「ましきラボ」発の交流から始まる息の長い熊本地震復興支援

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住民の思いと行政の動きの橋渡しをする拠点「ましきラボ」

image02.jpg 健児くん(以下:◆):「ましきラボ」はどのような場所なんですか?
円山:ましきラボは、熊本大学が行っている「熊本復興支援プロジェクト」の「震災復興デザインプロジェクト」の1つとして展開されているものです。被害が大きかった益城町の復興を通して、行政と町民をつなぐ役割を担うための拠点として、益城町の住民にとっても憩いの場である秋津川河川公園にサテライトラボを開設しました。「ましきラボ」は、被災地の実地調査や被災者へのアンケート調査などを分析して、住民の思いを反映させた復興計画ができるよう支援したり、学生ボランティアの拠点としての機能をもたせたりしています。また、大学という専門的知を提供できる立場ですから、さまざまな疑問に答えたり、住民の方々に学んでもらう勉強会も行っています。
◆:そのほか、これまでにどんな活動をされたんですか?
円山:継続的に行っているのは「オープンラボ」です。毎週土曜の14~17時に、学生と大学の教員たちがラボを開放して、どなたでも気軽に立ち寄っていただけるようにしています。10月の開設以来、のべ100人近い住民の方に来ていただきました。何気ない会話の中で、被災者の悩みが見えてきたり、どんなことが知りたいと思っているのかという要望を知ったりすることができています。そんな相談の中から、自分のまちを知るためのまち歩きのイベントを開催したり、企業とコラボレーションして季節のイベントを実施したり、いろいろな活動を行えるようになってきました。ラボを来訪されるリピーターの人も増えてきたなと感じているところです。
ここは、研究拠点でもあるので、いただいた意見をどのように活動につなげているか、また、研究成果がどのようにまとまったか、なども、ここで発信していくことも考えています。

丁寧な研究を、きちんと発信する

image03.jpg ◆:今回の研究発表もその一環なんですね。
円山:2016年6~12月にかけて、益城町のすべての仮設住宅を訪問し、このうち約1200世帯の聞き取り調査を行いました。学生が2人1組になって、1軒ずつ住宅を回り、要望や問題と感じていること、今後の住居についてなどを聞き取りました。その結果は、復興計画に役立ててもらうために、行政に提供したり、速報として「益城復興応援便り」でお知らせしたりしています。
その調査分析の中から、自分なりのテーマを見つけて、独自の分析や追加調査を行い、提案や論文としてまとめたものを、今回発表しています。学部4年生の6人が、「益城町仮設住宅入居者の居住地選択意向に関する考察」「益城町仮設住宅聞き取り調査の自由回答の分析」「益城町仮設住宅団地における住民の駐車場利用環境の課題と提案」「震災復興における郵送アンケート未回答者層の実態と意識」「益城町における水害対策の導入検討」そして「震災復興における『ましきラボ』の運営指針に関する研究」について発表しました。地域の方を招いてこういった研究成果を発表することは、支援活動の一環としても重要だと思っています。丁寧に研究、分析して、それをきちんと発表していくことは、学生の意識向上にも、復興にもつながっていくと思っています。
◆:参加する学生の皆さんの意識も変わったんですね。
円山:実際に、被災者の皆さんに近いところで話を聞いたりすることで、意識が高くなったと感じています。やはり、現場を実際に見るのと、テレビなどで見るのとは、全く違う、ということだと思います。研究に対する姿勢も変わりました。これは、「ましきラボ」という拠点があってよかった点ですね。逆に、がんばりすぎてしまう学生もいたくらいでした。多くの人と話した内容を整理し、まとめて、伝えていく、ということは、学生にとってもよい経験になったのではないでしょうか。

持続し、継続して支援していく環境づくり

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◆:今後も、活動は続いていくわけですが・・・
円山:「ましきラボ」には多くの学生が関わっています。彼らは、地震を体験し、その後の被災地の混乱をリアルタイムに見てきました。だからこそ熱い思いをもって、活動ができたのだと思います。この思いを、いかにして次の世代につなげていくかも課題の1つです。思いをもって、被災地に寄り添い、被災者と共に、まちを復興させる支援を続けていくことが、長期間に渡り求められます。住民の声を丁寧に聞き続けること、それを行政に役立つ形で伝えていくことを通し、学生や住民と共に支援を続けていくこと。それこそが、熊本地震からの復興を目指した研究拠点としての「ましきラボ」のあるべき姿なのではないかと思います。
(2017年3月29日掲載)
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