地震で被災した五高記念館が復活! 「歴史を踏まえて変わっていく熊本大学」を楽しめる場に

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煙突の崩落、壁に亀裂…貴重な資料も学内で分散避難

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健児くん(以下◆):五高記念館は、熊本地震でどんな被害がありましたか?

伊東館長:煙突が折れ、屋根を突き破ってしまいました。余震で屋根に刺さった煙突が落ちてくるのではないかと、職員の皆さんは毎日緊張されていました。外から見て分かる被害はそのくらいだったのですが、中に入ると壁に大きな亀裂が入っていました。壁の漆喰(しっくい)がはがれて、中にある煉瓦(れんが)が見えていました。

煉瓦造りの建物が地震に弱いことは古くから言われてきたことですが、復旧工事の際に壁の中の煉瓦の状態を確認したら、1階から2階にかけて大きな亀裂が入っていました。

また、五高記念館には、熊本大学が第五高等学校から受け継いだ資料が収蔵されています。旧制高等教育の資料として貴重なもので、中には夏目金之助(漱石)やラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の関連資料も含まれています。大切な資料を守るため、また工事のために、すべてを館外に避難させましたが、地震直後で大学内の他の場所も被災していて、場所の確保に苦労しました。結局、文学部、文書館、法学部、学生支援部、図書館、地域共同ラボラトリー、学長室などいろいろな部局の協力を得て、分散して保管してきました。



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関係者で話し合いながら、地震に強い煉瓦造りの建物へ復旧

 ◆:復旧工事を進めるにあたって、意識されたことはありますか?

伊東館長:五高記念館は国の重要文化財なので、文化庁の方、熊本大学の先生方、建築関係者の方など、いろんな方の意見を聞きながら、どのように復旧していくか決めていきました。地震に弱い建物を元に戻すだけでは意味がありません。地震にも強い構造で復旧させることにしました。

いろいろ議論をしましたが、最終的に、東日本大震災で被災した煉瓦造りの建物の復旧工事の方法を採用することにしました。壁の上部から穴を開けてステンレスを挿し、煉瓦の継ぎ目である目地に化学繊維を入れる工法なので、タテにもヨコにも強い構造です。また、天井部分には壁の膨らみを防ぐために金属を入れています。文化財保護の観点から見ると、煉瓦に穴を開けてしまうのはどうかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、再び被災してしまうよりは、後世に残していくために、今できる最善の方法を選んだと考えています。それ以外の部分では、できるだけ傷をつけないように復旧工事を進めました。

◆:復旧工事をしたことで分かったことは、ありますか?

伊東館長:これまでは設計図でしか建物の構造が分からなかったのですが、建物の被害状況を見るために漆喰をはがしたことで、建物の構造を知ることができました。また、復原教室では、黒板の裏から古い黒板が出てきたり、昔工事をしたときの墨入れのあとがあったりもしました。最初から今の形だったのではなく、少し形を変えながら残されてきたことが分かりました。


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古い建物と新しい発見を伝える展示で、楽しんでいただきたい

◆:一般公開に向け、展示について工夫されていることはありますか?

伊東館長:復原教室は漆喰をはがしたままにして、地震の被害を伝えると共に、古い黒板やかつての階段教室の痕跡など、新しい発見を伝える展示にしたいと考えています。

これまで五高の歴史や教育、生活についての展示を行い、多くの方々に見ていただきました。休館の間、五高の卒業生が残した功績、夏目漱石に関する資料など新しく判明した事実もあります。豊富な第五高等学校資料を活用して、後世に残していく充実した展示を作り上げてまいります。それまでは建物をじっくり見ていただく展示を行い、明治の技術を感じていただきたいと思います。

また、現在進められているキャンパスミュージアム構想では、大学内の展示施設のすべてで、熊本大学の「過去・現在・未来」を展示することとなっています。五高記念館でも、さまざまな学部の先生方と連携しながら、新しい展示も検討していきます。

一般公開は、4月以降に段階的に進めて行く予定です。初めての方はもちろん、これまで来たことがある方でも楽しんでいただけると考えています。



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(2022年3月23日掲載)

お問い合わせ

総務課 広報戦略室

096-342-3269