身体運動イメージの発達:低学年児童は体を動かさないとイメージできない-熊本大・積山教授らが発見!

熊本大学文学部認知心理学研究室では、小学生における身体運動イメージの発達過程を調べ、高学年児童は大人なみの器用さで身体運動イメージを操るのに対して、低学年児童では体を動かさずに身体運動イメージを思い浮かべることが困難であることを明らかにした。積山薫教授らが、手のイメージの回転の速さを調べる方法で研究し、脳の発達との関係を指摘している。

身体運動イメージは、スポーツ選手のイメージ・トレーニング、半身麻痺や手術後のリハビリテーションを含め、あらゆる動作をおこなう上で重要な役割を果たすと考えられている。しかし、身体運動イメージ能力を子どもがどのように獲得するのかは、よくわかっていなかった。積山教授は、手のメンタル・ローテーション課題※という方法で身体運動イメージ操作の速さを研究する手法を早くから提案しており、今回、この手法を小学生に適用して研究をおこなった。
6歳児から大学生までの参加者は、いろいろな向きで提示される手の絵を見て、右手か左手かをできるだけ正確に速く判断してスイッチを押し、その反応時間が測定された。
反応時間を分析した結果、子どもの身体運動イメージ能力の発達には3つの段階があることが明らかとなった。まず、6歳児は実際の手の運動を伴わなければこの課題を遂行できず、7~8歳児ではイメージ上で手を回転できるものの、その身体運動イメージは関節の生体力学的制約を非常に強く受けること、そして9歳以上になると大人とほぼ同様に手のイメージを比較的自由に動かせることが分かった。こうした行動レベルの発達的変化は、大脳の運動前野という部位の成熟と関係しているのではないかという。
今回の結果から、低学年児童に動作を学習させるには、見るだけでなく実際にやって覚えるように指導することが重要と考えられる。
この結果は、イギリス王立協会が発行するオープンアクセス・ジャーナルRoyal Society Open Scienceに12月10日に掲載されました。

語句説明
※メンタル・ローテーション(心的回転)
心の中に思い浮かべたイメージ(心的イメージ)を回転変換する認知的機能のこと。手や足のような身体画像の心的回転課題の場合、大人は自分の手・足のイメージを思い浮かべ、それを絵と同じ向きになるように心の中で回転させて判断すると考えられている。

詳細: プレスリリース本文 (PDF 1.0MB)

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熊本大学 文学部総合人間学科
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