学長と学生との懇談会(薬学部・薬学研究科)

日時 平成13年9月27日(木)12:00~13:00 20011112.jpg
場所 薬学部会議室
出席者 江口学長、良永副学長、野原学生部委員会委員
参加学生 学部学生 28名・大学院学生 3名
陪席者 薬学部教職員 3名、学生部 3名


司会
(=学部3年:薬学部学生自治会)これから、学長との懇談会を行いたいと思います。今回、司会という役目を任されました笹川です。こういうふうな場での司会は初めてで、不慣れな点も多いですが、どうぞよろしくお願いします。今日はリラックスしていきましょう。
まず初めに、学長から今日の懇談会について、一言よろしくお願いします。

学長
皆さん、こんにちは。食事、食べたらどうですか。こういう会議形式になっていると食べにくいですね。こういう会を是非作って欲しいとお願いしたのは、私でございます。僕の思いとしては、こういうきちっと机を並べてというものではなく、いわば車座みたいな雰囲気で、私に対して、日頃皆さんが大学というのはこうあって欲しいとか、授業はこういう点が不満だとか、学生の環境は、こういう点で悪いとか、そういうことを聞けたらと思っていました。
実は私が5年前に赴任した時に、そういうことを学生部に申し上げ、当時の学生部委員で法学部の篠倉先生という、大変学生のことに熱心な先生が私の願いを聞き、平成9年の春に、各学部から大学院の学生も含めて学生を選んでくださって、黒髪地区のくすの木会館の一室で夕飯を食べながら3時間ぐらい懇談したことがありました。これは非常にいいことだということで、是非、こういう会を続けて欲しいと申し上げたんです。 ところが夕食を食べながらというと、お金がかかる。そういうことのために学生諸君の食事を大学から出すということは、予算がありませんから非常に難しいんです。だから、学生諸君に食事代を払っていただくことになり、学生諸君の負担にもなります。
そのようなこともあって、1回で途切れました。それで去年の夏に、何とか経費がかからない方法で、もう1度考えて欲しいと学生部に依頼して、こういうことになりました。文学部から始まって、法学部、理学部それから薬学部です。皆さんの講義もあり、時間に制約があるので、今日は1時間、皆さんの色んなことを聞いて、僕の考え方を申し上げて、意味があると思われたら、今後は適宜、私の体が空いている時間に、いつでも気軽にこのようなことが行えるきっかけになったらいいなと思っております。以上です。

司会有り難うございました。

副学長
私は、副学長の良永と言います。江口学長を助けて仕事をしております。
江口先生から、学長と学生さんと直接話す機会が欲しいという話がありました。大学に学生部委員会という、皆さんの学生生活がどうしたら良くなるかということをいつも話し合っている先生達の会議があります。そこで、具体的な企画立案をしたわけです。私は、その会議の委員長でもありました。
本日は学長に、日頃思っていること、聞きたいことを、自由にどんどんぶつけてください。難しく考えないで結構です。非常に盛り上がる話し合いになれば良いと思っております。それから、こちらの3人の方は、学生部の方で学生の皆さんの色んなお世話、面倒を見るために、日頃仕事をしていただいております。今日は、記録ということで陪席しております。以上でございます。後はリラックスして話をしてください。

司会
それでは次に進みたいと思います。学長への質問がある方は、挙手をして、名前と学年を言って質問をしてください。何か質問のある方はいらっしゃいませんか。どうぞ挙手を。

学長
こういう時には、司会が口火を切ると、ああいう事だって聞けるかなということになる。そうすると割とみんな聞く気になる。

司会
(学部3年)
では、まず質問をしたいと思います。
江口先生は、薬学部の庄司先生と仲がよいという話を聞いたことがあるんですけれども、どういうご関係があるんでしょうか。

