学長と学生との懇談会(医療技術短期大学部)

日時 平成13年11月29日(木)11:50~13:00 20020306.jpg
場所 医療技術短期大学部会議室
出席者 江口学長、良永副学長、尾道学生部委員会委員
参加学生 23名
陪席者 医療技術短期大学部教職員 7名、学生部 3名

司会
今から江口学長との懇談会を始めます。学長と副学長の方から自己紹介をお願いします。

学長
皆さん、こんにちは。今日は、こういう機会を作っていただいて、本当に感謝しています。

これはですね、私が平成8年の11月に熊本大学に名古屋から赴任した直後に考えていたことで、平成9年の春に、当時の学生部委員でいらっしゃった法学部の篠倉先生という、学生諸君のことを親身になって考えていただいていた先生がおられて、私の希望を申し上げたら、全学部、大学院生も含めて各学部から1人ないし2、3人ぐらいずつ集めて下さったのです。くすの木会館という黒髪のキャンパスの中にスタッフクラブみたいなところがあるんです。

そこで夕食を食べながら2~3時間ぐらい、ゆっくり話し会ったんです。是非、続けていただきたいと思っていたんですけれども、夕食を食べながらというと、大学にはそういう予算がなくて、学生諸君は夕食代がかかる。

何か他にいい方法がないかなと、学生部の方にお願いしていたんですけれども、昨年に僕の方がしびれが切れて、良永先生に強く希望して、わずかな昼の休み時間を利用して私が各学部を回って話し合いを行うことになったのです。だから、これは私が学長になって5年目に初めて思いついたことではなくて、赴任した直後から考えていたことです。

ホームページをご覧になると、あと教育学部、大学院自然科学研究科それに留学生が残っていますけれども、どういうやりとりをしたか、皆さんも見られると思います。だから、好き勝手に聞きたいことを聞いて下さい。今日は、各学科の学生委員の先生方もいらっしゃるけれども、先生がいらっしゃると言いにくいことでも結構です。どんどん聞いて下さい。それが僕の希望ですので、是非、そのようにして欲しいと思います。

副学長
副学長の良永と言います。学長は、所属学部がお有りにならないんですが、私、副学長は所属学部がございまして、私は法学部の所属でございます。昨年の11月から、ちょうど1年になりますけれども、江口先生を助けて副学長を務めております。もう1年間は、江口先生が「もう、お前はいらん。」とおっしゃらない限りは、一生懸命務めるつもりでおります。

私の担当は、教育・学生担当ということで、特に、学生諸君の教育とか、生活の支援とか、そういう関係の仕事を主に担当しております。そういうことでございますから、先ほど、江口先生の方から話がございましたように、言いにくいとかいうようなことを考えないで、自分達が言いたいことを、どんどん、江口先生にぶつけて下さい。江口先生は、きっとまともにお答えいただけるものと思います。それが江口先生のご希望でもありますので、よろしくお願いします。

なお、こちらに事務官の方がお座りですが、学生部の学生課の方で、私とか江口先生の仕事をいろいろ事務的な面からサポートしていただいております。教員だけでは何ともし難いので、事務官の方の一生懸命のサポートがあって大学が成り立っておるということも申し上げておきたいと思います。

本日は、何でも言って下さい。そして出来るだけ学生諸君のために、私達も一生懸命仕事をしたいと思っております。それからここにサンドイッチとジュースがありますが、これも食べながら、気楽にやっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

学長
西洋の大学に行くと、ランチ・オン・セミナーと言って、学生の前で、毎日のように先生方と話し合う機会があります。どんどん食べて話し合いましょう。

司会
では、質問の方、始めたいと思います。質問がある人は挙手してください。

看護学科3年
私は、お願いというか要望としては、1、2年生の時には、座ってからの勉強だったんですけれども、冬はコートを着て、夏は鼻血が出そうなくらい暑くて、本当に、やっぱり冷暖房という環境、一番 それが要望として大きいんです。今は、実習場というか、実習の教室は段々付いているみたいなんですけれども、私としては、一番生徒が長くいる教室からというのが、もし、そういう予算があれば、優先的にまず教室とか、みんなが長く使うところからというのをお願いしたいと思っているんですけれども。

