ADHD児診断の高感度予測手法の研究発表で日本臨床神経生理学会学術大会優秀演題賞を受賞

【ポイント】

  • 発達障害のうち注意欠如・多動症(ADHD)児の診断を高感度で予測することが可能な新しい評価手法を開発しました。
  • 抑制課題を遂行している際の子どもの行動および前頭前野の脳血流賦活変化のデータに機械学習アルゴリズムを用いました。
  • 臨床現場では診断補助や治療等の効果判定として、学校現場では早期発見のためのスクリーニングとして大きく貢献するものと期待されます。

【概要説明】

 熊本大学大学院人文社会科学研究部の安村明准教授らの研究グループは、ADHD児の診断を高感度に予測する手法の研究発表で、第48回日本臨床神経生理学会学術集会(2018年11月8~10日)において、優秀演題賞を受賞しました。本発表は、国立精神・神経医療研究センター、東京学芸大学、東京医科大学、山梨大学、鳥取大学、久留米大学との共同研究の成果です。

 ADHDは不注意や多動性-衝動性という行動面の症状で気づかれる発達障害(神経発達障害群)の一つです。多彩な症状を示すためにワガママな子どもと周囲から誤解されやすい一方、学校・職場などの複数の場面での困り感(困っている気持ち)が増強し日常生活活動に強い支障をきたすことが懸念されています。しかし、病気や障害の指標となる決定的なバイオマーカーが未だに発見されておらず、その診断に際しては、経験豊かな専門家による主観的な行動観察にもっぱら頼らざるを得ない現状があります。
 これまでにADHDは大脳の前頭前野を首座とする抑制機能の障害があることが多くの研究により示唆されておりました。今回発表した研究は、「逆ストループ課題」という抑制機能を調べる課題(抑制課題)を遂行している際の子どもの行動および前頭前野における脳血流の活動状態の変化のデータを基に、近年、予測分析の自動化のために実用化の期待が高まっている機械学習アルゴリズムを用いてADHD児の診断を高感度に予測することのできる手法を開発したものです。
 ADHDを含めた発達障害は、加齢とともに精神疾患などの併存障害を伴うことが多いため、早期発見と早期の介入や支援、そして医学的治療が望まれます。しかしながら、簡便な評価方法が確立しておりませんでした。本研究により確立された手法により、これまでにない簡便で客観的かつ高感度なADHD児の診断予測が可能となりました。本研究の成果は、臨床現場では診断補助や治療等の効果判定として、学校現場では早期発見のためのスクリーニングとして大きく貢献するものと期待されます。
 この研究成果は、英国の国際科学雑誌「Journal of Attention Disorders」のオンライン版で、日本時間2017年11月20日午後10時に掲載されたもので、2018年11月8~10日開催の第48回日本臨床神経生理学会学術集会で発表されました。
 本研究内容は日本国特許ならびに米国特許を取得しています。

【論文情報】

論文名:
Applied machine learning method to predict children with ADHD using prefrontal cortex activity: A multicenter study in Japan.
(和訳:前頭前野の活動を基に機械学習を適用したADHD児の診断予測:日本における多施設共同研究)
著者:
Yasumura A, Omori M, Fukuda A, Takahashi J, Yasumura Y, Nakagawa E, Koike T, Yamashita Y, Miyajima T, Koeda T, Aihara M, Tachimori H, Inagaki
掲載誌:
Journal of Attention Disorders
doi:10.1177/1087054717740632
URL:https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1087054717740632


【詳細】

  プレスリリース本文(PDF299KB)

お問い合わせ
熊本大学大学院人文社会科学研究部
担当:安村明
電話:096-342-2845
e-mail:yasumura※kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)