学長
僕は、いろいろな先生とも仲が良いし、他に仲の良い先生はたくさんいます。
庄司先生はどう思っているか知りませんけど、出会いは、私が学長になることが決まりました平成8年10月中旬頃に、医学部と薬学部がオーガナイズしている生物化学シンポジウムがあって、そこで講演をして欲しいという依頼がありました。それは、学長の辞令を受け取る前だったと思います。熊本で、前の学長さんと、引継をするのを契機に講演をして欲しいということでした。
庄司先生は、おそらく私の研究をよくご存じだったと思います。講演後、とある酒場で懇親会みたいなことをやって、それがきっかけでずっと親しくなりました。私は、庄司先生を知らなかったが、庄司先生は、僕の研究はよく知っていらっしゃった。それで生の話を聞いたら、「論文なんか読むより遙かにいい研究をしておられるということがよくわかりました。」と言って、その後、是非、薬学部の薬学概論で最初に新入生の皆さんに1回でいいから講義をして欲しい。大学院の学生に1回でいいから、研究というのは、どういうものかというような話をして欲しいということでつながってきたということです。

司会
有り難うございました。それでは、他に質問のある方、いらっしゃいませんか。

研究科1年(博士)
ときおり、研究の関係で医学部に行くのですが、その時、医学部はどんどん新しい建物ができているのを目にします。そこで、平成10年に新設された臨床薬学専攻の研究棟は、いったいいつ頃建つのだろうかと、常々考えているんですけれども。

学長
わかりました。いつ頃と言われると、そう簡単には建ちません。
医学部は新しく建っているのに、何故新しい臨床薬学専攻というのができたのに建たないのかと言われると、医学部ばっかりが得をしているというふうに思われがちですが、医学部附属病院をご覧になったことがありますか。病院の食堂なんか見に行くと、一番下にあって、設備面でもひどいところがあります。
大学全体として、何を最初に片づけて行くべきかということを、いつも頭においています。それで、病院の再開発がやっと一昨年から始まり、予定では12年かかります。一方、確かに医学部地区には、新しくできた動物資源開発研究センターや、エイズ学研究センターの建物が出来上がりました。
事情をよく知らないと、どうして最近できた組織の建物が、あんなに簡単に建つのだろうかと思われがちですけど、大学の建物というのは、熊本大学の再開発、病院だけで500億円ぐらいかかります。現在、再開発を42の国立大学の附属病院が、古い建物を建て直しをしています。そうすると、文部科学省が持っている施設整備の年間予算ではとてもできず、借金をします。病院の建物は、全て国が借金をして建設しています。
何故、病院の建物は借金で建つかというと、病院収入というのがあり、返済が可能であるとの判断で借金ができる。それ以外の校舎などは、返済の目途がないので借金で建てるわけにはいかない。そうすると、施設整備費という文部科学省の年間予算で建設するしかなくなる。国が景気のいいときは3,000億円ぐらい予算があったんですけど、今は、7~800億円しかないんです。それを99の国立大学に、公平になるように配分して建てている。
そうしたら、20億円も30億円もかかる医学部の新しい建物がどうして建ったかというと、補正予算というのがあるからです。補正予算は、景気とか失業とかの問題を調整するために臨時に立てられる予算で、これには条件があるんです。だいたい古い校舎の建て替えは、補正予算から除外されます。順番から言うと、まだ待っておられる学部、校舎が古くなっているのがあっても、順番を飛び越えてもやっぱり新しく建てた方がいいと当然なります。
熊本大学は、そういう努力もして、補正予算を獲得するということで、あのような新しいものが建つという事情です。強く要求はしているけれども、大学院の充実を政府も言っており、今後10年位の間に、大学の建物を1兆6,000億円かけて、格段に整備をしようということも決まっております。いずれ建つと思いますが、あなたの在籍中にそれが実現するかどうかということはお約束できません。

司会
それでは、他に質問のある方、いらっしゃいませんか。はい、どうぞ。

学部3年
薬学部で自治会をしているんですけども、自治会の活動の場となる自治会室というのが、うちの学部には無いんです。それで、パソコン室や蕃滋館でいつも活動をしているんですけど、何とかして、自治会室等が設置できるような予算を。

学長
簡単に言うと自治会費を大学から出してほしいということなの。自治会費を学生諸君から集めるような手だてを講じてほしいとおっしゃるのか、自治会活動のために、大学に予算をくれとおっしゃるのか。はっきり言って下さい。それによって答えが変わってきますから。

