狩猟肉がもたらすもの!

【概要】
 熊本大学文学部シンジルト教授は、熊本県球磨郡における現地調査により、熊本の狩猟肉の生成と役割を解明し、2018年3月31日『狩猟肉の民族誌:肉をつくる、肉がつなぐ、肉がつくる』(総ページ数:176+ⅱ)を刊行しました。

【説明】
 シンジルト教授は社会人類学を専門にし、アジア社会における人間と動物の関係について研究を進めています。本著は、熊本大学文学部3年生たちが、熊本県南東部、宮崎県との県境に位置する球磨郡多良木町、湯前町、水上村における現地調査で得られたデータを基に、野生動物はいかに肉へと変わり、その肉はいかなる人間関係や内面世界を作り出すのかを明らかにしたものです。ここには全国で初めて野生鳥獣肉(狩猟肉)を取り扱った村上精肉店があり、近年も野生鳥獣肉の解体処理場を新たに建築するなど、古くより狩猟を行い続けている地域です。本著は「肉をつくる:狩猟、解体、精肉」、「肉がつなぐ:仲間、親族、地域内外」、「肉がつくる:意味、躊躇、感謝、味覚」の三部から構成され、現代日本における狩猟肉の生成とその役割を浮き彫りにしました。

 今回インタビューや狩猟への同行調査に参加した13名の学生達は、多くの現代人と同じく狩猟経験はもとより動物一般とほとんど接点がありませんでした。彼らは現地調査を通じて、仕留め・さばきといった肉をつくる行為がいかにして日常的なものになりうるかを知り、「特別な人間がする残酷な行為」という固定観念を排することができました。また、狩猟肉が諸々の関係を結んでいるという現場の事実から、肉は単なる「もの」に過ぎないのだという認識の浅さに気づいたことを本著の中で報告しています。さらには、特定の物事の意味付け、ある行為に対する躊躇い、外部に対する謝意、味覚の在り方などの猟師の内面世界というものも、狩猟肉の存在によって大きく規定されていることを考察することができました。
 
 本著は非売品ですが、配布を希望される方、説明を希望される方は下記お問い合わせ先までご連絡ください。

【詳細】
  プレスリリース本文(PDF370KB)

お問い合わせ
熊本大学文学部総合人間学科
担当:教授 シンジルト
電話:096-342-2470
e-mail:shinjilt※kumamoto-u.ac.jp
(※を@に置き換えてください)