学長と学生との懇談会(医学部)

日時 平成13年11月22日(木)12:10~13:10 20020220.jpg
場所 医学部会議室
出席者 江口学長、良永副学長、竹屋学生部委員会委員、児玉学生部委員会委員
参加学生 学部学生 30名
陪席者 医学部教職員 5名、学生部 3名

司会
そろそろ時間ですので、学長と学生との懇談会を始めます。
医学部では、昨年から学生会が組織されており、本日は学生が主体の会ということですので、司会は学生会2年の河村が務めさせていただきます。よろしくお願いします。不慣れな点も多くあるかと思いますけれども、そこら辺は勘弁して下さい。まず、今日は医学部の懇談会ですが、学長は、今までに工学部、理学部などで同様の懇談会を行われているようで、ホームページ上でも公開されています。ランチ・オン・セミナーという面白い試みなので、皆さん楽しみましょう。
では始めに学長から一言、簡単にお願いします。

学長
今日はどうも皆さん、お忙しいところ有り難うございます。
実はですね、平成8年の11月に着任したのですが、私は熊本の出身ではございません。学長になるなんて、もとより思っていませんでしたが、私は、それまで大学に勤めて、学生諸君とのコミュニケーションがいかに大事かということを自分の体験に基づいて感じておりました。まず、大学の教育を良くしていくためには、学生諸君の気質を、学長自らが十分理解する必要があると思って、随分前に、当時の学生部長に学生と学長と話し合う機会を作っていただきたいということをお願いしたんです。
それで平成9年の春に、非常に学生思いの法学部の篠倉先生が、そういう機会を作って下さいました。全学部、大学院の学生を1、2名ずつ集めて、くすの木会館で、3時間ぐらい話し合いをしたんです。非常に良かったので、是非、こういうのは続けて欲しいと思いました。問題は、夜、食事しながらというと、経費がかかる。残念ながら、学生諸君と食事をしながら学長が話すといったことを行うための予算はありません。僕のポケットマネー出せば出来るけど、それをどんどんやっていったら、私はそんなにお金持ちではありませんから、出来ないということで思いあぐねていたんです。
やがてしびれが切れまして、去年の夏に、副学長の良永先生にお願いして、こういう会を作っていただきました。それで、ここのところをよく理解して欲しいんですよ。学生諸君が学長とこれから、今日の経験を踏まえて、意味があると思い、もう一度、学長を引っ張り出して、是非、話し合いがしたいというのであれば、僕はいつでも参ります。こんなことやったって意味がない、1回で結構ということであれば別ですけど、そういうものを望んでおります。以上です。

司会
では、はじめにどれぐらい学長が医学部について知っておられるかを、○×問題としていくつか、司会の方からやらせていただきます。皆さん、忘れてましたけれども、サンドイッチとジュースが置いてあります。ランチ・オン・セミナーなので、食べながらよろしくお願いします。始めに、「本九祭というものを知っているかどうか。」簡単に○×だけで結構ですが。

学長
知りません。(×)

司会
ということは、当然来られていないということになりますね。いいですか、それで。

学長
来ていないということは、出席したことはない。医学部には、時々、来ているんですよ。足しげく。

司会(学部3年)
次に、医学部の学食を食べたことがありますか。

学長
学長:ございます。(○)

司会
ありますか。どこの学食ですか。

学長あれは学食じゃないのかな。あそこの楷樹会館。それとね、言い訳じゃないんだけど、僕、昼は、ほとんど食べないんですよ。朝飯食べられない時は食べるんです。

司会
それはホームページ上で見ましたのでわかりました。次の質問に移らせていただきます。次に、医学部生を悩ませているCBT(Computor Based Test)というものについて知っておられるかどうかをお聞かせ下さい。

学長
それは知らんですな。(×) コンピュータのあれね。

司会
では、それに続いて、当然、それに関連した、コアカリキュラム。

学長
それは当然知っているんだけど、どういう点で悩ませておるかは知らない。

司会
それは後でまたあるかと思います。コアカリキュラムというものについて、知っておられますか。

学長
はい、知っております。(○)

司会
では次に、これはいろいろな意見が多く寄せられるんですけれども、医学部にグラウンドがないことについて知っておられますか。

学長
知っております。(○)

司会
薬学部にあるということは。

学長
知っています。(○)