学部3年
予算を下さい。

学長
自治会活動のサポートを大学の方で何とかする気はないかということなら、そうしたら自治会活動でなくなりますね。
大学には、学生諸君が100%自治で行う活動についての予算はありません。学生部には課外活動の予算はあります。それは、学生諸君の色んな希望も聞いて、実行していきます。それもそんなにたくさんあるわけでなく、何とか将来的に増やしていきたいと思っています。学生の自治活動というのは、100%学生が行う活動だから自治活動と言うんでしょう。それは学生諸君が拠金をして自治活動をすべきだと思います。
だけど、学生諸君がしっかりとそういう自治活動をおやりになるんだったら、しかるべき場は用意すべきであると僕は思っています。それは皆さんが、いかなる自治活動を展開するかにかかっている。学部長先生に折衝して、今の大学の状況や新しい専攻ができている科もあり、どんどん薬学部も手狭になっている。
そういう状況で、学生諸君が自主的に非常にいい活動をやるということであれば、薬学部長の先生だって何とか智恵を絞って1室ぐらい使えるようにしてくださるかもしれません。それは学生諸君の努力だと思います。それでいいですか。
もうちょっと付け加えておくと、自治活動で下手に国からお金をもらったら自主でなくなる。自治活動というのは、すべて自らやるものだからです。ついでに言っておくと、日本のボランティア活動も、僕は非常におかしいと思うことがあります。あれも100%犠牲的精神で、誰の援助もなしにやるのが、真の活動であると思います。

司会
それでは他に意見のある方、いらっしゃいませんか。

学部4年
先日新聞の読者投稿欄というところを読んだんですけれども、その方は薬学部卒業の方で、今の薬学部の臨床教育についてのあり方の是非を問われていらっしゃたんですけども、その方がおっしゃるには、今、薬学部は、薬剤師として働くというよりも、どっちかと言うと研究者を育てようという学問なんです。 4年で卒業して、薬剤師として働こうという方もたくさんいます。その時になって、今の薬学部の教育方針では、全く役に立たないというのが多い。
その読者の方も、自分が卒業した時は、いつ薬を失敗してしまうんだろうとかいうので、冷や冷やしながらやっていたということが新聞の読者投稿欄に載っていました。その方の娘さんも薬学部の卒業生で当時の授業内容などを聞いてみると、やっぱり自分の時と変わっていないと投稿されていたんですけれども、今の薬学部の臨床教育とか、教育内容についての先生のお考えを聞かせてください。

学長
それは、非常に答えるのが難しいですね。
僕は、正直言って、具体的にシラバスなどは詳しくないです。薬剤師として大学4年を終わったらすぐ役に立つというふうに教育をするのには、どうしたらいいかというようなことは、専門家じゃありませんから僕には答えられない。
だけど、医者でも6年を終えて国家試験に通ったら、表面上は医者にはなるんだけども、やっぱり不安です。 4年の期間に薬学をここで習って、それで国家試験を受け、合格すると名実ともに薬剤師ですよね。それで、誰からも安心されるような薬剤師になっているなんてことは、僕はあり得ないと思う。色んな経験がいるのと違いますか。
その読者の方の真意は、僕はそれを読んでいませんので、よくわからないんだけど、本当に薬学部の教育内容がよくないのであったら、絶対直さないといけない。そんなに悪くないんだけど、学生諸君の対応が間違っているということだってあると、僕は思う。半分ぐらいは期待が大き過ぎたのではないですか。
皆さん、よく考えてください。4年間で教養を身につけて、それで薬の調剤などというようなことをすべて身につけて、薬剤師になる自信がありますか。そんなことありえない。もっともっと謙虚になって、国家試験に合格して、薬剤師になっても、これで一人前だと思わないことが第一です。これからだと思うようにすることです。そうすると授業に対する対応も全然違ってきます。
この頃の若い人たちは、授業に対して非常に受け身になっている。知識を何としてもむしり取って行こうというアクティブな対応が欠けている。そういうのに欠けていればいるほど、身に付かない。それが僕の答えです。
今の質問は非常に大事なことだから、これは直接薬学部の先生方に突きつけてください。教務委員長の先生に、「こういう新聞読まれましたか。先生、どう思われますか。」というような質問を始めてくれませんか。僕も「こういう話を聞いたけど、どうなっているんですか。そのうちに学生諸君が聞きにくるから、きっちり対応して欲しい。」ということを言っておきます。常日頃そういうことは、すべきなんです。あなた達はそういう権利を持っているんですよ。「ある先生の講義を聴いていても、眠くなるだけだ。どうなっている。」ということを言う権利がある。そういうことは、ほっといてはいけない。以上です。

