赤井一郎研究室(衝撃・極限環境研究センター)

研究室探訪
光を使って物質の可能性を探り、未来を拓く研究を
「世界を引っ張る研究をしたい」語る研究室の皆さん。
赤井教授を筆頭に10人の学生が日夜研究にいそしんでいる。

赤井一郎研究室
【衝撃・極限環境教育センター】極低温光物性研究室

極低温や超短縮時間などの環境を利用して、新現魚や新しい機能性材料を探す研究を行う衝撃・極限環研究センター。
その中にある赤井一郎教授の研究室では、 フェムト秒レーザー ※1 を用いて、極低温(−270度)状態で物質内に起こる現象や、光への反応性を探ることで新たな半導体材料開発のための基礎研究を進めています。

光を効率的にエネルギーに変える物質を採求

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フェムト秒レーザー光を反射するミラー(右)とフェムト秒レーザーの心臓部のチタンサファイア結晶

フェムト秒レーザーを使って物質内に起こる現象を調べることで、光を効率的にエネルギーに変換する物質や材料の基礎研究に取り組む赤井一郎研究室の皆さん。「僕たちが未来を切り開いているんだという思いで、日々研究に取り組んでいます。将来的には、太陽電池などに応用できる材料を見つけたいですね」と夢を語ります。また、半導体中の ボーズ凝縮 ※2 についても研究を進める同研究室。実現されれば、コンピューティングの新しい基本原理として用いることができる世界的に注目を集める研究です。

新機材導入で飛躍的進歩に期待

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念願のヘリウムと窒素の液化機が導入され、黒髪南キャンパスの同センター横に巨大なタワーが登場した

実験は、−270度という極低温下でフェムト秒レーザーをさまざまな物質に当て、内部で起こる変化を調べていきます。博士前期課程1年の岩崎友哉さんは、「実験装置などの設計から組み上げまですべて研究室で行っています。実験の95%は準備などの地道な作業。でも残りの5%にゾクゾクするようなことが待ち構えているんですよ」と語ります。
昨年、極低温状態を実現するためのヘリウムと窒素の液化機を本学で道入。「これまで熊大の研究者たちの悲願だった液化機を導入したことで、研究が飛躍的に進む環境が整いました」と、赤井教授はその喜びを語ります。

学生よ、プライドを持て

現在「ソフトマテリアルのコヒーレントフォノン」「フェムト秒時間領域の過渡分光」「半導体材料における巨視的量子状態の実現」「半導体量子構造中の高密度異常伝播」「光捕集性デンドリマーの高効率光エネルギー変換過程」という5つのテーマについて研究を進める研究室の皆さん。
赤井教授は「学生に求めるのは、自主性とプロ意識。世界中で私たちだけがこの研究をやっているんだというプライドを持って取り組んでほしい」と学生たちに工ールを送ります。

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研究テーマの一つ「半導体量子構造中の高密度異常伝播」に関する実験詰果。新しい原理によるコンピューティングのためには、巨視的量子状態の実現に合わせて、その伝送が必要不可欠で、その可能性を探り続けている

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赤井研究窒では、デンドリマーという木の枝のように分岐した構造の樹状高分子の光捕集に着目。フェムト秒レーザーを用いた実験に備え、調整にも熱が入る

※1 フェムト秒
時間の単位で、1000兆分の1秒のこと。フェムト秒レーザーとは、数フェムト秒から数百フェムト秒の問だけ発光することのできる光レーザーを指し、半導体の基板に微細な穴を空けることが可能であることから、半導体体工学の進展に期持されている。
※2 ボーズ凝縮
超低温下では粒子が集団となって一つの大きな液のように振る舞う凝縮状態を形成すること。半導体内のボーズ凝縮を証明できれば、量子コンピュータへの応用が可能になる。

(熊大通信43号(2012 WINTER)1月1日発行)

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