学長
そういう学生諸君の学習環境、講義室等については心を痛めております。本来、大学というのは、大学全体の予算は無くてね、各学部、短期大学部だって学部と同等の位置づけになっており、部屋に空調を付けるとか、そういうような予算が大学全体としては無いんです。基本的には、各学部で努力して付けていただくということなんです。

だから、私がいた京都大学、それから名古屋大学の例を挙げると、すべて教官単位でそういう努力をしました。大学の予算は、事務費も、それから光熱費も、先生方の研究費も先生1人当たりについていくらという、そういう形で付くわけですよ。そんなに潤沢でないので、教室に全部空調を付けていくとかいうようなことをすると、先生方の研究するためのお金が無くなっちゃうんです。そういうこともあって、私は熊本大学では、一方では各学部でそういう努力が足りなかったと思います。

例えば、短期大学部に教室が10あったとしたら、一時に全部空調を付けることはできないとしても、年に2教室ずつ順番に整備する努力をしていく。しかし先生方が努力をしてくださっても、そういうことはできない可能性もある。各学部、そういう状態ですから、大学に空調機を付けてくれとおっしゃらない学部もあるんです。

それで、今年思い切って1,000万円ほどお金をひねり出して、ここで一番大きな教室に確か空調機が入ったと思います。順番に、まだ入っていないかもしれないけれども、大学全体としてそういう予算措置はいたしました。

一方では、学部、短期大学部の自助努力もしていただいて、大学全体としても、学長が、多少自由になるお金を文部科学省からいただいておりますから、それを順番に、まず去年と一昨年は、教養部の昔あった建物を大改修したわけです。大改修して、それで教養教育のためには、教養部が無くなっちゃったので、大学全体として、暑い最中でも授業が出来るように2年に亘って空調あるいはIT関係の設備をしたわけです。

順番に、一番困っておられるところから、そういうことをやっていく努力は考えているんです。すぐには出来ないんです。

副学長
皆さんがいるときに、いっぺんに整備できるといいけどね。なかなか学長がおっしゃったように、限りあるお金を使わなきゃいけないので、計画的に整備していく。それと各学部などにも、基本的には内部努力をしていただくということです。

学長
例えば東京大学の例を挙げるとね、東京大学では、10年ぐらい前、20年ぐらい前かな。そういうことで先生方の研究費がほとんど無くなったんです。これは本当ですよ。それで各部屋ごとに電気を節約するためにメーターが付いているんですよ。

先生方の研究費はどうしておられるかと言うと、ルーティンの国から来る予算は、そういった共通経費、図書館とか、教室を整備するとか、そういうことのために、また、電気代とか水道代とか経費でほとんど消えちゃうので、先生方は、自分で一生懸命、自分の研究費を稼いでいらっしゃる。

科学研究費に一生懸命アプライして、だから東京大学の科学研究費の人数も多いんですけど、獲得額も70~80億ぐらいありますよ。だから、そういうことも先生方に努力していただいて、少しでも年々の予算を、皆さんの学習環境とか、そういうものに取り入れていただくと、そういったことが早く進むなということをついでに申し上げておきます。

司会
有り難うございました。他に。

衛生技術学科2年
さっき学長が言われましたけれども、黒髪の方にある大学教育センターですね、教養科目の履修のための建物が、あちらに建設されておるのは知っています。今、教養科目の履修は、医技短では学内で行っているんですけれども、黒髪キャンパスでそれをもし行えれば、他の学部との交流も、もうちょっと増えるんじゃないかと思うんです。今の状況では、キャンパスが黒髪から遠いということもあって、あまり他の学部との交流がないので、そのことについて、どう思われますか。

学長
黒髪のキャンパスを、短期大学部の講義に使えないということはないんです。空いておるときは使っていただいて結構です。だけれども、あちらの学生と一緒に授業を受けるというのはかなり難しい。何故かと言いますと、あなた達は短期大学部で3年で、他は全部4年制でしょう。カリキュラム自身が全く違うわけですよね。

だから、短期大学部で一般的な教育については、4年制のこういう授業科目を皆さんが取ってくれれば、それは単位として認めましょうというようなことを、先生方が工夫して下されば、4年制の他の学部の学生と一緒に聴けるということも、十分可能だと思います。離れてても、あのぐらいの距離でそういうことが出来るんだったら是非したいということで、学生諸君が積極的に黒髪まで足を運ぶということをいとわなければ可能です。

