天然物による創薬をキーワードに、世界の健康・幸福を実現

UpRod(Useful and Unique Natural Products for Drug Discovery and Development)事業

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研究紹介 ―創薬の視点から持続可能な社会を創出―

1.jpg 熊本大学は、2017年より、革新的な医薬品開発に向けたプロジェクト=UpRod事業を開始しました。

 熊本大学では、世界の維管束植物32万種を収録したデータベース(PDIII)を構築しているほか、陸の植物に留まらず、創薬候補化合物を含有する可能性の高い微生物(真菌、放線菌、酵母など)やユニークな構造を持つ創薬シーズの存在が期待される海洋生物(海綿、ホヤなど)のデータを収集し、これらを含むオリジナル天然物エキスバンクの拡充を進めています。また、この天然物エキスバンクを基に、熊本大学と地域企業が連携して高品質有用植物の安定供給を実現する栽培システムを構築し、有用植物等の抽出・分析・評価を一貫して行うことで、エイズ・慢性腎臓疾患・アルツハイマー型認知症などの疾患に対する革新的医薬品等の開発を目指しています。

 世界には、未だ活用されていない有用天然資源が数多く存在しています。本事業では、アフ2.jpgリカ・アジア諸国など主に新興国における天然資源を探索するとともに、その有益性に科学的エビデンスを与え、栽培方法や成分抽出技術を確立し、創薬につなげることで、科学的根拠に基づいた品質保証を実現し、さらには現地の人材育成にも貢献しています。

 このように、UpRodでは、大学の最先端の科学技術による天然資源の保全と応用化学を通じて、革新的医薬品の開発のみならず、自然生態系と人々の健康が共生・調和する、持続可能な社会の実現を目指しています。

 ※事業・研究の詳細はこちら→ https://uprod-kumamoto.org/index.html

研究者へのインタビュー -SDGsを実現するために-

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UpRodプロジェクトマネージャー 大学院生命科学研究部附属
グローバル天然物科学研究センター 首藤 剛 准教授

  •  天然物を活かした創薬のオリジナリティ・優位性について教えてください。

 創薬は人々の健康と文化を保持するために欠かすことのできない科学技術です。天然物による創薬の全盛期である19801990年代には、多くの医薬品候補化合物が発見されました。しかし、創薬の候補となる天然物は未だ世界中に数多く存在しており、その有益性は無限大です。近年は、核酸医薬など先進的な医薬品の開発が進んでいますが、現存する医薬品の約半数は、天然物に由来しており、世界の人口の約8割は依然として天然物由来の伝承・伝統医療に頼っています。本事業により、格段の進歩を遂げた現在の分析・評価技術を駆使して天然物を研究することで、19801990年代には発見できなかった医薬品シーズを発見することができるとともに、人工的には作り出すことの難しい多様性に溢れた物質による創薬を実現することができるのです。

  • 本事業の総合的な取組により、どのような地球的課題の解決を目指していますか?

 UpRodが目指すのは、天然物による創薬をキーワードに世界の健康・幸福を実現することです。
 天然物から新薬や健康食品を開発することで、世界の健康・長寿に貢献できることはもちろんですが、世界全体の幸福や持続可能な社会の実現のためには、それだけでは足りません。

 例えば、新興国では、依然として重大な課題である感染症の制圧に加えて、近年は生活習慣病を含む非感染性疾患に対する対策も重要な課題となってきています。飢餓からの脱却が進むにつれ、医療面からの貢献だけでなく、食品衛生管理やライフスタイルの改善など健康リテラシーの普及と向上も必要になってきているのです。そこで、本事業では、熊本大学の最先端の科学と知識をベースに、世界の伝統・伝承医療に利用してきた薬用植物・天然物をさらに有効かつ安全に活用するとともに、そこから生まれた利益を資源保有国に還元することで、現地の生活水準や医療体制に見合う保健医療サービスの向上、現地の人材育成にも貢献することを目的としています。