司会
そうですね。次に、最後になりますけれども、医学部の図書館というものを利用したことがあるかどうかをお聞かせ下さい。

学長
1度だけ利用いたしました。(○) 本館から、本を取り寄せてもらった。

司会
じゃあ、実際、医学部の図書館に行って利用したことはないということですね。わかりました。

学長
狭いということは、よく聞いております。

司会
6つの質問のうち、2つは答えられないというか、知らなかったということでわかりました。
続きまして、学生からの意見を聞きたいと思います。残り50分しかないですけれども、短い時間なので、できるだけ多く、活発な意見が出るように、各自、短時間でよろしくお願いします。場合によっては、自分のこともあるかもしれません。今回、学長への質問としてですね、皆さん、手を挙げて、学年と名前を言ってからお願いします。それではお願いします。誰か。

学長
そういったら諸君、がっかりするかもしれないけど、なかなか名前を覚えられないのよね。あなた達はすぐ覚えてくれると思うんだけども。名前を覚える努力をいたします。

学部3年
学生からいろいろ意見が出ると思うんですけど、江口先生は、どれほど、その学生の期待に応えていると思いますか。

学長
極めて抽象的な質問ですね。何がどれほど応えられるか。

学部3年
例えばですね、学生から、こうして欲しいとか、ここはもうちょっとこうした方がいいんじゃないかという意見が、だいぶん出てくると思うんですけども、それに対して、具体的に先生が取れる対策というのは。

学長
4割ぐらいかな。

学部3年
意見がいろいろ出れば出るほど4割みたいな。

学長
いや、総じて4割ぐらいかなということを感じています。どういう問題が出てくるかわからないものね。問題によっては、100%約束できるものもあるし、問題によっては、絶対出来ないものもある。

司会
皆さんも出来るだけ具体的な質問でよろしくお願いします。次の方、いらっしゃいますか。お願いします。

学部3年
さっきちょっと出てきたCBTの問題なんですけど、何故、頭を悩ませているかと言ったら、今、ここにいる3年、4年の学生達が、そのCBTのテストをモニターとして受けるという話があります。そのCBTのテスト自体は、臨床前の試験ですけど、それでモニターとして受けるのに、どうも成績判定にも使うという話があるんですよ。モニターとして受けるのに、留年にまでかかわるような話はおかしいんじゃないかと思うんですけど、そのことについて、どう思われますか。

学長
私は、それは、相当融通性を持った対応をして欲しいと思っています。だから、モニター、試行が行われる。その試行自身が、成績判定に即つながるということは、おかしいのではないかと言うことですね。それは、私もそう思います。

児玉副学生委員長
教育委員としてちょっと言いますけど、成績には全然関係ありませんから。

学部3年
そうなんですか。

児玉副学生委員長
それは、医学部でやる試験に対して関係するわけであって、CBTで「例えばお前は駄目だ。」とか、そういう話にはなりません。

学長
だからおそらく、今の児玉先生の解説で、私が私なりに理解を得られたことを申し上げると、それもモニターとして、おやりになるんじゃないでしょうか。成績判定がこれで出来るかどうかね。出来ないとしたらどういう問題があるかとか、ということも含めて、おやりになるんじゃないかと思いますけども。だから、そういうことは、やっぱり直接先生方をつかまえて、言うべきだと思います。

学部3年
言ってはいるんですけども、いろいろ正確な情報がまだ全然伝わってこなかったりして。

竹屋学生委員長
基本的には学士試験の方がレベルが高いんです。だからCBTを落ちる人は、学士試験も取れない、そういう意識でいてもらいたい。だから学士試験の方がレベルは高いんであって、CBTで駄目だったら、学士試験もだめ。そういう意味で、落ちれば両方落ちるということですね。

司会
有り難うございました。CBTについては、また、たびたびいろいろ質問が寄せられるかと思いますが、そのたびによろしくお願いします。続いて、他に質問はありますか。どうぞ。

学部2年
熊大医学部の現状と将来のことなんですけど、大学の地方への貢献のあり方とか、そういうことも含んで、今の医学部というのは、現状のままで存続していけるというふうに思われますか。

