橋新剛研究室(工学部)

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Lab’s data【橋新研究室データ】

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【大学院先端科学研究部(工学系)】

修論・卒論テーマ
<学内外共同研究>
・酸化物半導体PN接合界面の構築と好感度ガスセンシング設計
・陽極酸化による酸化物半導体のナノ構造制御と室温応答型センサの開発
・ゼオライト厚膜センサによるCO2検知
<企業との共同研究>
・二次イオン質量分析による発電素子用Fe系合金層の熱処理条件の最適化
・イメージセンサー用Siウェーハの界面準位密度測定による不純物汚染度の推定
・酸化物半導体マイクロセンサによる火山性ガス検知
メンバー
工学部材料・応用化学科4年 3人、大学院自然科学教育部博士前期課程1年 4人

「人を幸せにするのがエンジニアリング」世界最高感度のセンサーを研究・開発

火山口から離れた住宅地で超低濃度のガスを検出可能

 橋新研究室の研究分野は無機材料、電子材料をベースとした材料構造制御科学。「コンセプトは、ナノ材料をつくり、半導体プロセスに活かして機能性デバイスをつくり、社会貢献することです」と、橋新剛准教授は話します。
 現在取り組んでいるメインの研究は火山ガス検知による防災システムの構築。火山ガス検知器はこれまでにもありましたが、橋新研究室で開発している検知器は、はるかに低い濃度を検知することが可能です。「空気中の硫化水素が座る椅子が、従来のセンサーよりたくさんあると考えてください。たくさんの硫化水素に対し反応できるので、よりはっきりとガスの有無を感知できます。さらに、ガスがより多く通る道をつくって、低い濃度でも検知できるようにしました」。極低濃度のガスを検知できれば、火山口から遠い住宅地でもガスを把握でき、そこから火山口での濃度を測ることで早めの避難計画ができます。「GPSで山の起伏を見る方法や、電磁波を計って火山噴火を予測する方法と併用することで、信頼度が高まります」。橋新准教授はこの研究で、「熊本県次世代ベンチャー創出支援コンソーシアム」が開催する「第3回熊本テックグランプリ」に出場。そこで出会った複数の企業との共同研究を計画中です。

産学共同研究が学びの場 チャレンジしたい学生大歓迎

 熊本大学赴任前は、人の社会に悪影響を及ぼす産業廃棄物のリユースについて研究していた橋新准教授。龍谷大学勤務時に、アルミニウムを溶解する時に生成されるアルミドロスについて研究。アンモニア発生源となりリユースができないアルミドロスから耐火物を合成する方法を見出し、特許を取得しました。立命館大学勤務時に東日本大震災、熊本大学赴任後に熊本地震を経験。「熊本地震は火山性の地震ではありませんが、余震が多く、人的被害や経済損失は大きかった。災害時にも人命確保ができる、安心安全な社会を構築できれば、と思いこの研究に着手しました」。今後は火山噴火予知研究に、火山学以外の他分野からの研究者の参入も重要だと話します。

 ガスセンサーの研究は将来、たとえば人間が発するわずかなガスを計ることで病気予防につなげる医療応用なども考えられます。「世界最高度のセンサーをつくることができるのが、この研究の醍醐味です。産学共同の場で、積極的にアイディアを出してくれる学生に来てほしいですね」。橋新研究室のモットーは、「つくる、見る、組み立てる、活かす」。学理を追究するサイエンスに対し、社会に役立て人を幸せにするのがエンジニアリングだと橋新准教授。「学生たちには、社会に出て、社会の要請に応えることができる技術者・研究者になってほしいと思います」。

Interview

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大学院自然科学教育部博士前期課程1年 勇 祐希さん(左)

 この学科は金属系を扱う研究室が多いのですが、私は非鉄系に興味があり、橋新研究室を選びました。人数は少ないですが、研究室の仲間はなんでも話し合えるチームメートのような存在です。現在は、橋新先生のメインテーマである火山ガスセンサーに直接かかわる材料を研究。昨年学会に出た時は、先輩の研究結果を発表したようなものだったので、今年の冬の同じ学会では、自分の研究成果を発表できるようにとがんばっています。工学におけるマテリアルの分野は今の日本の工業の土台を作ってきました。興味がある人はぜひ熊本大学工学部についてリサーチしてみてください。

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工学部 材料・応用化学科4年 佐藤 翔太さん(右)

 非鉄をやりたかったことと、4年生でまったく違うことに取り組んでみたくて、未経験の分野だった橋新研究室に入りました。現在取り組んでいるのは、金属を密着させて性質を変えていくメッキに関する研究。学部卒業後は大学院に進学することが決まっていて、さらに研究を深めたいと考えています。橋新研究室は、研究室の外で集まりワイワイと過ごすことも多く、そんな交流のお陰で、研究室内でもみんなと気軽に話ができることがありがたいです。

密着!橋新研究室

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大型の装置が多い実験室。大型の二次イオン質量分析装置もその一つ

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極小の模様を印刷できるプリンターなどが並ぶ部屋も。企業などとの共同活用も構想中

(熊大通信70号 (2018 Autumn) 10月発行)

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総務課 広報戦略室

096-342-3269