全部は駄目ですよ。教養科目については、短期大学部の先生方に、今はこういうカリキュラムを作っているけど、これは、例えば黒髪で行われておる4年制の大学の教養カリキュラムの、これとこれとこれは、単位に認めましょうという作業が出来れば、それは可能ですよ。そのぐらいの融通性は、十分、僕は大学側も発揮していいと思っています。

だけど専門は無理ですよ。それはむしろ僕に言うよりも、ここで先生方に要望することなのではないでしょうか。それで先生方が、学生諸君がいいこと言っているから、どんどん黒髪の方の教養教育を取り入れよう、そうすると自分達も暇になるし、その間に他のことや研究も出来る。先生にとっては悪い話ではないですね。

それは、先生方にどんどんと要望してくださると、先生方も本気になって、こういうふうに考えておるんだけれども、4年制のカリキュラムを短期大学部の学生に振り替えるというようなことをしてもいいかということになって、そして今度は、良永先生が教育委員会を束ねていらっしゃるから、良永先生に、こういう案が出ておるけれども、よろしいか検討して下さいということになります。僕は十分可能性はあると思います。

副学長
今、江口先生から教育委員会というのが出ましたけれども、熊本大学の教育をどうするかという大学全体としての課題を審議する非常に重要な委員会があります。ここで今言ったような問題は、必要であれば取り上げて検討しますので、直接、諸君が僕のところに言ってきてもいいけども、会議ですから、なるべく委員の先生からそういう発言があると、いろいろ議論の俎上に載せやすいということです。

ですから、皆さんの場合、そういう要望があった場合には、医療短大の関係の先生に、是非、いろいろ要望を出して下さい。そうしますと取り上げることが可能になると思います。それが実現するかどうか、ここで私、軽々にお約束は出来ませんけれども、検討はするということです。よろしくお願いします。

司会 ありがとうございました。他に質問のある方は。

学長 みんな静かだな。食べる音がするぐらい元気に食べてですね、それで聞きたいことをどんどん聞く。

看護学科3年
今、医技短の4年制化が進んでいると思うんですけど、入学当初から、4年大になるという話がうすうす看護学科の中でも出てきて、それがどこまで進んでいるのかなと思いますが。

学長
今、国立大学で、医療技術短期大学として残っているのは、8つぐらいだったかな。平成14年度内に、3校ないし4校が4年制化されますので、あと3、4校だけが残るんです。私は、1日も早く、熊本大学の医療技術短期大学部を4年制のしっかりしたものにしたいというふうに思います。

どうしてそういうことが必要かと言いますと、僕が言うまでもなく、もう短期大学では無理なのね。3年間の修業では、将来、高齢化が進み、少子化が進む、少子化と高齢化というのは、表裏一体のものでありますけれども、非常に社会が複雑になっている。

そういうようなことを考えていくと、将来の医療技術者には、どうしてもみっちり4年間ぐらい勉強しておかないとだめだということで、だいぶ前から文部科学省は、短期大学を4年制の大学にするということを進めておりますが、熊本大学は、なかなかそれに手が付けられないんです。色んな理由がありますけど、そんな理由はさておき、私は、平成16年から発足できるようにしたい。そういうことを目指して、今、努力しているところです。

それで、国立大学の中では、一番後になっちゃったけれども、平成16年から4年制の、これは医学部の一学科ということになりますけれども、開講が可能ではないかと思います。そうするためには、まだまだ大変な努力がいります。短期大学部の先生方も非常に努力をなさっておるので、是非とも平成16年度から開講できるようにしたい。それより早くは無理だと思います。

司会
有り難うございました。他に質問のある方は。

診療放射線技術学科3年
この医技短とか、医学部には、黒髪と違ってキャンパスとかがないじゃないですか。広い空間です。グランドとか、そういう広いキャンパスが欲しいんですけど。土地的な問題もあると思うんですが。

学長
その答えはね、不可能でございます。何故かというとね、ここ国有地ですよ。医学部は、戦前から国立の単科の大学として存在していた。その頃からの時代には広々としたグランドは無かったんでしょうね、どうしたわけか。あったのかもしれないけど、建物がどんどん建ってきましたから、当初はグランドがあったのに、グランドも使わざるを得なかったかもしれない。

