他者の「実在感」を伝える音とは? ―他者の存在に関わる聴覚空間情報が社会的サイモン効果を誘発―

 京都大学大学院工学研究科 大谷 真 准教授、切通在菜 同修士課程学生、熊本大学大学院人文社会科学研究部 寺本 渉 教授の共同研究チームは、他者が発する動作音や物音の聴覚空間情報が、他者が「そこにいる」感覚(実在感、ソーシャル・プレゼンス)を生み出す上で大きな役割を果たすことを明らかにしました。

 実環境や遠隔会議などの仮想(VR)環境において、他者が「そこにいる」と感じるかどうかは重要な要素です。音によって他者が「そこにいる」ことを伝えるためには、他者の存在に関わる空間情報が聴覚によって知覚される必要があると考えられますが、他者の視覚的手がかりがない状況で、聴覚的に表現された他者の空間情報が他者の実在感を生じさせるのに十分な効果を持つかは不明でした。そこで、社会的サイモン効果(SSE)と呼ばれる行動学的指標を用いた心理物理実験によりその効果を検証しました。まず、実際には誰もいないにも関わらず、あたかも隣に人がいるかのような音を提示可能なVR環境を構築しました。そして、他者の存在に関わる聴覚空間情報の有無により実験参加者を2グループに分けSSEが誘発されるかを調べた結果、空間情報有りのグループにのみSSEが認められ、他者の音がどこから聞こえるかを知覚できる場合に他者が「そこにいる」感覚が得られることを行動学的に明らかにしました。この知見は、人の存在感を伝え円滑なコミュニケーションを実現するための「音」はどうあるべきかを探究するための足掛かりとなることが期待されます。

 本成果は、202244日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。


【論文情報】
論文名:Spatial auditory presentation of a partner’s presence induces the social Simon effect
(共行為者の存在の空間的聴覚表現が社会的サイモン効果を誘発)
著者: Arina Kiridoshi, Makoto Otani, Wataru Teramoto
掲載誌:Scientific Reports 
doi:https://doi.org/10.1038/s41598-022-09628-5

 
【詳細】 プレスリリース(PDF1109 KB



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