竹屋元裕研究室(大学院生命科学研究部医学系)

研究室探訪
研究マインドを忘れない 医療人たれ!

竹屋元裕研究室
【大学院生命科学研究部】細胞病理学分野

Lab’s data【竹屋研究室データ】

  • 竹屋元裕教授 研究テーマ
    1. ヒト悪性腫瘍(がん)におけるマクロファージの分化・活性化に関する研究
    2. マクロファージを制御する化合物の探索とがん治療への応用
    3. マウス各種病態モデルにおけるマクロファージの分化・活性化に関する研究
    4. 生検・外科切除標本、病理解剖症例を用いた外科病理学的症例解析
  • メンバー
    竹屋元裕教授、菰原義弘講師、藤原章雄助教、大西紘二助教、学術研究員1人、大学院生6人、技術専門職員1人、検査技師3人、秘書1人
  • OB・OGの進路
    国立大学医学部教員、国公立病院病理医、医学部附属病院臨床系医師、国公私立病院医師など

研究マインドを忘れない医療人たれ!

がんや心筋梗塞、ウイルス感染などが、どうして起こるのか?どんな病態を示すのか?病気の原因・成り立ちを解明することにより、その治療と予防に貢献するのが病理学です。竹屋元裕研究室では、生体に侵入した異物や死細胞を食べて処理するマクロファージという細胞の研究を主に行っています。マクロファージは、異物を取り込むだけでなく、種々の生理活性物質を分泌することによって、免疫を活性化し、がんや心筋梗塞などの病気と闘う機能を持つといわれています。
しかし、マクロファージの中には、「腫瘍関連マクロファージ(TAM)」などのように、最初はがん細胞を攻撃するために組織に入ってきても、結果的にはがんの増殖を助けたり、動脈の壁に脂肪を沈着させ、動脈硬化を促したりするものもあり、その働きは多様で複雑なものです。
「本学医学部は、炎症や免疫機能に関する研究に長い歴史があり、高い評価を得ています。遺伝子改変マウスや、臨床の組織標本を用いて、さまざまな機能を解明していきたい」と竹屋教授。

竹屋研究室のモットーは、“研究室の融和”。毎週金曜朝9時から行われる「研究報告会」では、教員、大学院生、技師たちが、それぞれの立場で活発な意見交換を重ねています。「学生たちはそれぞれ違ったテーマで研究をしていますが、お互いの研究に興味を持ち、進んでアドバイスや手助けをする雰囲気が出来上がっています。それが個人の進歩につながり、ひいては研究室全体が発展していくことになるのです」。学生たちに竹屋教授が望むのは、「研究マインドを忘れない医療人たれ!」ということ。「“なぜ”という気持ちが大事。病理学に携わったからには、対症療法ではなく、病気の本質を見極めて治療に取り組む医療人になってほしい」と語ります。

Interview:

マクロファージの働きを解明し効果的ながん治療につなげたい

大学院医学教育部 博士課程医学専攻2年 西東 洋一さん 大学院医学教育部
博士課程医学専攻2年 西東 洋一さん

マクロファージには腫瘍(がん)に対抗する働きをするものと、腫瘍の成長を手助けするものとがいるのですが、私は、リンパ節の中にいる、腫瘍に対抗する側のマクロファージを主に研究しています。マクロファージの仕組みを明らかにできれば、腫瘍の周囲にいる正常な細胞たちをがん治療に参加させることができ、腫瘍を直接たたく治療法と連携させることによって、より効果的ながん治療へとつながるのです。
竹屋研究室の良いところは、研究の出発点を定めた後は、自分が「やりたい!」と思った方向へ進めさせてくれるところです。自ら方法を提案し、決定していくため、大変勉強 になります。今は研究が楽しいので、できるだけ長く続けたいと思っていますが、将来臨床に携わることになった時も、病の本質を探求した知識と経験は大いに役立つと思っています。

密着!竹屋研究室

「病の本質を知りたい!」という探究心に溢れ、研究のみならず臨床の病理診断も行う竹屋研究室におじゃましました。

  • 9:00
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    毎週金曜に開催される「研究報告会(医局会)」。研究報告や学会発表の予行など、2時間ほど議論が続くことも。
  • 10:30
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    マウスやヒトの組織をパラフィンで固め「パラフィンブロック」を作る。これを薄くスライス・染色し、顕微鏡で診断。
  • 14:00
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    37度で細胞を培養。細菌などが入ると細胞が死んでしまうため、クリーンベンチで慎重に取り扱う。

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    腎がんの免疫染色写真。がん細胞の間に多数のマクロファージ(茶色)が存在し、がん細胞の増殖を助けている。

(熊大通信50号(2013 autumn)10月1日発行)

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