学長
現状のままでも存続はしうると思うけど、じり貧になって行くでしょうね。段々と貧相になって行くでしょうね。

司会
根拠もよかったらよろしくお願いします。

学長
根拠ですか。あなたね、地域貢献ということをおっしゃったでしょう。例えば私ね、病院で2度診察を受けました。第1回を受けた時と、第2回受けた時には、随分と違った印象を受けました。それで、どういう点で違ったかと言うと、非常に事務が効率的になっていた。それから対応が大変良くなっていた。それと、先生方、看護婦さんはとても親切です。そういう努力を怠ったら絶対にだめで、それだって地域貢献です。
それで、もう1つは、設備。非常に陳腐です。設備を何としても良くしていかないと、これは駄目です。それと、熊本大学の医学部附属病院は、かくかくしかじかに、具体的に地域に貢献しているんですよということを、積極的に言っていかないといかんと思います。そういう点では、ここにご本人いらっしゃるけども、児玉教授がやっておられる解剖実習で全国から、しかるべき人に来ていただいて教えていただくという、実習はこれ、ものすごく一例として大事なことです。そういうことをどんどんやっていただいておれば、発展すると思います。
それとね、もう一つ、お願いしたいのは、是非とも謙虚であって欲しい。絶対、「おれは医者だ。」なんて威張らないで欲しい。僕は医師を志したことありますよ。途中から、生物学者になったけど、医師というのは、病気を治すんでなくて、病気を治すのは患者さん自身、医者は、患者の努力を助けるというもんだと僕は思います。

司会
さっきの質問なんですけれども、大学の存続については、皆さん、今回の場だけではなくて、新聞なんかでいろいろ情報が流れているみたいなので、そういう点には、みんな注意して見ていくべきだと思います。それで僕も見ていきたいと思います。続いて、他に質問はありますか。

学部3年
医学部の学生がする質問ではないかもしれないんですが、大学というところで、いつも自分が気になっているのは、特に研究に対してなんですけど、国の方針で、結局、直接利益に結びつくような研究に対して推進するような方向を、亡くなった小渕首相が大きく打ち出しましたね。でも、自分は思うに、何の役に立つかわからないけどもやる研究というか、基礎の研究ですよね。本当に医学のみじゃなくて、化学でも、数学でも何の分野でも、土台となる基礎的な内容の研究というものが、やっぱり国にとってすごく大事だと思うんですよ。国だけに限らずですね。熊大の方針としては、どっちに重心を振るつもりなんですか。そのアプリケーションの方か、基礎的な研究か。

学長
うれしいですね。そういうことを言っていただけると。僕も同じ考え方です。大学というところから、そういうものを全部さっ引いちゃったら、大学でなくなる。
それで、確かに、国立大学を法人化して、そうした本当に20年、30年先にならないと、その成果が活用できないというようなことはいくらでもありますよ。そういうようなことにこそ、大学は力を入れるべきである。私自身、そういう思いでずっと研究してきたんですよ。国立大学は、特に、そういう役割を担っておると思います。税金を使って営んでおる大学ですから。
ただ、自分がしておる研究。これはどんなことでも構わないけれど、人と社会を忘れないで欲しい。僕は、人と社会が忘れ去られておるような研究は、人のする研究でないと思っています。
それで、大学にもう一つ非常に大事なことは、文化系。文学部とか法学部とか、ここに経済学部はありませんけれども、そういうのをしっかりと強いものにしたいんですよ。大学の機能というのは、これ国公私立、共通して言えることなんです。地域社会、あるいは大きく言えば国、もっと大きく言えば人類、その思想を形成する中核になっている。そういう営みをいつもしなければいけない。
それから、あなたの言ったような意味での研究を怠ることなしに知恵を蓄える。将来、人々、社会が必要とする知恵を蓄えて、いつでも使えるようにしておくこと。
それにこれは国公立大学だけの役割ですけれども、例え家庭が経済的に貧しくても、その意欲と能力がある若者に、高等教育を受ける機会を均等に与えること。ことに3つ目は国立大学の重要な使命だと思っています。税金使っているから。だから私は、熊本大学をあなたのおっしゃるように、基礎研究ができないような大学には、断じてしたくはありません。

学部3年
有り難うございます。では、そのためには具体的にはどういうふうな方針で行くというのは?

