城本啓介研究室(工学部)
数学で、新しい時代を切り拓く
今、社会で求められる数学と工学の「翻訳者」を育成しています
私たちの研究の一つは、数理構造を用いた符号理論。文字や画像が0と1に変換されて伝達される時に、ノイズなどによって起こる誤変換を訂正するための数学的理論です。今後の情報化社会で必要とされる高速かつ大容量の通信において、誤変換を修正し、コストを下げるための新しい仕組みを研究しています。
また、この数理工学の分野は、ビッグデータに含まれる個人情報を、暗号化したうえでAIの深層学習やデータの解析に活用するための、秘匿計算の技術にも関わります。現在、日本では産業における課題と数学を結びつけるための「翻訳者」が求められており、その人材を育成しているのが数理工学教育プログラムです。本を読むにしても、一行一行を読み解き、「正しいのか」を自分で検証して理解することで養われる数学力は、どんな道に進んでも必要になるはずです。
学生が見た!城本研究室3つの特徴
1.研究テーマ
建築に三角関数、ロボットに行列が使われているように、数学は工学技術の基礎となっています。数学をより深く学び、情報分野への新たな応用につなげる研究を行っています。
2.先生
厳しくて、優しい先生。何でも相談できます!
3.学生主導の自主ゼミ
研究室メンバーは趣味も数学。みんなと共有したいことを、 学生が先生になって行う自主ゼミで発表しあっています。
Lab’s data
- 卒論・修論テーマ
整数剰余環上の符号を用いた秘密分散共有法
秘匿計算の構成及び処理速度に関する研究
機械学習は数学に有効か? ~連立方程式の考察~
線形符号を用いた耐量子計算機暗号について
単一誤り訂正符号を利用した数当てゲームの制作
ブロックチェーンにおける暗号システムについて
マトロイドの公理の同値性について
シュタイナー木問題に対する近似アルゴリズム
量子ジャンプ誤り訂正符号の存在について など - 就職先
研究員、高校教員(鹿児島県、神奈川県、佐賀県)東レ株式会社、SCSK株式会社、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社、三菱UFJインフォメ―ションテクノロジー株式会社、日本アルゴリズム株式会社 ほか - メンバー
教授1名、特別研究員1名、博士前期課程2年生2名、博士前期課程1年生2名、学部4年生2名
Interview
博士前期課程 2年今村 浩二さん
—どんな研究を?
私は、マトロイド理論と符号理論をテマに研究しています。インターネット上で毎週のように行われている、「プログラミングコンテスト」にも参加。チームで参加する時は積極的にコミュニケーションを取らないと問題が解けませんが、一人ひとり得意分野があり、一人では思いつかなかったことが、みんなでやると分かる。そんなところに面白さを感じています。今後は博士後期課程に進学予定。学会への参加や、論文をたくさん書くことが目標です。
博士前期課程1年 迫田 拓弥さん
—なぜこの学科に?
鹿児島高専から学部3年生の時に熊本大学に編入。工学も数学も好きで、この学科を選びました。私たちの周りにある、日々使っている技術を数理的な面から考えられることがすごく楽しいと思います。工学では技術を実用化することが大事ですが、その技術を数学的、理論的に理解できると別の応用にもつながり、自分の成長につながります。難しく大変ですが、それが数理工学の面白さだと思います。
日本学術振興会特別研究員 佐竹 翔平さん
日本学術振興会の特別研究員として城本研究室に所属しています。研究分野は組合せ論とグラフ理論。画像処理等の応用研究も行っており、工学の分野で得られる課題が新しく面白い問題として数学に返ってくる、それに取り組むことが数理工学の醍醐味だと感じています。新しいものを見つけ、自分の中では何の制約も受けずに何ができるのか考える、そんな、数学の自由な世界が好きで研究を続けています。
密着!城本研究室
2019年12月にシドニーで開催された国際会議に参加
(熊大通信79号 (2021Winter)1月発行)