司会
有り難うございました。他に何か。どうぞ。

学部3年
私たちにはもうあんまり関わりがないんですが、大学教育研究センターとか改修があって、熊大の中は、私たちが入学した頃に比べるとすごくきれいで、華やかになったイメージがあります。でも私たちは、薬学部にいるせいか、何か本学とちょっと距離を感じています。医学部も離れているんですけれども、医学部は、附属の病院も大きくて、それで設備もいいですけど、私たちは道の奥のところで、校舎なども奥まって、地味なイメージがあるんですが、先生としてはどうでしょうか。

学長
わかりました。ぽつんとおかれて何か、こう寂しいのね。
嘘か本当か知らないけど、聞くところによると、かつて薬学部は、100年以上の歴史と伝統があるので、独立独歩で行きたいという考え方が非常に強かったんだそうです。
それで、もしそういうことがあったとしたら、多少ともキャンパスが離れていますから、大学全体のことに先生方の取り組みが希薄であったかもしれない。そうすると、アイソレーションが当然起こります。今は全然そういうことはないのです。だけど僕は、この薬学部、ものすごく素敵なキャンパスだと思いますよ。
東大では教職員、学部・大学院学生数合わせると、4~5万人になるんです。あんな化け物みたいな大学になると、どこで何が起こっているか、学長さんにもわからない。熊本大学の規模だと、キャンパスは3つに分かれているけれども、全部わかります。だから僕は、これ以上、大学の規模が大きくならない方がいいと思います。
ケンブリッジとかオックスフォード大学というのは、大きくてもせいぜい熊本大学ぐらいで、小さかったら、まさに薬学部ぐらいのカレッジとか大学が集まっていて、オックスフォードの場合は30以上もの大学の集合体なんです。それで1つずつ名前が付いていますよ。どの大学に属しても、オックスフォード大学卒業となる。数多くの大学の集合体で名実ともに総長さんがいらっしゃって、すべての大学に1人学長がいる。そういうことだからユニバーシティなんです。
日本の大学は、東大が規模からして一番大きくて古いんだけど、そういう大学ではありませんね。真のユニバーシティではないわけです。だから、そういうふうに思わないで、ここは古き良きキャンバスだから、熊本の学問とか芸術とか文化を栄えさせようと思ったら、やっぱり熊本大学のいいキャンパスが散在していた方が有利に働くとも思います。町と溶けあったユニークなものを目指したら、寂しがることもないし、ここは良いところだと思うよ。たくさん木が生えているし、そういうふうに思います。
建物というのは、古ければ古いほど値打ちがでてくるんです。ピカピカの建物では、落ちついて勉強なんてできない。薬学部を、遠いからほっとけなんて、1日たりとも思ったことはない。私が一番よく来て、講義するのはここだけですよ。決してアイソレートされているなんて思わんで欲しい。絶対、良くなっていくと信じて、誇りに思っていいキャンパスづくりを学生諸君自らして欲しいと思います。そういう思いで先生方を動かしてください。学生諸君が先生方の尻をたたいてください。答えになっているかどうかわかりませんが。

司会
はい、有り難うございました。それでは、はいどうぞ。

学部3年
僕は今、自治会の会長をしているんですけど、改めて痛感したのは、人の上に立つということで、今の僕たちを引っ張るのは難しいです。この前も薬学展での学園祭の係り決めをしたんですが、うちの学年だけなのかもしれませんけど、まとまりがなかったんです。人の上に立つ学長の立場として、上に立つときの心構えというか、注意すべき点を教えていただけますか。

