“ものづくり”ד異文化交流”の熱い夏

WEBマガジン熊大なう。

「日韓合同デザインキャンプ2012」熊本大学工学部

日韓学生チームで作品づくり

熊本大学大渕教授×東亜大学カン・ジュンホ教授 言葉も文化も違う海外の学生とチームを組み、ものづくりに挑む「日韓合同デザインキャンプ2012」が、8月9日(木)~8月18日(土)熊本大学工学部で行われました。2010年から始まり3回目の今年は韓国・釜山(プサン)の東亜大学の学生32名と、熊大工学部の学生32名が参加。熊大生4名と東亜大生4名で一つのグループとなり、計8グループで作品の優劣を競います。
今年のテーマは「緊急時の便利グッズ」。災害に直面した人のことを考えて、「こんな道具があれば便利」と思わせる発想力と実際に使って役立つ機能性が求められます。学生自身でアイデアを出し合い、設計から製作、発表会までのすべてを自分たちでやるため、5月下旬からインターネット電話やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイトを通じて話し合い、準備を進めてきました。

言葉の壁にとまどい、技術の壁に試行錯誤

学生紹介 製作ではさまざまな困難に直面します。まずは言葉の壁。お互いの国の言葉が話せないので、会話は英語が中心です。設計や製作では専門用語も必要になるため、英語が苦手な学生は身振り手振りで伝えたり、絵を描いたり、とまどいながらもあらゆる手段を使ってコミュニケーションを取ろうと試行錯誤です。
最初は遠慮がちだった双方の学生は、毎日協同作業を行い、夜も一緒に食事を取るなどして交流を深めていきます。東亜大学工学部機械工学科4年のキム・ソンジュンさんは「同じ学生同士、考え方や感性は自分たちと変わらないと気づきました。お互い同じ目標に向かって進んでいけば、言葉が違っても言いたいことは自然と伝わるようになります」とすっかり打ち解けた様子です。
言葉の壁を乗り越えても、今度は製作の上で問題にぶつかります。汚水を飲用水に浄化する浄水器を製作している建築学科2年・持留(もちどめ)将志さんは「理論上は正しいはずなのに、試作品で狙い通りの結果が出ないのは、理論に製作技術が追いついていないからだと分かりました。設計を根本から見直しです」。製作日も残り1日ほど。発表も間近に控えています。同じグループの数理工学科2年・平田成美さんは「徹夜で造り直して、発表会の直前ギリギリまで機能を高めます」。
ものくり工房 たき火や太陽光などさまざまな熱源を動力に変換する「スターリングエンジン」を応用した発電装置を製作しているのはマテリアル工学科2年・上村宗二郎さんのグループです。こちらも「形はできているけど、機密性を保持したり、冷却装置の調整が難しい」と苦心。チームメンバー全員で、解決のアイデアを探します。

形あるものを作り上げ、大きくなった学生たち

谷口学長も発表会に登場 そしていよいよ発表会。工学部2号館1階のエントランスホールに、8グループが完成作品を展示します。日韓の先生が各グループの作品について尋ねると、学生たちはデモンストレーションを交えて、工夫した点や長所をアピール。学生はやや緊張した面持ちですが、先生たちが納得してうなずくと、ほっと安堵の笑顔がこぼれます。

最優秀賞に選ばれたマテリアル工学科2年・片橋匠さんのグループは、発電・充電機能とLEDが付いたペンを作成しました。「発電装置やUSBコネクタなどを小さなペンの内部に組み込むために、改良を繰り返しました」と説明する顔つきには、自信も表れています。

最優秀賞作品紹介 工学部附属革新ものづくり教育センターの大渕慶史准教授は、「海外の学生を、学生自身がホストとして責任感を持って受け入れる。その経験の中で、 異文化交流に伴うさまざまな課題を自分たちで解決する力が身に付きます。グローバル化が進んだ現在のものづくりの現場では、一つの大学や一つの企業という 枠に閉じこもるのではなく、海外とも積極的に連携できる能力が不可欠ですから」と日韓合同デザインキャンプの意義を語ります。
参加した学生からは「これまでの人生で一番密度が濃い日々だった」「毎日、自分が成長しているのを実感できた」という感想も寄せられました。
ものづくりを通して異文化交流を体験し、一回り成長した日韓の学生たち。真夏の盛りの10日間に、忘れられない思い出を胸に刻みました。

最優秀賞作品紹介

(2012年8月29日掲載)













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