えられている。

※3 メッセンジャーRNA(mRNA)
DNAの塩基配列を鋳型としてRNA合成酵素により合成され、合成後はリボソームと結合してタンパク質合成(翻訳)に利用される。

 
【論文情報】

  • 論文名:RNA G-quadruplex organizes stress granule assembly through DNAPTP6 in neurons
  • 著者:Sefan Asamitsu#*, Yasushi Yabuki#, Kazuya Matsuo, Moe Kawasaki,

    Yuki Hirose, Gengo Kashiwazaki, Anandhakumar Chandran, Toshikazu Bando, Dan Ohtan Wang, Hiroshi Sugiyama, Norifumi Shioda* (# Co-first authors; * Co-corresponding authors)

  • 掲載誌:Science Advances
  • DOI:10.1126/sciadv.ade2035
  • URL:https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.ade2035

【詳細】 プレスリリース(PDF426KB)

 

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熊本大学発生医学研究所
担当:教授 塩田 倫史
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