学長
ほう、厳しいことを。
寂しい思いに絶えられない人は、リーダーには向かないと思います。 いつも仲良くしようなんて思わないことです。批判されて当たり前です。自分の考えを何とかして実現しようと思ったら、半分以上は反対する人がいると思っていたほうがいいね。だって、人はそれぞれ考え方が違うでしょう。
それと結論を急がず、容易には決心しないことです。僕、今までずっと教授職をやっていた時に、何人か指導しましたけど、日本人は簡単に決心をしすぎる。決心は一生に1~2度で結構です。決心をしたら、それを訂正するのに悩まないといけないので大変でしょう。決心はできるだけ後回しにして、もう少し野放図にしてたほうがいいんです。
そして批判を恐れてはいけない。それと非常に大事なことは、絶対に公正で非情であることです。その点は、夏目漱石に見習ってください。夏目漱石の一番の言いたかったことは、“情に棹差せば流される”、則天去私という考えを小説の中に主張したんです。非情であって、不情でないですよ。そういうことは、非常に大事だと思います。
僕は、若い頃にスポーツのキャプテンもやっており、その頃から、キャプテンというのは寂しいものだなと、つくづく思っていました。毎日毎日一生懸命練習する人、練習をよくサボっている人、どっちを試合に出すかというときに悩みます。だけど、スポーツは競技ですから、勝たなかったら意味がない。サボっているけれども、この選手を出したら、今度の試合は勝てると思ったらその人を選びます。そうすると、練習をこつこつやっていた人をないがしろにすることになります。そういう決断もリーダーには迫られるわけでしょう。だから寂しいもんですよ。
それと助けはあまり求めてはいけない。だから僕、良永先生には涙が出るぐらいものすごく感謝しています。

司会
有り難うございました。会長、参考になりましたか。これから、薬学展など、いろいろ忙しいと思いますが、頑張ってください。それでは、他に質問がありませんか。どうぞ。

学部3年
先生は、今日は正門から入られましたか。たぶん、正門から入ればわかると思うんですけど、非常にオープンになっています。そのお陰で外部からの違法駐車や、バイクの部品を捕られたとか、車が傷つけられたとか、よくあるんです。本学では、そういうことに対して、どういうふうな対応をなさっているんですか。

学長
それは非常にシリアスに、今、取り組んでいるんです。
だけど、黒髪キャンパスでは、怪しげな人が来て痴漢を働いたり、大学の学生が数人の若者に取り囲まれて、なぐられて、懐中のものを盗られたということが発生している。そういうことは、簡単に門を閉ざしたら防げるのか。どういう人たちがそういうことをするのか。色んなことを調査した上で、適切な対応をしなければいけないのですけど、悩んでいるんです。
大学というのは、本来、常に門が夜になったら閉ざされるというものであってはいかんわけです。オープンであって、外からも人が出入りでき、尚かつ極めて安全であるということが、本当は理想的なキャンパスの姿だと思うので、そういうことを両立させるために、何をすべきかと悩んでいます。
ちょっとおかしくなった人が、小学校でナイフを振りかざして何人かのいたいけな小学生を殺すという、非常に不幸なことが起こりましたね。ああいうことに通じることが起こっているのです。これは個々の大学だけで解決できないなと思いながら、僕自身、非常に頭を痛めております。

副学長
学長が、私の顔を見ておっしゃるので。
この問題は、学生部委員会で検討しています。ただ決定打がないというのが、正直なところです。
完全に外部から入ってくる方を遮断できるかというと、今、学長がおっしゃったように大学というのは、なるべくオープンでありたいという気持ちがあるので、全部、門を閉ざし有刺鉄線を張り巡らそうとか、ちょっと考えにくいですね。だから基本的にはオープンな形において、かつどうしたら安全であり得るかということだと思うんです。
あなたが言った話題と少し違いますけれども、ここも女子学生の諸君が随分いますが、最近、痴漢の問題を心配しています。あちこちで私の耳に報告が届いたり、連絡があったりします。これは基本的には、自分の身は自分で守っていただきたいと思っています。
例えば、痴漢にあった場合、ただびっくりしただけじゃなく、相手の人相、風体、バイクに乗っていたらバイクのナンバープレートを控えるとか、その他、何か特色のあるものを全部記憶してメモしておくこと。それを警察にすぐ届けていただきたいということと、もう1つは、大学の薬学部だったら教務企画係でもいいし、あるいは先生にでもいいので、直ちに届けていただきたいということです。
私たちとしても、夜間の照明を改善し暗いところを無くすとか、被害にあった場合はどうしたらいいかとか、あるいは掲示を出したりしていますけれども、基本的に自分の身は自分で守っていただきたい。 盗難は、これは基本的にはどろぼうをつかまえないとしょうがないので、警察に届けるということだと思います。
オープンでありたいということと、安全を確保したいということを両方両立するにはどうしたらいいか、こうしたら完全に無くなりますよということはありません。ですから、各自が身の安全とか、財産の保全には努めていただきたい。大学としてできるだけのことは、今やるようにしていますけれども、24時間警備体制をとるというのも、なかなか難しいのです。