学長
具体的には、大学院の充実を僕は是非したいと思います。

これは、私が言うまでもなく皆さんもご存じのように、これから少子高齢化がどんどん進んでいきますね。先進国の共通な問題として。一方、例えば大学に来る人、今18歳だから、18歳年齢は減っていきますね。ところが、それと裏腹に、高等学校出た若者達のほとんどが大学に来るようになりますね。それはどういうことかというと、ここで大学の有り様をちょっと深刻に考え直さなきゃいかんのです。私が若い頃、皆さんもそうだと思いますが、非常に明解な目的を持って、俺は医者になる、あるいは医学者になる、人のために貢献するんだという思いで医学部に来ますね。これからはそういう人ばかりが大学に来るとは限らないようになる。もっともっと多くの人が、「まあとにかく、大学でも出ておこうか。」とこういうふうになる。そうすると、しかるべき目標、夢、あるいは希望を持って来る人と、そうでない、「大学でもみんなが行くから行こう。」というのがこれから増えてくるんです。
そうすると、教育体系そのものを変えて行かなきゃいけないんです。そのために大学院を充実して、それで現在の熊本大学が責任を持って営みうる大学院をきっちり創って、それを下支えする学部をスリムな形で創り直していく。
そして願わくば、法人化になったら、そういうことが許されるかどうか知りませんけど、僕ね、6年から8年在学期間を設けたらどうかと思います。4年ぐらいで、ぼつぼつ大学から出て、社会に出たいという若者達には、きっちりと判定した結果をもらえば、4年間学んだだけの価値があると。だから卒業、大学卒として、卒業証書を渡すと。もうちょっと専門的な勉強をしていたいなとか、研究もちょっとしたいなというのであれば、大学院に入る。それで2年か3年ぐらいで、ゆとりと自信が付いて、社会に出たいということであれば、修士というような資格を与えて修了させる。それで、本当に専門的な研究者、あるいは専門家になりたい人は、もうちょっといなさいと。そこから先は、いつでも学位の申請ができるようにして、自信がついて、学位を申請する準備が出来たら、その後、1年でも2年でも3年でも、いつでも申請ができるような、そういう格好になったらいいなと僕は思います。

司会
有り難うございました。

学長
今のようにね、4年又は6年、修士2年、医学部は修士課程ありませんけど、区切らないで、連続的な修業の場にできたらいいなと思います。

司会お願いします。

学部3年
医学部の授業のカリキュラムを見てもらったらわかると思うんですけども、詰まっていて、学生としては大変辛いものがあります。本学の方の教養の授業も非常に多いし、こっちの医学系の学問も多いんですけども、ただですね、医学部の内容に関して言うと、全部必修で、選択というのは、ほとんどない形になっていまして、とにかくもうちょっと必要なところをポイントとして教えてくれたり、あと、興味があるところは、興味ある部分で自主的にやれるように、そういうふうに変えて欲しいと思います。

学長
そのね、教養の問題は置いておいて、医学部の専門教育というものは、全部必修になっておるという点はね、僕が軽々なことを言うことは避けるべきだとは思いますけどね。先生方は、人命を扱う医師になるためには、最小限、これだけのことは絶対に身につけておいて欲しいという思いから、構築されておると思うんですよね。それで、本当にそれがそうなのかどうかということは、いつも問うべきだと思うんですね。
もう一つは、僕自身も正直言ってそうですけれども、私達が若い頃に比べると、今の高等学校、近年の特に高等学校を出られた人はね、皆さんはどうか知りませんが、自発的な勉学ということをせんわけですよ。それで、教育する側に不安感を与えるわけね。学生達は放っといても、どんどん勉強するなと思えばね、安心できるわけですよ。そういう不安感もあって、がんじがらめになっているということもあると思います。
それで僕ね、医学部に通用するかどうかは別として、実際に手術をするとか、それから診察をするとか、そういうことは、どれだけ訓練なさってもいいことだと思うけれども、講義とかは、きっかけを与えてやれば、これで学生は十分、自発的に勉強するというような安心感を諸君が先生達に与えてくださったら、先生方も安心してゆとりのあるカリキュラムをお組みになるんじゃないかと思うんです。
そういう点で、やっぱり私が常に言うことは、先ほど、言いましたけれども、学生気質を教育する側が常に把握しておくこと。学生諸君は、大学は4年間ありますけど、医学部では6年、川に例えたら、学生は水のように次から次へとどんどん流れていくから、社会の変化と共に、気質もどんどん変わっていきます。だから、10年前の学生気質に合わせて、カリキュラムが組まれておるというようなことでは、そういう意味でもやっぱりそれは直されるべきだと思います。だから、皆さんもそういうことを常に訴えるべきだと思うんです。それと同時に、きっかけさえ与えてくれたら、あるいは自分で勉強するためには、どういう参考書がいるかとか、どういう書物を読んだらいいかとかいうことさえ教えてくれたら、俺たちは自分で勉強するといったことを学生諸君が感じさせて下されば、変わりますでしょうね。