しかし、十分なだけのグランドを熊本大学は全体としては持っていると私は思います。黒髪、相当広いグランド、武夫原があるでしょう。それから警察学校の横の大江に運動場がある。それから薬学部にあるんです。それで、皆さんの近傍に、そういうグランドを新たに作るというのは、はっきり僕はまず結論として不可能だと言いました。

それは何故かと言うと、例えば大江のグランド、あれ国有地です。あれも離れているから使い勝手が悪いので、あれをこの辺の近所の人に使っていただいて、この辺の人がそっちに移っていただくというようなことでも考えないと、近傍には、全部私有地だからできないわけですよ。

この中で、グランドを作るといったら、建物をぶっ壊して、土地を得るしか仕方がないでしょう。それで、病院と医学部の再開発にはまだ随分時間かかります。それまではグランドとして使われていた体育館の向こう側の広い敷地は、駐車場として使われています。再開発が進んで、古い建物を壊して、リアレンジ済みグランドに復帰させうるまでは、申し訳ないけど、薬学部のグランドを使ってください。

ここから歩いたら10分ぐらいでしょう。薬学部に行ったことありますか。あなた達は、医療技術短期大学部学生だから使うことならんと言うことは、絶対に薬学部は言わないと思います。あれは熊本大学のグランドですからね。

僕は、皆さんと同じぐらいの歳、大学に入ってずっとラグビーをやっていました。私は、理学部だったんですけれども、理学部は名古屋の東のはずれにあり、理学部にはグランドが無かった。野球場はあったけれども、ラグビーのゲームはしてはいけなかった。5キロぐらい離れた経済学部のグランドで練習していました。自転車に乗ってそこに行って、それで練習が済んでから、もう一度、理学部のキャンパスに戻ってきて、それで、実験の続きをやったりしていました。それがいい運動になって、今思うと良かったなと思います。そのぐらいのことはして下さい。

司会
有り難うございました。他に質問がある方。

学長 愛想のない答えでごめんなさい。僕ね、どんなに頑張っても、これは約束できない。近所の人々が、熊本大学を愛して下さって、熊本大学、非常にいい大学だから、何とか盛り上げなければいかんと言って、格安で土地を譲って下さると言うと、例えば大江のところを売り払って、そのお金で、近隣の土地を譲っていただくということは出来ますけれども。

その為には、皆さんが、熊本大学を良くしてくれんといかんわけです。そうでしょう。近隣の人に愛されるように、熊本大学を持っていってくれないと、それには先生方、事務官の人も努力せないかんと思うけども、学生諸君も一緒になって努力して下さい。

司会
他に質問はありませんか。

衛生技術学科2年
学長の学生時代の研究などはどうだったんですか。それから、ラグビーのことを話されたので部活とか。

学長
あのですね、自分で言うのもおかしいけれども、僕はよく学びよく遊ぶ典型的学生だったと思います。高等学校卒業するまでは、あんまり勉強しなかったけど、大学に入ってから猛烈に勉強しました。一番勉強しました。高等学校まではですね、私の勉強の仕方は、1日1時間ないし1時間半、欠かさず毎日予習だけやっていました。

5時か6時頃まで毎日ラグビーを練習して帰りますね。それで、高等学校までは、皆さんも覚えがあるように、10分ないし15分の授業の間に休みがあるでしょう。その休みは遊ばなかった。休みの間にノートを整理して、わからないところを先生に聞きに行った。ラグビーを練習して家に帰ってから欠かすことなく、1時間ないし1時間半予習をしました。それだけで僕、高等学校の成績は10番を下ったことないです。先生から、「お前、何で東大に行かん。」と言われたこともありますから、まあまあできた方でしょう。

それで大学に行ってからは、もう自ら一生懸命勉強した。最初は医者になろうと思ったんですけど。どうしたわけか、僕は学長先生の家が近かったこともあって、大変、個人的に目を掛けられていて、「お前、医者になれ、医者に向いておる。外科医が向いておるから手術を見に来い。」と言って、解剖実習の経験もあるんですけれども、大きな手術を見せられて、ひっくり返っちゃったんです。生身の人間は、とてもいじれないと。