学長
それと、もう1つ、僕はよそから来たから、時々、今からお話するようなことを言うのかもしれないけど、熊本大学というのは、痩せても枯れても熊本の人にとっては、非常に良い大学なんです。熊大というとある種の土地の誇りでもあるんです。そういうことがかえって、熊本大学の大学人をえてして傲慢に変え、謙虚さを無くせしめるというふうな部分に働いているのではないかと思います。 大学に門が開いているからと言って入ってきて、いたずらをするという人の中には、熊本大学に対して誤った反感を持った人もゼロとは言えない。
大学というところは、熊本も特別なところではないんです。いい意味で社会にちゃんと開かれている学びの舎に過ぎないんです。そこにいる人々はすべて非常に謙虚で、人々のことをいつも大事に考えているということを、熊本の人々が認識してくれたら、随分とそういうことは減ると思うんですけどね。
例えば、大学の先生方と一緒に飲みに行くと、僕はいつも飲み屋で絶対に学長だということは言わないで欲しい。「学長を連れてきた。」と言うなと言うんです。そう言ってもおっしゃるんです。そうすると店の態度がガラッと変わります。それは、熊大の先生にとっても決して良くない。
人の職業に貴賤がないということを知っているでしょう。どんな職業に携わっておろうと、卑しさ、尊さはないんです。それはどっからきているかというと、あれはキリストの信仰から来ているんです。
ドイツ語では、職業のことをベルーフと言います。英語に直すとビリーフですけど、英語のビリーフには職業という概念が今日ではほとんど失せているが、ドイツ語にはきっちり残っている。ベルーフというのはまさに“信仰”ということです。“召命”ということです。
だからキリスト教の国、特にそういうことがわかっているヨーロッパの人々、アメリカの人々は、職業に対してどういうふうに思っているか、例えば、皆さんはこれから4年間大学で勉強して薬剤師になったりされるでしょうけれども、それは自分で選んだわけですね。ところが自分で選んだ職業であっても、自分で選んだものではなくても、与えられたもんだという認識を持ちます。それで天職です。 そういう思いがあると、自分は大臣になったら偉いんだ、自分は大学の教授になったから偉いんだとか、絶対に思わない。
そういうことが、雰囲気として大学に充ち満ちていたら、熊本の人々が、熊大の人たちは本当に謙虚ですばらしいと、そういうことになって本当に僕は大事にしてくださるんじゃないかと思います。そうすると少なくとも、大学に対して誤った思いや反感を持った人の暴力は防げるということを、一言付け加えておきます。

司会
有り難うございました。他にありませんか。ないようでしたら、少し趣向を変えて、学長から薬学部の学生に何か聞きたいこととか、質問したいことなどがあれば。

学長
あと15分あるけど。全然考えてこなかったが、授業は大半、満足できますか。そうではありませんか。50%以上の授業は、大変よろしいか?という質問です。自分が出た5割以上の授業に、今、満足しているかどうか。 満足している人。全然、いないんですか。これはえらいことで、では3割方は満足しているという人。ほう、そうすると、総じて不満足だと思っている人。
はい、そうすると僕の診断では、薬学部の授業は学生諸君に満足を与えていないようですね。先生方に遠慮することはありませんよ。ではどういう点が不満か、誰でもいいから教えてください。例えば量が多すぎるとか、理解がし難いとか何でもいいですよ。もうちょっと惹きつけられると思っていたのにちっともその惹きつけられるところがなくて、パッションが湧いてこないということでもいいですよ、何となく不満なんですか。一番深刻ですね。

学部4年
先ほど言ったんですけど、僕が薬学部に入ってきた当初は、漠然としてて、研究をやりたいということもあったんですけども、いつかは薬剤師として働くだろうと思っているんです。
薬剤師になるためには、必ず薬学部を出なきゃいけないわけじゃないですか。国家試験を受けるためにも。だから、勉強は勿論のこと、薬剤師としての心構えとか、臨床での人との触れ合いとかも学べるのかと正直に言って思っていました。
今、僕ら3年生、4年生以上は旧カリキュラムで、2年生から下は新カリキュラムに変わって、少し授業の内容も変わってきてはいるんですけど、自分達の時は、自分が思っていたことよりも、むしろ知識、化学的知識であったり、そういうのに偏っていたように自分は思います。