学部3年
それで、現状としては、4年生頃から勉強会というのを医学部学年全員でグループを作って、自発的に勉強している形を取るのが慣例になっているわけでありまして、6年の最後の方は、授業はなく、自主的に国家試験対策の勉強をするように、というふうなカリキュラムを組まれているんですけど、勉強するという意味では、うちの学部の生徒は、どちらかと言うと優秀で。

学長
あのね、これは僕の提案だけど、例えば輪読会、できるだけ少人数でやった方がいいと思うんですけどね。そういうものでも、先生方に頼んで、「輪読会をやるんだけど、どういう書物が一番いいか、勉強になるか。」ということを聞くべきだと思うんです。それで、そこへ先生を引っ張り込むべきだと思う。聞いておってくれと。それによって、先生方はお気づきになるんですよ。これだけのことをやっていたら、これは単位に認めてもいいかなと。そういう努力もすべきじゃないかな。

学部3年
あまりに忙しくてですね。

学長
あまりにも忙しい? だけどね、どっちかが、そういうのを乗り越えないと良くならんでしょう。

学部3年
はい、学生の質が悪いのか、カリキュラムが忙しいのかわからないですけど、例えば学生が研究室に足を運ぶ姿というのは、あまりないように見受けられるんですけども。

学長
先生方もそうなんですよね。実を言うと。

学部3年
先生方も、やっぱり忙しい感じがしてですね。みんなきついんじゃないかなと思うんですけど。もうちょっとゆとりをもってやっていただければ、うれしいなと。

学長
学生の側に立って見ると、それほどまでにカリキュラムが詰まっておるということだね。児玉先生、その点どうお考えですかね。

児玉副学生委員長
一応、コアカリキュラムというのが導入されるので、カリキュラムを組み直して新しく作ったんですけどね。相当、考慮はしているんですよ。勉強する手順とか、色んなものも含めて。
例えば、組織学を2年の後半に持ってくるとか、あるいは選択科目を増やすとかね、そういうのはやっているんですけどね。教養科目も来年度からは、英語は10単位でいいと。それから線形代数と微積分は、どっちか1つ選択でいいとかね。それから理科の物理とかも2学期のうち、どっちか選択するというような形で、かなり頑張って交渉してですね、上手いこといっているんです。教育委員長の阪口先生などは表彰してやってもらいたい程、努力されている。

学長
あのね、こういう大綱化、いわゆる大学教育の大綱化というのがなされる前は、教養部というのがあって、2年間、医学部の学生もそこにいたわけですよ。その頃の方がもっと詰んでいたんです。専門課程は4年間で、もっと詰んでいたんですよ。今、6年のうち2年間、教養教育という教養部に身を置いてしなくなったわけで、その為に、かつて教養という、一般教養教育の単位をしかるべく取らないと学部に上がれませんよという仕組みになっていた。従来に比べると、それをうんと減らして、それで随分緩やかにしたんです。それで、僕の言いたいのは、皆さんの先輩の方がもっときつかったんです。4年間でビシッとはめられちゃったから。

学部3年
それについて、ちょっと反論してもいいですか。それで2年間の最初の教養は楽で、要するにメリハリがついていたと思うんですよね。最初の2年間は、ゆっくりと、いわゆる大学生活らしい生活を送られて、後の4年間は、もうそれこそ。

学長
僕は、それには反論あるな。だって、私もそういう教養を受けた。なんでこんな意味のない2年間を過ごさなきゃいかんのかと思った。

司会
問題発言?