それでいろいろ考えて、生き物が好きだったから生物学に転じて、今も続けておるような研究に没頭することになった。どういう研究かと言うと、一口で言うと、“再生”という現象あるでしょう。今、再生医学とか、非常に脚光を浴びています。

例えば、転んですり傷を受けると、軽傷であればお医者さんに行かなくてもちゃんと治る。それも再生でしょう。そういう現象に興味を持ってこれまで研究してきました。イモリという動物は非常に再生が得意な動物なので、主としてイモリを研究材料にして、失われた部分が、いかに再生をするかという研究をずっと続けてきています。今でも、学長の官舎には、イモリが70~80匹おります。

副学長
今は、イモリを自然の世界で見つけるのは難しくなりましたね。見たかったら、学長の家に行って下さい。

学長
それでね、僕のことをイモリの先生と言うけどね。イモリは研究のための材料であって、実は、これまでにヒトの細胞を含めほとんどすべての骨のある動物を材料として研究しました。これでいいかな。

司会
有り難うございました。

学長
それでね、僕の勉強の仕方をもう一つお話しするとね。例えば私は、社会、歴史が好きなんですよ。皆さんも歴史なんか一生懸命勉強して欲しいと思うんだけれども。ただただ本を読みました。

僕らが学生の頃、講談社か岩波だったと思うけども、『日本の歴史』、『世界の歴史』という、おのおの20冊ぐらいの全集があった。それを繰り返し繰り返し読んどっただけ。それで試験の時はね、例えば、「日本に仏教が伝来したのは何年ですか。」と言うような問題が出てくる。西暦で1212、1212年、それは一切覚えなかった。そういう問題は、20問のうち1問か2問です。そんなものはできなくったって大したことない。面白い歴史の筋を一生懸命読んだ。「日本の歴史」と「世界の歴史」、それはきっちりとした書物ですから、比べながら、例えば300年前、ヨーロッパはどういう状態で、日本はどういう状態だったとか、そういう勉強をした。

化学は、あれは構造式なんかを覚えないといけませんね。例えばベンゼンはどうなっておるか、ニトログリセリンがどうなっておるかと。あれをどうやって覚えたかと言うと、大きな紙に絵を描いて、天井に張っておくんです。それを見ながら、ずっと見ておるとすぐ眠くなる。そうするうちに、毎日見よるから頭に入ってくる。ベンゼンの構造式書けという問題が出たとすると、ベンゼンは、部屋のこの辺に書いてあったなと、すっと思い出すんです。そういう勉強をしたんです。とにかく余暇が欲しくラグビーしたかったから。だから暇がありすぎると、あんまりいいことはないね。以上です。

司会
有り難うございました。他に質問は。

看護学科3年
先ほどもお話があったんですけれども、地域の方とのつながりというのを言われた時に、もしかして図書館とかも、一般の方が使えるように出来た場合に、やっぱりバリアフリーというか、車椅子の方とか障害を持っていらっしゃる方も気軽に行けるというふうになればなと思いますけども。

学長
せないけませんね。中央図書館はバリアフリーになっていませんか。

副学長
階段を見ると、まだかなり附属図書館は遅れていると思います。

学長
それはいい提案なんでね、校舎等も少しずつ、そういう手は入れていますけれども、それは努力しましょう。

司会
有り難うございました。他に。

衛生技術学科2年
ホームページを拝見させていただいたんですけれども、他の学部の話でそれで薬学部の方でも、既に言われたみたいなんですけど、キャンパス周辺の、この辺の治安について、僕が入学したのは2年前で、玄関のところに「この辺はひったくりとか痴漢がいるから注意しましょう。」というような掲示がいきなり目に飛び込んできたのでびっくりしたんです。

考えてみると、この辺一体は、産業道路とか、白山通りとか、大きな通りになると結構明るいんですけれども、薄暗いところというか、そういう明かりのないところがこの周辺にちょっとあるので、もうちょっと明かりを増やしたりとかした方がいいと思うんですけれども。

