熊本大学文書館企画展「地の塩」の記録~免田事件関係資料展~ オープニングイベントを開催

 令和元年917日(火)に、附属図書館中央館にて、熊本大学文書館企画展:「地の塩」の記録~免田事件関係資料展~のオープニングイベントを開催し、61名の方々にご参加頂きました。

 熊本大学文書館は2019年1月に免田栄さんと玉枝さんご夫妻より旧蔵資料の寄贈を受け、資料整理に取り組んでいます。本企画展では、一次整理が終わった資料から公文書3点、葉書4点、決定書(2007年、再審請求棄却決定)1点、免田再審鑑定書集1点、荒木弁護士による報告書1点、六法全書・聖書・辞書・事典類4点の計14点を展示しています。

 「免田事件」とは、日本で初めて死刑囚が再審無罪になった事件です。栄さんは昭和24年に逮捕され、自白調書が取られた後公判でアリバイを主張し全面否認に転じますが、一審熊本地裁八代支部で死刑判決を受けました。判決は福岡高裁、最高裁でも維持され、昭和27年に確定しました。栄さんは無実を訴え続け第3次請求で再審開始が認められたものの(西辻決定)、検察側の即時抗告により福岡高裁で取り消されます。そして第6次再審請求の末、昭和58年に無罪が確定しました。その間346カ月を獄中で過ごし、死刑判決と闘いました。

 イベントには免田さんご夫妻をお招きし、これまでの人生についてお話を伺いました。玉枝さんは「よくこの短気な人が(34年も)がんばった」、「自らが必要な時は自らが立ち上がらなければだめだと思います」、「皆さんの力を借りながら、この日本をもう少し住みやすい平和な、障がい者も自由に暮らせるような社会を作りたい」と力強く語ってくださいました。
 栄さんは日本の民主主義の再考を促し、「民主国家による人権というものを国が保持していくのであれば、きちっとした筋を立てて説明を(行い)、国民一人一人が納得のいくような行政をやってほしい」、自分の冤罪事件においても「色々な先生方や有識者から教えて頂いて、今日があるのに3040年を費やしています」、「皆さん方もいつなんどきどういう状況にあるかわかりません」、「世の中には逆もまた真なりということがあることをよく考えてほしい」とご自身の経験から語ってくださいました。

 資料解説を担当した法学部・岡田教授は、「いかに公平な裁判官が慎重に裁判を行ったとしても、神ならぬ人間が誤ることはあり得ます。その誤りのうち、有罪方向への誤りを決して許さない制度が再審制度なのです」と展示パネルで指摘しています。冤罪が今後も起きる可能性については、栄さんも同様のことを述べられました。冤罪の被害者をどう救済していくのかは日本社会における極めて大きな問題ではありますが、本展における展示資料が同問題の解決に向けた議論に少しでもつながればと考えます。

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オープニングイベント中の免田さんご夫妻
(写真左:栄さん、右:玉枝さん)

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法学部・岡田行雄教授(文書館併任教員、写真左)
による展示資料解説

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イベントの様子

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展示資料を熱心に観る来館者






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