学長
それは私なりに、言い換えると、例えば、薬剤師を目指す学生にとっては、教育内容が実践的でなさ過ぎるということでいいのかな。

学部4年
薬学部と言うよりは、化学部に近いと思われます。

学長
例えば、薬学の研究者になるには、そういう対応が必ずしも十分でない、学生が何を目指すかについて、もう少し推敲された教育内容であるべきだということですか。
それは、どの学部にも言えることでありまして、それをクリアする1つの方法は、やっぱりインターンシップを積極的に使うことです。
例えば、薬学部を出て、薬剤師になって活躍するという場合の実践は、大きな病院の薬局に1カ月ぐらい出向いて、日常、どういうふうにして練達の薬剤師が患者さんと接して調剤がなされるか、というようなことを取り入れたら随分解決できますよね。
大学では、そういうことは実際になかなかできないんですよね。だからインターンシップというのは、大変大きなメリットがある。
もう1つ、先生方の弁護をするわけではありませんけど、本来、大学というのは、職業人を育てるというよりも、研究者を育てるという面が大きかったんです。思想をしっかりと構築できる人間、あるいは深く深く専門を極める人間を育てるというところがまだ残っているんですよね。
ところが、現在の若者というのは、大学の門戸が大変に広がったから、むしろ早く大学を出て、一人前の社会人になって、自分に向いた職業に携わって活躍したいというような人の方が非常に多いわけですよ。
そういう人のために、やっぱり教育内容がフィットしていないというように僕には聞こえます。それは薬学部に限らず、すべての学部に言えることなので、良永先生や私も含めて、今、急いでしなければならないこととして、教育の体系の作り直しを一番大きな問題として取り組んでおります。

野原学生部委員
学生委員の野原ですが、何も反論するわけじゃないですけど、皆さん達、もう十分に今の教育についておわかりになっておられると思いますが、要するに薬学は、今の大学院を見てもわかりますように、独立専攻で両翼ありまして、臨床薬学といわゆる創薬科学というものです。
薬を正しく使う薬剤師の側は、ちょうど質問された方、非常に意見が似通っているんですけども。我々は二方向を目指しているんです。薬剤師だけの教育じゃない。一番最初に言いましたように、独立専攻のジェット機の両翼のようにあるわけです。
本学は理想的なもので臨床薬学ともう一つ忘れていけないのは、創薬というものです。なかなか最近では企業は採用してくれませんけれども、創薬という領域があるから、非常に広範囲に生物、化学、物理を勉強しなければいけないんです。それは、基礎の学問であって、即、臨床薬学に、薬剤師サイドに結びつくものではないですよね。
ただ我々は、いつも心しておかなければいけないのは、21世紀の産業は創薬とも言われております。1つの小さい薬の中に知識を集約させて、日本が発展する1つの大きな道だと思います。創薬を目指す、そして本学部は、今までにそういった大先輩がいろいろ薬を実際に作られているんです。
そういう意味で、基礎の部分における化学とか物理が必要になってくる。薬学は薬剤師だけじゃない、薬を作るという部分があるということは、今さら言うことじゃございませんけれども、申し添えておきます。

学長
有り難うございました。野原先生がおっしゃったことは、僕は非常に大事なことだと思います。
常日頃、創薬というのは、臨床薬学とは全く違った側面を持っているということ、薬づくりには、基礎的な膨大な知識が必要ですから、薬はすぐ簡単にできるものではないといったような話を先生方から聞かれたことありますか。今のような疑問を持つということが、先生方に野原先生がおっしゃったようなことを言わしめることになって、それで学びの雰囲気が改善されるのであるから、常日頃、先生方にぶつけるようなアクティビティが学生の側にいると思います。

司会
有り難うございました。時間がもうそろそろ迫ってきましたので、最後の質問を、私の方からさせてもらってよろしいでしょうか。薬学部は、国立大学で2番目にISOというのを取得しました。 これから大学を運営するにあたって、大学の個性化というのは大事だと思うんですけれども、学長はそれについてどうお考えですか。
また、今日のような懇談会を、これからもする予定はあるんでしょうか。懇談会以外でアプローチをしたい場合はどうしたらよいのか、それを教えてください。