学長
おっしゃるとおりでね、実は黒髪もたくさん木が生えていて、かなり頻繁にそういうことが起こっているんです。それでね、こんなことを考えているんです。うっそうとしておる木に外灯が隠れていて、効果的に照明出来ていないから、場合によっては、先生方は、そんな木なんか切るなとおっしゃるかもしれないけれども、そういうところの枝をはらうとか、もっと有効に照明を増やして、そういうことは手をこまねいていなくてすべきであると言うことで、今、具体的に検討しております。

だから、そういうことも医技短では、この部分とこの部分で照明が必要であるということを、私のところに、環境問題については、委員の先生がいらっしゃると思うので、その先生を通じて、具体的にここに照明を一基付ければ随分変わるというようなことを教えていただけるといいなと思います。

司会
有り難うございました。他にありませんか。

学長
若者なんかが、横着に出入りするとか、そういうことはないですか。

衛生技術学科2年
なんか、たまに集団と言いますか、見たことありますけど、酔っ払いとか。

学長
それで痴漢のような者に具体的にあったというようなことはありますか。

衛生技術学科2年
僕はないです。直接知っている人ではないですけど、間接的に耳にしたことはあります。

学長
黒髪ではあるんだよね。

副学長
はい、ときどき出ます。ときどき出ると言っても、数ヶ月に1回とか、被害等の連絡があります。折角の機会ですからね、私の方からもちょっとお願いがあるんですが、特に女性の皆さんね、夜遅くとか、暗がりを1人で歩いたりはしないで下さい。基本は、自分の身は自分で守るということを心がけていただきたい。それから残念ながら被害にあった場合、例えばバイクとか自転車を使う場合もあるようですが、痴漢行為に及んだ人の人相、服装、特徴、それをとにかくしっかり見極めておいて下さい。そして記録しておく。

例えば、バイクだったらね、暗がりだったら見えないかもしれないけれども、どういう感じのバイクだったとか、あるいはできれば、ナンバーなんか確認出来れば確認して、数字の1つか2つでもいいよ。それでもメモをしておく。そして1つは警察に届けて下さい。それからこちらの事務の方に届けてもいいし、あるいは後ろに座っておられますけれども、学生部の学生課というところがありますから、そこに届けて下さい。

僕たちとしても再発の防止、それからそういうことをした人についての、私達は捜査権限はありませんから、そこまではいきませんけれども、警察に届けたりして、二度とそういうことが起こらないように努力します。「キャー」と言って、後は放ったらかすということをしないで下さい。皆さん達がきちんと防御するということになると、被害も少なくなり、そういうことをする人もしなくなる。蛍光塗料を投げつけるとか、大きなブザーがなるものとか、そういうものも持っておいていいかなと思います。

何かあった場合は、必ず記録して届けて下さい。泣き寝入りするとか、放置するのが一番困る。こちらとしては何があったかわからないしね。それから繰り返しになりますけれども、暗がりを1人で夜遅く歩くとか、そういうことは是非避けていただきたい。町の中にある大学ですから、郊外の方にも起こりうるわけですけれども、そういうふとどき者が出やすい環境もなくはないですね。黒髪地区もキャンパスの中でもたまに起こりますけど、大学の周辺で起こるんですよね。是非、そういうことに心がけて下さい。よろしくお願いします。

司会
有り難うございました。他に質問はありませんか。

衛生技術学科2年
続けてお聞きしたいんですけれども、学長は、理学部出身でいらっしゃるんですけれども、ホームページなんかを見たら、発生学が専攻だと書いてありましたが、熊大の学長に就任するまでに、いろいろな研究生活をしていらっしゃったと思うんですけど、研究生活をしていらっしゃる中で、一番感動したこととか、研究者としてのモットーというか、そういうのがあればお聞きしたいんですけれども。

学長
ちょっと恥ずかしいな。ちょっと恥ずかしいけれども、僕は、よほどのことでないと感動できないたちでね。実験をして、それで自分が予期した結果が出ればちょっとは嬉しいけれども、それよりもね、思いも寄らない展開が見られた時は非常に喜びました。それと、つくづく思うのはね、研究なんてことは、常識的にやったらいい仕事は絶対出来ない。僕の経験では、発想が非常識なほどいい研究になっていく。

