植物多様性学研究グループ(理学部・大学院自然科学研究科)

研究室探訪
フィールドワークと科学研究で“植物の種”の謎を解き明かす
高宮正之教授(中央)、副島顕子教授(中央左)、藤井紀行准教授(中央右)をはじめ、
大学院生9名、理学部4年生5名計17名グループ

植物多様性学研究グループ
【理学部】理学科 生物環境プログラム
【大学院自然科学研究科】理学専攻 生命科学講座

気候や地質などの環境に順応しながら進化を遂げてきた植物。
その生態や分化、地域分布などを研究しているのが「植物多様性学研究グループ」です。
シダ植物、被子植物、高山植物と研究対象の異なる3つの研究室が互いに学び、刺激し合う、舌気にあふれる教室を訪ねました。

フィールドワークと科学研究で“植物の種”の謎を解き明かす

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採集した植物を標本にして、日時や場所によって細かく整理。これも「種」を見分けるための大切な判断材料の一つ

「植物多様性学研究グループ」の研究は、まずフィールドワークから始まります。おのおのが月に数回、植物採集や観察に野山へ出掛けてサンプルを持ち帰り、標本を作り、細胞を調べるなど、地道な作業を積み上げていく学生たち。スミレの研究をしている諌本泰明さん(理学部4年生)は、「屋内での研究だけでなく、フィールドワークに出掛けて草花に触れることも楽しい」と話します。
また、3つの研究室から成り立っているこのグループでは、週に一度、共同でゼミを行い意見交換を行っています。お互いの研究対象や解析方法を知ることで、多様な植物の実体について知識を深めているのです。

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実験室では、それぞれが目的に応じた手段で研究を進めている

地球上の生物は、その形態や成分、生態的特徴が似たもの同士で分けられ、体系付けられています。そのうち「種」は生物分類上の基本的な単位です。ここでは、「種」の判別を行うため、植物の遺伝子を単離してその構造を決定する、分子遺伝学の技術を用いています。
今年、阿蘇郡小国町で採集したメシダ類を調べたところ、新種のものだと分かり、「キタサトイヌワラビ」と命名されました。過去には、このグループが発見したことで、絶滅危恨種としてレッドデータブックに掲載されたものもあるのだとか。

「同じ植物に見えても、詳しく調べてみると、全く新しい遺伝子構造を持つ貴重な『種』だった、ということもありました。身近な植物でも、分かっているようで分かっていないことが多いんですよ」と語る高宮教授。身近にあるからこそ、知らないうちに伐採や採集が行われ、絶滅してしまう可能性もあるといいます。

彼らの目標は、多くの「種」を発見すること。そして、環境に適応するためにそれぞれがどのような進化を遂げてきたのかを、系統立てて整理・分析することです。
植物を科学的な視点から追究する「植物多様性学研究グループ」。これからも、まだ誰も知らなかった“種の謎”を解き明かしていくことでしょう。

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シダ植物の胞子から前葉体を発芽させ、人工的に異種間の掛け合わせ実験を行っている 阿蘇の野山は貴重な植物の宝庫。絶減危恨種も数多い

(熊大通信38号(2010 AUTUMN)10月1日発行)

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