学部3年
教養部の2年間を取っ払った理由というのは、学生の志気が落ちてしまうからというのがあったんじゃないかなと思っているんですけど。

学長
それと、教養部が無くなった理由というのは、30分ぐらいしゃべらせてくれたら、かなり理解が行くように説明は出来るんだけど、そんなに単純なものではなくて、教養を取っ払って、医学部だったら6年、法学部や理学部だったら4年、そういう大学の期間のうちに、しかるべき教養もちゃんと身についておって、しかるべき専門知識が備わった若者を大学から世に送るというのにね、医学部の場合は、前2年は、教養ばっかり、後ろ4年は専門をやるのではなくて、教養というのは、いつ身につけたっていいわけですよ。大学におる間だったら。4年又は6年の間に、いつでも学べてしかるべきでしょう。授業を通じてではなくても、教養は身に付きますよ。
私は、そういう大学教育の一貫性を考えると、一番大事なポイントはそういうところにあったんではないかなと思っています。ところが、もともと教養部というのがあったわけですよ。そこの先生方は、もっぱら授業に携わっていたんです。研究の時間があまりないもんだから。それを取っ払っちゃって、渾然一体として、全部学部の先生になると言うと、これは、大ざっぱにいうたら、木に竹を継いだみたいなもんですよ。学部の教育体系自身も混乱するわけです。だから、熊本大学の場合は、もう5年ぐらい経過しておるんですけど、そういった混乱期であり、いわばさまざまな問題点が見えつつあるので、それで、いよいよ根本的に教育のあり方を見直さなきゃいかん、という時期には来ていると認識しています。

司会
頼もしい約束が出たところで、他に質問は。

学部4年
色々話が出たんですけれども、大学の先生と学生の関係を医者の世界に例えて話をすると、病院の中の医者が先生方の立場で、病院を訪れる患者さんが学生という立場で、その間に病院の受付が事務の方々に例えられると思ったんですけれども、先ほど、先生がおっしゃった医者も謙虚になって、患者さんのことを考えるべきだと。
今、授業でやっている患者さんの満足感を得るためのいろいろな勉強ということであるんですけれども、医者は、患者さんの満足感を得るために、いろいろコミュニケーション等を続けていかなければならないということを言われているんですけれど、今の学生、いわゆる患者から見た学校としての、いわゆる患者の満足感を教師の方々、事務の方々はどのように考えていらっしゃるのか。

学長
先生方や事務の方々が、どういうふうに考えておるか。学長、代弁して答えよということね。
あのですね、僕だったらという答えしかないんだよね。僕だったら、患者さんに対して、自分を忘れようと努力します。まず人間に習うということを努力したいと思います。自分も病人であるという努力をしたいと思います。そうすることが一番大事なことではなかろうかと、僕は思います。なかなか容易なことじゃないんです。
僕ね、なぜそんなことを言うかというと、今から30年ぐらい前に、ロイヤルソサエティの招待で英国に行きました。着いたその晩に、腎臓結石がボーンと起こってですね、石が落っこちてきて痛くて、石が腎臓の中でね、狭いところにぽつんと落ちたから、そこで動けないようになっちゃったんですよ。それで、友達に電話を掛けて、助けを呼んで、大学病院に連れて行ってもらいました。お医者さんは、すごく親切に問診してくれたんだけど、英語で答えなきゃいかんでしょう。日本語だとね、ズキズキ痛むとかね。という色んな表現があるんだけど、英語でそれ表現できないわけよ。それでも必死になってどういうふうに痛むか、how to painとか聞いてくれるんです。全然答えられない。痛くなった時の状態を説明しなさい。twist確かにこうやった記憶があるから、それがtwistだったと言って、そのやってみるがそうでもない。結局1時間ぐらいあれこれ言って、stoneかもしれないなと。ものすごく嬉しかったです。
今ね、大学病院も含め、色んな病院も含めて、非常に深刻なんです。患者さんと接するそういう時間がないんですね。今、コンピュータ化されて、そういう点でも、それから色んな機械化がされておりますから、ますます患者さんが色んな診療器具の間に埋まった状態で診られるということだけ考えてもね、何か工場で治療を受けているような気になるわけですよ。だから、なおのこと、自分はお医者さんという人に診られておるんだという雰囲気を創ってあげることが、僕は一番大事だと思います。それを感じられたら、患者さんは絶対感謝しますよ。医者を信頼してくれると信じて疑わない。今はこういう時代だからこそ。

熊本大学医学部附属病院で、今、医療訴訟がワースト5の中に入っております。6件抱えております。裁判になった報告書を文部科学省に送るんですが、これ決裁してくれと言われた時に、僕は隅から隅まで読みます。実は、私は医者ではありませんけれども、ほとんど場合、ミスとか事故なんか起こってないんです。患者さんと最初のところで失敗が起こっておるんです。患者さんは、自分の病状が良くなれば満足し、たとえ初期段階で何か不愉快なことがあっても忘れてくれるんです。しかし、一向に良くならない場合は、不信感を戻していくわけです。
だから僕は読みながら、こんな大事な時に、どうしてもっと責任のある先生が対応してくれんかったのかなと思っていますよ。そういう時にはしばしば研修医とかの未熟な人たちが接触していて、患者さんに充分な対応ができていないのです。