それで、今、生命科学が世界中で非常に流行っていますけど、どんな研究領域でも潮流というのがあって、それで盛んになって衰えて、また別の領域が盛んになるということが繰り返し起こっていますよね。それで今、生命科学が非常に注目されて、大勢の若者達が遺伝子の研究とかそういうのに飛び込んで来ますけれども、実は、そういう流行の状態、非常に栄えた状態は、研究としては成熟期なんだ。

そういう状態に身を置くとですね、なかなか飛躍できない。その代わり、ちょっと外国でやられておるいい論文を読めば、それと類似の、新聞記者なんかはサイエンス、ネイチャーと言って、そういうのに発表するといい仕事だと書き立てますけど、そのぐらいの研究はすぐ出来る。だけど、今まで誰もしたことのないようなものを調べていこうというと、盛んになったような領域はなかなか難しい。

私の先生は、佐藤忠雄先生。再生の、眼の再生のお仕事をずっとおやりになっていた先生でしたけど、当時、僕が学生で弟子入りした時には、佐藤先生の研究室が一番地味で廃れていて、ほとんど学生が行かなかった。それで私はいろいろ考えてね、人気のあるところへ飛び込むと、先生との接触度が希薄になるので、一番流行らないところに行こうと思ってそこへ行ったんです。そうしたら、先輩が「お前、可哀想だな。何であんなところへ行くんだ。あんなカビの生えたようなところに。」と悪口を言うんですよ。

なるほどね、言われてみるとひっそりしていた。僕の先生は非常に優れた先生で、それが非常に良かった。僕が4年生の時は1955年ですから、1900年前後の「ドイツ論文を読みなさい。自分でテーマを探しなさい。」と言われた。私ね、そこに身を置いて、じっくり勉強できたのが一番良かったなと思います。先生は流行に惑わされなく、何が本質であるかということを、そういう古い論文から、学び取れとおっしゃったんですね。それで、1894年、95年のドイツのヴォルフという解剖学者が書かれた論文がきっかけになって、それが私の研究の指針になりました。

それと皆さん、是非、読んで欲しい本があるんですよ。皆さんは医者ではないけれども、クロード・ベルナールというフランスの先生が書かれた「実験医学序説」というのがあります。それは是非読んで欲しい。それを読むとね、研究というものはどういうものかがよくわかる。皆さんの将来にとっても確実に役に立ちます。

この間、医学部の学生と話し合いがあって、医学部の学生ですら、この名著を読んでなさそうなんで、がっかりしたんだけれども、それは是非読んで欲しいなと思います。「実験医学序説」は決して難解な書物ではありません。そういうのは、みんなでグループを作って読み合ったらいいんだよね。是非、お勧めいたします。

司会
有り難うございました。他に質問はありませんか。

看護学科3年
学長が考えておられる先生と生徒の関係というのは、どのようなものであるべきだと思われますか。

学長
あのね、教育、日本で教育と言うでしょう。あれがどっから来ているかというと、educationという横文字から来ているんですよね。だから教育学部のことをfaculty of educationと言うでしょう。educationという英語はね、皆さん、辞書を引いて下さい。小さな辞書だと教育と訳してある。だけれども、大きな辞書、例えば英英辞典なんかを引いてずっとつぶさに見てみると、educationという言葉の本当の意味は、引き出すということです。教え育むという概念はあまりないんです。

引き出す。つまり、それは幼稚園から私は教育というのはそういうのでないといかんと思います。特に大学では、先生方は、皆さんに講義をしてこれを覚えなさいというんじゃなくて、講義を通じて興味を持たせて、皆さん自身が勉強するように仕向けるのが僕は教育だと思う。あの先生の講義を聞いておったら、もっともっと自分で色んなことを勉強したくなった。それがeducationなんです。

だから一方通行でなく、双方通行でなければいかんのです。だから僕は、教育というのは教えることではないと思います。皆さんの、皆さん自身が気が付かない潜在的な能力を、何とかして引き出すのが僕は教育だと思う。そのように考えると、自ずと先生と学生の間がどういう関係でなくてはいけないかということがわかるでしょう。

だから僕は、「あの子は僕の教え子だ。」「あれは俺の弟子だ。」ということが大嫌いです。生徒は、先生が選ぶんでなくて、諸君が選ぶんです。「私淑」という言葉があるでしょう。いやしくも大学の教官たる者は、教育というものは、そういうものであると、僕は思っていただきたいというのが教育に対する僕の信条であります。

