微生物に暴露されると血液がんが発症し易くなる

【ポイント] 

  • ウイルスやバクテリア産物への暴露によって造血幹細胞が変化する。
  • この変化した造血幹細胞に遺伝子変異が起きると、造血器腫瘍(骨髄異形成症候群)が発症し易くなる仕組みを明らかにした。
  • この仕組みを制御することで、高齢者の造血器腫瘍の発症予防や治療につながる。

    【概要説明】

 今回、熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)の指田吾郎特別招聘教授らのグループは、熊本大学大学院生命科学研究部、東京大学、UTヘルスサンアントニオとの共同研究で、微生物産物への暴露と遺伝子変異によって、造血幹細胞から血液がんが発症する仕組みを明らかにしました。

 感染症の罹患歴は、血液がんである骨髄異形成症候群の発症の危険因子であることが知られています。今回、マウスモデルを用いた解析によって、ウイルスやバクテリア由来の産物へ暴露された後に、健康な高齢者や血液がんの患者でよくみられる遺伝子変異を誘導すると、より早期に多くの骨髄異形成症候群が発症することが明らかになりました。また、がんが発症する仕組みとして、微生物を感知する経路が活性化することで、造血幹細胞にエピゲノム※変化が起き、そこに生じた遺伝子変異が協調して幹細胞をがん化することがわかりました。今後、この微生物由来の産物を感知する経路を制御することで、高齢者の血液がんの予防や治療につながる可能性があります。

     本研究成果は、令和5年4月18日に学術雑誌「Journal of Experimental Medicine」に掲載されました。

 ※本研究成果は、文部科学省・科学研究費助成事業、東京大学医科学研究所、一般社団法人日本血液学会、公益財団法人武田科学振興財団、一般財団法人化学及血清療法研究所の支援により得られたものです。

 

【展開】

 今後、この微生物由来の産物を感知するTRIF-PLK-ELF1の経路を制御することで、高齢者の血液がんの予防や治療につながる可能性があります。


【論文情報】

  • 論文名:Exposure to microbial products followed by loss of Tet2 promotes myelodysplastic syndrome via remodeling HSCs
  • 著者:Yokomizo-Nakano T, Hamashima A, Kubota S, Bai J, Sorin S, Sun Y, Kikuchi K, Iimori M, Morii M, Kanai A, Iwama A, Huang G, Kurotaki D, Takizawa H, Matsui H, Sashida G
  • 掲載誌:Journal of Experimental Medicine
  • DOI:10.1084/jem.20220962.

【詳細】 プレスリリース(PDF468KB)

 

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