学長
わかりました。
ISOの取得は、個性化に結びつくなんてことではないですね。そういうふうには思っていないけれども、これから、特に環境問題は、非常に大きな人類の課題であります。ライセンスを組織として取得して自覚するということは、極めて意味があると思います。
大学の個性化については、私は、自分が生物学者だから言うわけではありませんけれども、これからの人類の行く末を私なりに考えてみると、人間という種族の必然性によって、高齢化は益々進み、もっと逆ピラミッド型の人口構成が高じてくる。 そうすると、半分以上が55歳とか60歳を超えた人たちになると思うんです。そういう人たちは、医学の進歩により大変長生きする。
従来の社会と違った構成、根本的に人間とか社会とかをもっとシリアスに研究して、いい方策を見つけていかなければなりません。 そういう意味で生命科学というのが、非常に大事になってくるだろうと思います。
幸い、従来の狭義の生命科学は、熊本大学は極めて強いですから、ネオライフサイエンスとでも言いましょうか、半分以上が人文社会科学の助けや工学の助けが必要だと思います。町づくりとか家づくりも根本的に変えないといけない。そういうふうに生命科学を位置づけていきたいと思います。
それと、こういう話し合いは、機会があるごとに重ねたいと思います。もう学長の任期6年の内5年を過ごしちゃったんですよね。だからもう少し、元気よくこれを早くからやっておくべきだったなと反省はしております。それとね、どうしたら皆さんと私が直接話ができるかと言えば、いろんな方法があるんです。
例えば自治会の問題について、学生諸君が薬学部の中に健康な自治組織を作るというようなことで、大学にどういう協力が得られるかということを、直接私に聞きたければ、皆さんが学生部を通じて、学長に会わせてくださいと言っていただき、私の時間があれば会うことができます。僕、時間はそんなにありませんから、1人ひとり学長室を訪ねられると大変なので、グループを作って、こういう具体的なことで問題を抱えているというようなことを、私に訴えてください。学生部に学長の時間を問い合わせていただき、こういうことは、是非、続けて行きたいと僕は思います。

司会
副学長の先生、学生部の先生、何かありませんか。

副学長
今、学長とのコンタクトの取り方の話がありましたので、もう少し具体的に話をしておきます。
江口先生は非常に多忙でいらっしゃいますので、正直に申し上げていきなり学長室に行って会える保障はありません。だから、日程調整とか時間調整が必要ですので、学生部学生課の職員に、「今度、学長にこういう主旨で会いたい。」というふうに言って下さい。そうするとこちらで学長室と連絡をとって、時間調整をして会っていただくようにお願いをします。
江口先生は、こういうお人柄ですから、いつでもいらっしゃいとおっしゃいますけど、実際あなたたちが行っても、やっぱりなかなか会うのは難しいと思います。ですから、学生部に連絡を取って、時間が空いているところでセットしていただくという手順を踏んで下さい。
良永の副学長室は、学生課のすぐ傍にありますから、私のところにきても勿論構いません。あなたたちのために、きちんと仕事をしたいと思っております。以上です。

学長
どうも有り難うございました。
時間があるときにはお会いできるので、いつでもいいですよということ。それと、もう1つ、ついでに言っておくと、先生方も同じだと思うんですよ。一度訪ねた先生が留守、また訪ねると留守。そういうときにあんまり嫌にならないで欲しいと思います。辛抱強く訪ねて欲しい。先生方も、1人ひとり大変忙しいんですよね。だから、諸君が努力をしていただくことを、私は乞い願います。
特に理系の先生方は、みんな研究が好きだし、暇さえあれば実験をしたいと思っておられる。学会とか大学の会議にも出席しないといけない。そうすると、そうそう研究室にいらっしゃるということは少ないと思うので、先生方の立場もお考えいただいて、足繁く、辛抱強くコンタクトを取る努力を是非して欲しいと思います。
先生方から声を掛けられるのを待っているのではなくて、積極的に先生方を訪ねていただきたい。そういうことと同じ願いで、いつでも会いますということを申し上げているんですから、是非ともその点、ご理解いただいて、皆さんも努力して下さい。
今日は、本当に有り難うございました。

お問い合わせ
経営企画本部 秘書室
096-342-3206