司会
少し、本題に外れたようなんですけれども、今の質問というのは、つまり教授方が、生徒の立場になって考えることが大事ということで、学長は答えられたんですか、今は。

学長
いや、それはもう先生も学生も、患者に接する心、接し方というのは、非常に重要だから、そういう教育について、どう考えられますかということが、質問の意味だと思いましたけども、違っているのかな。

学部4年
そうですね。

司会
それでいいんですかね。質問の意味は。

学長
ごまかされちゃったかな。

学部2年
さっき教養の話が出たんですけど、教養の授業をされる先生方の中で、例えば教科書をただ板書して、授業をする先生が何人かいるんですけど、そういう場合、例えば、学生側が先生達の評価をして、それを大学側から教職員の査定とか評価の対象にするという動きとか、そういうのは。

学長
それをね、絶対しなきゃいかんと思います。今、必死になって準備をしていただいております。従来のアンケートなんかも、僕はずっと見ているんですけれども、あれじゃ不十分ですから、要するに、どういう項目を学生諸君に問うべきか。
例えば、A先生の講義を聞いた。授業に出て、あなたは、「この講義は自分にとって意味がないと思いましたか。」イエス・ノーで答えなさい。あるいは、第2問。「あなたは、この時間の講義に出て、自分で勉強する気が起きてきましたか。」というのを、50問ぐらい精査して、問うべきだなと思っております。イエス・ノーで答えたらいいんですよ。そういうのを作ってアンケートをするとちゃんと数字で出るはずです。そういうのを、FD、ファカルティ・ディベロップメントというような活動で、是非やって欲しいと、良永先生にお願いしておるところでございます。
それとね、黒板の方ばかり向いて、学生諸君がどういう反応しておるかというのは、ほとんど気にとめないで、ひたすらむにゃむにゃとしゃべっておる先生もおられるでしょう。そういう人は、本当は早く去って欲しいと僕は思います。だけど、あなたやめとけというわけにいかんでしょう。僕にそんな権利ないし。

司会
権利はないですか。

学長
ありません。

司会
誰がそういう権利があるんですか。

学長
国家公務員ですから。他の先生方が頑張ってくれて、お互い戒め合う。そして、そういう先生が安心してお辞めになるまで、それは待たなしゃあないなと思って。

学部3年
学長の権限というのは。

学長
人事権は持っていませんよ。

司会
そうなんですか。

学長
国家公務員はね、今、ちょっと児玉先生がおっしゃったように、罪悪を起こさない限り、辞めさせることはできないですよ。

副学長
少し、補足します。学長の立場でお話になりましたけれども、教育責任は、第一義的には各学部が握っています。だから、今は本学でまだ現実に実施されていないと思いますけれども、将来、あり得ることとしては、学部がその学生に対して、教育責任を持っているということは、学部の責任、最終責任者である学部の長が、問題のある授業をしている先生がおられれば、呼んで指導をするということまでは、私は可能だと思っております。本学は、今はまだそこまで行っていません。それが可能かどうか。私は可能だと思うけども、これも教員とか、組織の意識改革がいるので、今すぐ、さあ来年度からというわけにはいかないかもしれないけれども、そういうことはあり得ると思っております。その程度で首を切るのは難しい。国家公務員法違反や職務専念義務違反をやれば、それは首になりますけども、授業のやり方が下手だということだけで首切るのは難しいと思います。

