地域・自治体との対話で進める復興まちづくり

くまもと水循環・減災研究教育センター ましきラボ

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研究紹介 ―住民と自治体の橋渡し役として携わる地域の復興―

1.jpg 熊本は、20164月に起きた熊本地震により、大きな被害を受けました。熊本大学は、地域に根ざした国立大学として、これまで集積してきた研究成果や教育研究資源を活用し、熊本の復興に貢献することを目的に、「熊本復興支援プロジェクト」を立ち上げました。そのプロジェクトの一環として誕生したのが「ましきラボ」です。

 「ましきラボ」は、熊本地震から半年後の201610月、甚大な被害を受けた益城町の復興を目指し、益城町秋津川河川公園に開設されました。「ましきラボ」では、復興の現場で本学の専門家や学生が住民と対話しながら地域の将来像を描き、都市計画や復興まちづくりを行うための支援を行っています。住宅や道路の再建、地域コミュニティに関する相談、町の将来像についてなど、住民や自治体から寄せられる幅広い相談に対して、熊本大学の専門家やまちづくり・都市計画を学ぶ学生らがアドバイス・提案を行い、復興に向けて町と一体となって取り組んでいます。

 2.jpg例えば、町の復興事業である県道4車線化プロジェクトでは、土木を学ぶ学生と建築を学ぶ学生が協働して作成した沿道空間の模型を使用して、復興後の町の未来図について住民と自治体が一緒になって意見交換を重ねる機会を設けました。この意見交換を踏まえて「ましきラボ」がとりまとめた提言を熊本県知事に提出し、現在はこの提言の多くを反映した形で事業が進められています。

 この他にも、住民と協働した公園や災害公営住宅の計画・設計支援、地震の記憶の継承に基づくまちづくりの支援、地域の魅力発見のためのイベントやワークショップの実施など、住民と行政の橋渡し役として、地域の復興のために何ができるかを常に検討し続けています。

 また、過去に大きな地震被害に見舞われた地域の大学との共同研究も検討しており、熊本地震と過去の災害を比較することで、今後の災害時に有用となる知見をまとめることを目指しています。

 ※事業・研究の詳細はこちら→ https://cwmd.kumamoto-u.ac.jp/mashikilab/

研究者へのインタビュー -SDGsを実現するために-

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くまもと水循環・減災研究教育センター 星野 裕司准教授(写真左) 円山 琢也准教授(写真右)

  • 「ましきラボ」の活動が、地域の復興や将来のまちづくりにどのように影響しているのか教えてください。

 被災地域にサテライトラボを設置したことにより、被害やその後の生活再建、地域の復興について、住民や自治体が大学の専門家に気軽に相談できる環境が生まれました。また、大学としても、被災地の様子を実際に見ながら、住民、行政それぞれの声を聞くことで、両者の橋渡し役として、復興に向けたサポートを検討することができます。被災直後は、被災地には直接的な支援として全国から様々なボランティアや支援が寄せられました。しかしながら、震災後の地域の復興・将来のまちづくりについては、長期的なプロセスが必要であり、今後も継続的な支援が必要です。私たちは、地域に根ざした大学として、常に被災地に寄り添いながら、熊本地震からの復興を地域のさらなる発展に繋げたいと考えています。

  • 「ましきラボ」の総合的な取組により、どのような地球的課題の解決を目指していますか?

 4.jpg地震からの復興に向けてレジリエントなまちづくり自体へ貢献することはもちろんですが、大学と自治体・地域住民とのパートナーシップが深まっていることも実感しています。熊本地震からの復興という大きな目標に対し、自治体や地域住民、大学が同じ方向性を持って取組を進めていくことで、お互いの距離が近づいたと感じています。また、地域の課題を解決するために、「ましきラボ」を通じて様々な活動・意見交換を行うことで、自治体や地域住民に主体性が高まり、現在は自治体の若い職員が中心となって町の賑わいを創出する取り組みが動き始めているほか、まちづくり協議会や自主防災組織が多数立ち上がるなど、地域を引っ張る新たなリーダーが生まれています。

 加えて、「ましきラボ」での活動は、大学の学生にとっても貴重な学びの場となっています。まちづくりや都市計画、建築、土木などを専攻する学生が、被災地に何度も足を運んでフィールドワークを行い、自分たちなりの提案をまとめて地域住民等の前で発表を行うことで、実際の事業に関わることの難しさややりがいを身を以て学ぶことができています。このような経験によって成長した意欲溢れる学生は、将来各分野で経験を活かし、活躍してくれるものと確信しています。