尾上哲治研究室(大学院自然科学研究科)

研究室探訪
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尾上哲治研究室
【大学院自然科学研究科 地球環境科学講座】

Lab’s data【尾上哲治研究室データ】

  • 研究テーマ
    ・地球と生命の歴史
  • 修論・卒論テーマ
    ・巨大隕石の衝突と生物の絶滅
    ・過去の地球の降ってきた宇宙塵の研究
    ・過去の海洋環境の時代変遷に関する研究
    ・プランクトンの化石から探る生命進化
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大分県津久見市から採取した約2億年前の「チャート」という岩石
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    尾上哲治准教授、学部4年生2人、修士2人、博士1人
  • OB・OGの進路
    石油関連企業、地質コンサルタント、教員、研究者など

地層は、地球の記憶の宝庫
タフな研究生活を支える壮大なロマン

~恐竜時代の始まりにも隕石衝突で大量絶滅があった!~
地球の45億年の歴史の中で起こる、生物の大量絶滅。「絶滅がなぜ起こったのか、絶滅後に生物はどう進化したのか。
地層を見ることでこれまでの地球の自然環境の変化と生物の進化を探る研究をしています」。こう話すのは、尾上哲治准教授です。
「恐竜の絶滅の原因は巨大隕石の衝突と言われています。隕石がぶつかると、隕石の塵や、ぶつかった場所の岩石の破片が地球上に飛び散り、火山灰のように降ってきます。それが層になったわずか2ミリほどの場所を探し当て、調べます」。尾上研究室が扱う化石は、基本的には海中のプランクトンなどの微化石。「地層の上下の化石が全然違うと大量絶滅があったことがわかるし、地層を化学分析して得られる当時の海水の情報から、衝突後の温暖化や寒冷化など環境変化もわかります」。
実は恐竜時代の始まりの時にも大きな隕石が衝突しています。尾上研究室は岐阜県と大分県の地層調査から、世界で初めて衝突の痕跡を明らかにし、2013年に英科学誌に発表しました。「もし恐竜時代前の大量絶滅がなかったら、当時地球上に君臨していた爬虫類と哺乳類を合わせたような生物がもっと進化して、今の人類の君臨はなかったかも」と尾上准教授。壮大なロマンを感じます。

~誰もやってなかったことをやり、誰も知らないことを知る~
フィールドは海外にもおよびます。衛生環境の悪い中で寝起きし、ジャングルを一日10kmも歩くことも。「熊大生は馬力があります」。
人が入らない、登山レベルを超えた所にも出かけるそうです。「地層を見ても最初はどうすればいいかわからない。でも慣れてくると、地層の厚さを計り、鉱物を調べ、化石の識別もできるようになる。成長を感じるし、ウンチクを語れるようになれば、なかなかのやつになったな、と」。
流行に乗る研究で論文を書くこともできますが、「誰もやってなかったことをやり、誰も知らないことを探す、そんな姿勢を大切にしています」。現在卒業論文に取り組む学生は、宇宙から降ってくる宇宙塵の研究を行っています。「降ってくるのは、一年間に、1平方メートル当たり一粒。その研究が何になるのかと言われるかもしれませんが、もしかしたら2億年前に恐竜が見た流れ星のかけらを手にするわけです。おもしろい研究だと思います」。
今後は地球の地層から、昔の太陽系の出来事を知る研究にも力を入れていくそうです。

Interview

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理学部理学科4年
三浦 光隆さん(左)
大学院自然科学研究科
博士前期課程理学専攻1年
冨松 由希さん(中央)
大学院自然科学研究科
博士後期課程理学専攻2年
山下 大輔さん(右)
宇宙塵の研究をしていて、誰もやっていないことをやれることにロマンを感じます。先輩たちの情熱や意欲はすごくて、サンプリングも考えられないくらいの量を集めてきます。そんな先輩に見捨てられないように、がんばっています。
大分県の津久見から、故郷の佐伯にかけて、マンガンを含んだ鉱山を調査しています。地層を見て、昔の地球規模のイベントを知ることに醍醐味を感じます。今は国内だけなので、いずれ海外と関連付けて研究を広げていきたいです。 地層から過去の地球の磁場を知る研究に取り組んでいます。 昔の地球の出来事や、化石が時代ご
とにどう変わっ ていくかを調べています。尾上研究室は先生や先輩・後輩の仲が良く、気楽な雰囲気が魅力。みんながんばり屋なのが刺激になります。

密着!尾上研究室

日々の実験やミーティングのほか、学生生活の思い出づくりも満載の研究室の毎日をご紹介。

  • 2014.11
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    アメリカデスバレー国立公園にて。修士2年の曽田君は、夜は極寒となるデスバレーでキャンプ生活を送り、さまざまな時代の地層を見て回りました。
  • 2015.4
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    大分県津久見市の山中。ヘルメットにハンマー、フル装備で沢を登っていき地質調査をします。行く手を阻む滝の前で記念撮影。
  • 2015.7
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    イタリアシチリア島の海岸には白色の地層がみられます。4年生の倉成君にとって初の海外調査。彼を待ち受けていたのは暑さとの戦いでした。
  • 2015.8
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    オーストラリア北西部のピルバラとよばれる地域には、30億年を超える真っ赤な地層があります。生命の起源を探るべく地質調査を行いました。


(熊大通信59号(2016WINTER)1月1日発行)

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