司会
有り難うございました。まだまだ質問があると思うんですが、そろそろ時間が近づいたので。

学長
静かだな。一番静かでしたね。またやりましょう機会があったら。それで、もし皆さんが、学長や副学長とこういう形で話し合うのも悪くないなと思われたらですね、僕、時間がありませんので、お一人お一人に会うのは非常に難しいですが、何人かのグループで、ある問題を絞って、こういうふうにして語り合いたいということであればですね、学生部に連絡して下さい。

そうすると、短期大学部のこういうグループの学生が、学長と話しをしたいと言っているので、時間ありますかというアレンジしてくれると思います。また、学長や副学長と直接話し合っても意味がないということであれば、言わずもがなですけども、意味があると思ったら、僕はいつでも受けて立ちたいと思いますので、遠慮しないで欲しいと思います。

司会
最後にもう1つ、質問があれば。

看護学科2年
これも土地的なことがあるかもしれないんですけれども、看護学科で3年生は、もうずっと実習で朝が早いんですね。家が遠い人も結構いて、だから車で来れたらなと思う人も結構多いんですよ。

今は医学部だけは、車で来てもいいということになっているじゃないですか。それは、医学部がどのようにして、車で来てもいい人を決めているかというのはわからないんです。距離とかの関係もあるのかもしれないんですけれども、出来れば医技短の学生も、遠いところから来ている人だけでも車で来られたらなと思って、医学部の学生の車で来ている人を減らすことができるかはわからないんですけれども、駐車場の少しを医技短生の分にしてもらえたらとてもうれしいなと思うんです。

学長
それは、この短期大学部の場合は、学生は車に乗ってはいけないんですか。医学部はそれが許されている? アメリカの大学、イギリスの大学、非常に厳しく学生は車に乗るなというところがあります。今のような理由の場合は、やはりもっともな理由であるということであれば、ある程度僕は許されていいと思う。

それは、私がね、医学部に、あなたのところは、医学部の学生は車に乗せておるようであり、駐車場を使っている。その駐車場を、もうちょっと融通して、医短の学生にも使わせてくれということは、僕は言える立場じゃない。それはまず、ここの先生方に訴えて下さい。それで「ああなるほど。」看護学科の場合は、朝非常に早くから実習がある。大変だろうから、そういう方々に限って、車を使うことを許しますよということになれば、その置き場所というのは、先生方から医学部の方に折衝していただくという順序になろうかなと思います。そういうときに、学長が、仲介をすることは出来ます。

だから一度、先生方にそういうことも検討していただいたらどうですか。何時ぐらいから実習があるんですか。8時ですか。そうすると、一番遠くから通っている人は、どのくらい距離にして。10キロ、20キロ

看護学科2年
玉名とか八代とかは結構たくさんいるんですよ。

学長
そうか。車の方が早く来られる。時間的に電車の方が早いんとちがう。

看護学科2年
実習だったら、朝が早かったら、道が空いているんじゃないかなと思うんですけど。

学長
早く起きないといかんな。車というのは便利そうに見えて不便なもんですよ。僕はこんな小さな国で、自分の自動車を乗り回すのは、あまり意味がないと思う。アメリカのようなああいう大陸だったら別ですけど。私は、自分で運転することはしないと決めています。電車の方が確実で一番便利だと思うけどな。

例えば、8時に間に合うようにするには、ゆとりがあって、7時40分頃に着きたい。その頃はもうラッシュアワーでしょう。それよりも、ラッシュアワーでないときに車が着くように来るというと、随分早く出ないといかん。すると早く起きないかん。電車だったら確実ですよ。事故が起きん限り。車を使いたいからだね。そういうのは、僕、しつこいですよ、そういうことについては、なんぼでも論破しますよ。

司会
有り難うございました。

司会
時間になりましたので、終わりにしたいと思います。

学長
あのね、僕、もう68歳の年寄りだけども、青年というのは、生意気なぐらい生き生きとしている、それが魅力なんです。無責任ではいけませんけど、生意気じゃないと魅力がない。それだけは言っておきます。どうも有り難うございました。

お問い合わせ
経営企画本部 秘書室
096-342-3206