司会
次の方、どうぞ。

学部4年
今、答えていただいたので、査定をしてもどれぐらいのことが出来るのかということを質問したいと思っていましたので、今の答えで。

学長
あえて言わせていただきますが、医学部は、20数年前に人事について相当思い切ったことをなさったんです。大学というところは、すべからく人であるということで、教授人事を非常に一生懸命なさっています。熊本大学のすべての学部が、医学部のようにシリアスにいい人事をなさっておったら、大学は全体としてより良く変わっていただろうと思います。
だけどね、私は、熊本大学に来るまでに、名古屋大学を卒業して、京都大学で教鞭をとって、再び名古屋大学に戻って、岡崎国立共同研究機構の研究所で長いこと、13年ほど過ごしてここに来ましたけれども、どこの大学だってそういうのは大同小異です。
だからこれから大事なことは、いかにして本当に大学のプロフェッサーという、名実共に評価の出来る先生方を、人選していくかということが極めて重要である。それは、そういうことにも実は学長というのは、口を出せなかった。
だから、私はある学部に、せめて教授を選考されるときには、選考委員に他学部のしかるべき専門家、いらっしゃるはずだから、委員として加えていただくとか、願うことなら他大学からも加えていただくということを具体的にお願いしたこともあります。それで、2、3人の候補者に絞られた段階で、是非、セミナーを開いていただく。それが実現して、それで非常にいい選考が成立したことも経験がございます。今後は、この人は駄目だということは言うべきではありませんが、学長は、今、僕が言ったような意味で、選考委員会一つ作るのでも、本当に目利きのある委員を学部内だけでクローズになさらないで、他の学部のしかるべき専門家も入れて、場合によっては学外からも委員を求めて、やっていただけませんかということは、要望できると思います。

司会
今後の、学長、先生方を始めとする方々の働きに注目して、期待して行きたいと思います。時間が詰まってきましたので、そろそろ終わりにしたいと思いますけれども、学長は、何か、人という言葉を何回も出されたようでして、僕個人としては、これを医学生を始めとして、学生というのは、倫理が重要だとか、そういうふうにいろいろ感じたわけですけれども、なかなか面白い話し合いが出来たと思います。今日出た意見が、学長のお考えに反映されることを信じて閉会にしたいと思います。

学長
はいどうも、今日は、厳しい質問を受けましたが、自分としては、なかなかよう知っとると思っておるんですよ。

司会
医学部には、自治組織である学生会というものもありまして、会長も来ておりますが、できるだけ学生と学長などの橋渡しをして行きたいと思います。

学長
私もそれを強く望みます。

司会
いろいろお世話になると思いますが、よろしくお願いします。

学長それでね、最初にも希望しましたけど、今日の会がそれなりの成果が上がったなら、もうちょっと突っ込んで話し合いをしてみたいなということがありましたら、連絡を下さい。

副学長
私が連絡方法をお知らせします。

学長
学生委員の先生に、そこが一番早い。

司会
学生委員の先生を通さないで、直接行きたいんですけども。

副学長
直接行かれると、会えない可能性がある。学長も過密スケジュールで動いているのでね。

学長
僕が、いきなり来てもいなかったら、無駄足踏むことになるので。秘書室にでも。

副学長
だから、どこだったら会えるか、時間調整がやっぱりいると思うよね。

学部4年
そのために、SOSEKIの面会予約システムというのがあるんじゃないですか。

副学長
あれは、あまり働いてないんですね。

司会
むしろもっと簡単にメールのアドレスなんかを教えていただければ。

学長
面会予約システムというのがあるの。それは、僕の責任でもあるので言うときますよ。メールアドレスは、正直言うと私は自分で打たない。それでも、メールを入れてくれたらすぐ返事します。

副学長
それで、もう一つルートがある。それは副学長室に頼んでも構いません。調整できる。それから、ここに学生課の職員の方がいらっしゃいますので、学生部という事務の部署、そこの中に学生課というところがある。そこの内線番号はわかると思うが、そこに連絡取ってくれれば、必ず調整のための労をとってくれると思います。何のために会うのかとか、そういうことはたぶん聞かないと思います。会いたいと言えば、熊大の学生であれば、学長は会うとおっしゃっているので。事務的に、途中でいろいろチェックを入れることはない。

学長
熊本大学の教職員、学生諸君が、電話なり何かしたときには、直接でも要件を聞かずに取り次ぎなさいということにしておりますから。ただね、これだけはご理解下さい。これは医学部の先生方に、コンタクトするときにも、忙しいから次にしてくれと、いらっしゃらない時も、それでも、つかまるまでつかまえる努力をしてください。飽きないで。それで、僕も、それをお願いします。学長はああいうこと言うとるけど、全然会えないんじゃないか、ということは、口だけで、そういう気がないんだということは、絶対思わないで下さい。僕は忙しいと言うことは大嫌いです。人から、「学長は忙しいなあ」と言われると、「それはいやです。」と言います。それほど、僕、大嫌い、携帯電話もたされるのもね、どうぞその辺だけご理解下さい。
今日は、有り難うございました。

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