平野順也研究室(文学部)

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Lab’s data【平野研究室データ】

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【大学院人文社会科学研究部(文学系)】

修論・卒論テーマ
・謝罪のメカニズム:「神」と禁忌の不在を中心に
・再訪・英語帝国主義
・正義の語り方
・対立と対話について
・芸術家の限界:ドビュシー『アッシャー家の崩壊』を中心に
・加害と被害の平和教育
・『ピーナッツ』に記された米国の闇
・英雄の旅と錬金術:『ハリーポッター』分析
メンバー
修士課程大学院生1人、学部4年生7人、3年生5人

言葉の持つ絶大な影響力が見えた時、自己探求への道も深まる学問・レトリック

文化を生成する「言葉」 その悪用に対する知恵を蓄える

 平野順也准教授の専門分野は、コミュニケーション学。その中でも、修辞学と訳されるレトリックを研究しています。「文学を読み、作者の意図を探るのが文学であるとするならば、レトリックは、スピーチなどをテーマに、話者の動機や目的を探る学問です。たとえばアメリカ大統領のスピーチが、州によってどのようにメッセージが変わり、どのように人を説得するのか、というようなことを分析します」と平野准教授。

 この研究の歴史をひもとくと、プロパガンダの分析が欧米を中心に盛んになった経緯があります。「もちろん、言葉は私たちを幸せにしてくれます。小説に感動し、知識を身につけ、親友と語りあうことができるのも、言葉のおかげです。しかし、第二次世界大戦では、言葉の悪用によって未曽有の惨劇が引き起こされました。私たちが日常で使っている言葉というものが、いかにおそろしいかを叩きつけられた出来事です」。学生時代、言葉の力が不幸を生むという事実が心に残り、言葉の影響力について考えるコミュニケーション学の意義に感銘を受けた平野准教授は、この道に進むことを決意。「レトリックという研究の目的は、話者の、言葉を悪用する策を止めること。成功と思われるスピーチや議論の粗い部分を抽出し、なぜ人々がそこに気づかなかったのかを分析します。言葉の悪用に対する知恵を蓄える、といったところでしょうか」。

言葉を受け取る側の分析も。多様な研究テーマに挑む

 たとえば、今の政治家のスピーチを分析すると、「仮想であれ現実であれ、敵が明確に形成されている」と平野准教授。学生たちは、そんなスピーチそのものの分析はもちろん、スピーチを受け取る社会の土壌にも目を向け、なぜそこに勧善懲悪が必要なのかを研究テーマにする人も。そのほかにも、ディズニーの物語における悪と正義の描かれ方と、現在の政治家の類似性を探る研究、テロリストと交渉をしない姿勢をとる国の政策の背景や、その効果や問題を社会的メカニズムとともに分析する研究など、取り組むテーマは多様です。

 この研究のおもしろさについては、「単純に、他人の批判ができます(笑)」とジョークを交えつつ、「とは言いながらも、たとえば、大統領のツイッターを、なぜ私たちは喜々として受け入れるのか。それを突き詰めると、私たちがなぜそれに興味を持つのか、何が好きで何を憎んでいるのかという、自分自身の人間性を理解するきっかけになります」。文学部は将来の可能性の幅が広いがために、目的が定まらない学生も多いと平野准教授。「今やりたいことがあるのか、あるならば、それは自分が本当にやりたいことなのか。将来の夢は何か。大切なものは何か。文学部では、それらは誰かに影響されて信じているだけなのか、一度かみしめて考えてみることができます」。

Interview

     

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文学部コミュニケーション情報学科4年
河津 奈那さん(左)

 3年次の課題研究では、研究計画書を学科のすべての先生方に見せます。その時、自分がやりたいことと平野研究室の研究内容が一致していると思って平野研究室を選びました。現在取り組んでいる卒論テーマは現代のナルシシズム。教育現場では個性を大事にしなさいとよく子どもたちにいいますが、そもそも個性とは何かがわからないまま成長するので、個性を履き違え、逆に個性がなくなっているのではないか、ということを研究しています。人生をより良く生きるためにどうすればいいかを学べるのが文学部。どんな生き方をすれば自分なりに歩いていけるかを見つけられる学部だと思います。

文学部コミュニケーション情報学科4年
蔵座 美菜子さん(右)

 平野研究室に入ったのは、留学を考えていた時に、平野准教授に英語の指導をして頂いたことがきっかけです。その後オーストラリアに1年間留学しました。卒論は、世界で頻発するテロ行為に対する解決策を投げかけることがテーマ。テロ対策であるノンネゴシエーションが果たして正しいのか、疑問に感じたことで選びました。卒業後は英語を使う企業に就職が決まっています。卒論も英語で書いていて、これからも、もっと英語力を伸ばしていきたいと思っています。

密着!平野研究室

ゼミでは毎年海外研修を行い、多文化や歴史を現地で学びます。

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マカオの研修での1コマ

71_5.jpg 韓国でユニセフ国際会議に参加

(熊大通信71号 (2019 Spring) 4月発行)

お問い合わせ

総務課 広報戦略室

096-342-3269