伊原博隆研究室(大学院自然科学研究科物質生命化学専攻)

64-0.jpg

Lab’s data【伊原博隆研究室】

64-2.jpg

  • 研究テーマ
    分子間の小さな力を巧みに利用して、分子の力を越えた機能材料の開発を目指しています。基
    礎研究から応用研究まで、多彩な研究を行っている研究室です。
  • 研究分野
    超分子化学、ナノ構造化学、光学材料、スキンケア材料、環境材料など
  • 国際交流
    世界各国との共同研究に力を入れている研究室。主な共同研究先は、ボルドー大(仏)、
    ブルックヘブン国立研究所(米)、アルバータ大(カナダ)、中国科学院・蘭州化学物理研究所、
    インド科学アカデミー、ダッカ大学(バングラデシュ)。
  • メンバー
    伊原博隆教授、高藤 誠准教授、桑原 穣助教、永岡昭二客員教授、博士研究員、大学院生等あわせて約50人の大研究室。
    64-1.jpg
    スキンケア剤や光デバイスへ応用可能なマイクロ粒子の観察

光をもっと有効に。化学が支える
「光マネジメント」で世界を変える

~太陽光の利用効率を上げる肉眼では見えないナノ繊維~
伊原研究室を訪ねると、伊原博隆教授が3枚のプラスチックフィルムの実験の様子を見せてくださいました。小さな太陽光電池に透明のフィルムを貼ると、発電量が低下。ところが薄い青く光る2枚目を貼ると発電量が上がり、黄緑色に光る3枚目ではさらに上昇しました。「透明の方が光を通しそうですが、実はフィルムが光を吸収してしまうんです。私たちが造ったフィルムの中には光るナノ繊維が入っており、良質な光に変える力があるんです」。住宅の屋根などに乗せ発電に使われる太陽光電池は、保護のため表面にガラスなどを貼る必要がありますが、それが紫外線をカットし太陽光のロスが生まれます。「太陽光を有効利用するには、いかにナノ界面をコントロールするか」だと伊原教授。部屋の壁も光を吸収していますが、「反射光が人間にやさしい可視光になれば、それも有効利用できる。マイクロ粒子やナノ繊維の力を活用した私たちの研究は、トータルすれば、光のマネジメントと言えるでしょう」。
さらに、光マネジメントはサーマルマネジメントとも直結すると伊原教授。「夏、私たちは太陽からもらうエネルギーの多くを捨てています。家や車の窓ガラスが、光を遮断するのではなく、吸収してエネルギーに変換するようになれば、夏のほうがエネルギーをより使える季節になるわけです」。捨てている光や熱を効率よく使うという課題を解決すると、私たちの生活はさらに豊かになると伊原教授は話します。

~化学好きなら「誰でもウェルカム」~
工学部における化学をベースとしたこの研究を、「真理の探究が、それを応用して役に立つものづくりという出口と結びつくもの」だと伊原教授。基礎研究の側面と、ものづくりという工学的側面を結びつける化学を「チームプレーでなければ成し得ない」と言います。
そんな伊原研究室は「化学が好きなら誰でもウェルカム」。海外からの学生や研究者も多いグローバルな研究室です。「化学が好きなら私たちが育てる、その自信はありますよ。手とり足とりで指導します(笑)」と伊原教授。「研究というのはどう化けるかわかりません。ただ、やりたいことを実現するには、基礎研究やトレーニングは不可欠。努力する人を私たちはお手伝いします」。今回紹介した光マネジメントは伊原研究室の研究のごく一部。化学好きを生かし、世界を変えるものづくりに挑戦したい人に、伊原研究室の扉は大きく開かれています。

Interview

64-3.jpg

大学院自然科学研究科博士研究員 岡﨑 豊さん(左)

 いったん就職したのち、研究員として戻ってきました。大学に戻った理由は、自分の興味がよりアカデミックにあると感じたこと。これから2年間、フランスのボルドー大学に研究留学することが決まっています。物質生命化学の魅力は、自分のアイディアで世界初をつくることができること。死んだ後にも残るものをつくることができるのはすごいことです。伊原先生からは、どんな結果も建設的に考えプラスにできるということを学びました。話しているとワクワクしてくる、そんな先生です。

大学院自然科学研究科博士前期課程(物質生命化学専攻)2年 村上 晶子さん(中)

 ポリマーを重合させ、粒子にして焼成し黒色の顔料をつくる研究をしています。もともと、塗って焼成し被膜材料にする微粒子の研究をしていて、乾きやすくするた
めに配合を変えたところ沈殿する物質が出て、そこから発展しました。いわば失敗から新しいことを発見できるのがこの研究の魅力。就職し研究の道に進みますが、自
分にしかない技術を持つ、聞けばなんでも答えてくれると思ってもらえるスペシャリストになるのが夢です。

大学院自然科学研究科博士後期課程(産業創造工学専攻)3年 ファタハ・ヌール・ロベルさん(右)

 バングラデシュ出身で、母国では助教として大学に所属。3年間でさらに高いレベルの研究ができ、ドクターコースを修了できることと、この研究室に所属していたバングラデシュの友人から話を聞いてここに留学を決めました。物質生命化学は生命にもかかわる
基礎的なことを学び、そこから直接人の生活にも貢献できる分野であることが魅力です。伊原研究室には最新の機器や装置が揃っているだけでなく、みんなフレンドリーで困っていると必ず助けてくれるのがありがたいですね。

密着!伊原研究室

国際化(国際共同研究、外国人受入、海外派遣など)に力を入れている伊原研究室。海外の大学
や機関との国際共同研究をベースとする相互訪問、ワークショップなどを行っています!

64-4.jpg
中国科学アカデミー蘭州化学物理研究所の研究グループとの国際共同研究で中国・蘭州市を訪問。
64-5.jpg
ボルドー大学及びフランス国立科学研究センターの研究グループとの国際共同研究でフランス・ボルドー市を訪問。ワークショップ後のエクスカーションの様子。
64-6.jpg

研究室恒例の忘年会。ダッカ大学から国際共同研究で来日中の3名の先生方を交えて。
(熊大通信64号(2017SPRING)4月発行)

お問い合わせ
マーケティング推進部 広報戦略室
096-342-3122